vol.1.1.4 かりんとう

昔は北東の風が吹くと必ず鯨の匂いが流れてきた、と網地島・長渡浜に古くから住む人たちは話す。匂いの元は約5キロメートル先、対岸の牡鹿半島・鮎川浜だった。捕鯨基地として栄えた鮎川浜には、いくつもの捕鯨会社があった。ある人は、その匂いは鯨の肉や骨を干して加工する匂いだったと話す。また別の人は、その匂いを嗅ぐたびに「今日も鮎川浜で鯨がとれたんだな」と感じていたと懐かしむ。

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