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番外編・ダイビングインストラクターが水中考古学者の仕事を見学した話

サイパン在住19年、ダイビング本数9000本以上のダイビングインストラクターが、初めて水中考古学者さんと一緒に潜った感動を感情が溢れるままに書き続けています。

前回はこちらです。

さて、今回キャプテンSさんの多大なるご協力がありまして、こんな水中考古学という分野すら全く知らなかったワタシが運良くこのプロジェクトに参加することができまして、水中考古学者のKota先生の話を直接聞く機会を得たわけですが。

いろいろお話を聞いているうちに、あぁこれはまさしく今ワタシがこの世界を知ることになったのは偶然ではなく必然だったのではないか?という気すら湧いてきて(←無宗教のくせにすぐ神の啓示を勝手に受け取りたがるタイプ。)

いくつかとても印象に残ったお話をぜひ皆さまにシェアしたいと思います。

ご存知の方も多いかと思いますが、サイパンは第二次世界大戦末期の激戦地であり、現在も一般ダイバーが見に行ける海域や深度にたくさんの水中戦跡が残る場所の一つです。

これはサイパンだけでなく、太平洋・ミクロネシア地域、ヤップ、チューク、フィリピン、ハワイなど、日本人ダイバーに人気のある、いわゆる南国リゾートでは、太平洋戦争の歴史を直に目の当たりにできる場所がたくさんあります。

サイパンに住んで19年、何百回も沈船・松安丸や沈飛行機・カワニシ二式飛行艇(エミリー)、その他数ある水中戦跡をガイドしてきました。

どのような気持ちでガイドしていたかと言うと、

『水中にある珍しいものの一つ』

恥ずかしながら、これくらいの認識でしかなかったと言っても過言ではない。地形の延長線というか。
数あるダイビングスポットのひとつ。特に冬場に透明度が上がるから、冬のメインスポット。沈船は、サメや魚の棲家になっているから、楽しいよねぇ。
くらい。

さすがにガイドなのである程度の歴史的認識や沈んでいる物に対する知識は一通り勉強はしましたが、初めてワタシがここに潜った20年前に比べて、見るからに朽ちてしまっているし、これはもう自然なことで抗えないことなんだろうなと受け入れてた部分もある。

戦後100年となる2045年に、このサイパンのレックポイントは残っているだろうか?

2015年と2018年に超大型台風の被害にあったサイパン。この台風で沈船・松安丸の甲板のドアの枠だけ残っていた部分は見事にボッキリと折れて倒れた。

これも自然、仕方のないことだと思っていたのですが…

『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』より

2002年にオーストラリアの水中考古学者がチュークで水中戦跡の保存状況を科学的な視点で調査した結果、確実にこの未来は予見されていたのです。

チュークでの調査なので、まるっきりサイパンにも当てはまるとは言い切れませんし、確かに台風の被害があったことは間違いないでしょう。

しかしながら、その超大型台風がなかったとしても、崩れていたという可能性があったことに驚きました。

では、この崩れゆく運命の戦跡を残す手段はあるのか?

Kota先生の本によると、崩壊をなるべく遅らせる方法として、補強材や犠牲材を使う方法があるそうです。
犠牲材とは、ボートではジンクと呼ばれる物で、実は、ボートダイビングに行ったときに簡単に目にすることができます。

すっかり陸に上げられたままの可哀想なSAKURAのボート

より腐食しやすい亜鉛でできた部品をわざとつけることにより、エンジン内部が腐食するのを抑える役目です。

見るからにボロボロになっていくジンクに心を寄せて、献身的な姿に心を打たれながら、いつもボートダイビングを終えているワタシ。
ボートの部品の中では、完全にジンク推しです。

これと同じ仕組みで、沈没船の崩壊を遅らせることができるかもしれないとは!

知らなかったことを知ると、知っていることの価値も上がる。

ワタシたちは研究者ではないので、もちろん勝手にジンクをつけたりすることはできないけれど、サイパンの水中戦跡を単なる珍しい地形のひとつではなく、未来に残すべき価値のある水中遺跡/水中博物館としてガイドすることは可能です。
サイパンのガイドのその心構えがご案内するゲストに伝わり、重要な観光資源として認められていくことにより、そこに政府や関係機関の予算がついて保護活動につながる。

広島に原爆ドームがあることに意義があると思いませんか?

Kota先生がポロッとおっしゃったことです。
原爆ドームも劣化による崩壊を防ぐ目的で今までに5回も補強工事がされているそうです。

サイパンの海で沈船・松安丸が見られること、カワニシ二式飛行艇が見られることに大きな意義があるはずです。

まだ間に合う未来への行動のきっかけを見つけることのできた今回の遺骨回収プロジェクトでした。

そして、Kota先生はまた次の遺跡発掘プロジェクトのために別の国へ行かれるということだったので、せっかくだから、サイパンガイドの皆さんにも直接お話しを聞いてもらいたいと思い、無理にお願いしまして、明日4/2土曜日のランチのお時間をいただきました!
サイパン在住ガイドの皆さん!お話聞いてみたいという方、AKARIまでご連絡ください。時間や場所の詳細をお伝えします!

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