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「粗さがしに来たのか!」が「来てくれるとありがたい」に変わった話

施工会社に「粗さがししに来たのか!」と警戒される

1999年、創業者で不動産コンサルタントの長嶋修がスタートさせたサービスは、「購入検討者に正しい不動産購入の情報を教えてアドバイスしよう」という、売買のコンサルサービスでした。在職中だった会社で提案したら「そんなことしたら、家が売れなくなるだろう!」と否定され、起業したのでした。

次にできたサービスは、住宅建築に精通したホームインスペクターが新築分譲マンションの内覧会に同行して住戸内外の施工をチェックをする「内覧会立会いサービス」

それまで、「家を買った人のために、引き渡し前に建物を調べる」なんてサービスは無かったので、利用された方の口コミがあっという間に広がり、メディアの注目も集め、一気にさくら事務所の知名度を押し上げました。

ご利用くださるユーザーには非常に喜ばれたこのサービスですが、実は、スタートして数年は、ご依頼現場に行くたび、結構ピリピリした感じになることがありました。

作り手であるゼネコンや工務店、デベロッパーの方々に、「工事の粗(不具合)を探しに来た!」と勘違いされてしまったのです。

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スタッフの建物と業界への愛がさく裂

たしかに、「調査」「点検」「検査」とは、ちゃんとできているかどうかを調べる行為なので、不具合がないかを疑ってかかってはいます。そうでないと施工不良を見逃してしまうかもしれないので。

でも、”経験を直接ユーザーのために役立てたい!”と「居場所」をさくら事務所に変えただけで、作り手の苦労は、仲間としてたくさん見てきて、知っているスタッフです。不動産業界や建設業界自体は、好きでスキでたまらない人達ばかり。

ですから、内覧会やホームインスペクションでは、見つけた不具合だけを知らせるなんてことはしません。良い施工があれば、それはしっかりご依頼者(契約者)の方にご紹介しているのです。これは、さくら事務所のホームインスペクター育成のとき、必ず新米インスペクターにも教えていること。

本当の中立、第三者であれば、「根拠は何か」「良いところは何か」「直すべきところは何か」の3点がちゃんと言えないと。「直すべきところは何か」だけ挙げていると、それはやっぱり、誰かに一方的に要求しているだけですからね。(良い部分が見つからない・・・という場合は除く・・・)

スポーツの解説者みたいなイメージをお持ちください。

時には、なかなか施工が難しい部分を丁寧に仕上げてあるのに気づき、「ちょっと来てください!ここ、すごい!」と興奮しながらご依頼者をお呼びして、「細かすぎて伝わらない」くらいマニアックだけど、めちゃくちゃ配慮されている設計や施工を、解説しちゃったりします。

そんなことを毎日毎日、コツコツコツコツ、皆でやり続けていたら、気づいたときには、お伺いする物件での「粗さがしに来たのか!」感は全くなくなっていました。

どっちかっていうと、喜ばれてしまう事態

さくら事務所はいかなる不動産会社、建設会社とも関係を持たない中立な会社ですから、どの現場に行っても、厳しい目でチェックさせていただいています。

でも、いつしか、施工会社から「さくらさんが来てくれた方が、建物の質は上がっていくし、お客さんがこの家を好きになってくれる」と喜ばれるようになってしまいました。

不動産会社とも施工会社とも、本当に何一つ関係はない立場ですので、あまり歓迎されるのは困るのですが、ご依頼がある現場に行って、「どちらの会社ですか?」「さくら事務所です」と言うと、「ああ、さくらさんならどうぞ!」と言われる始末。

あまり歓迎されて、ご依頼者に癒着してると誤解されたら困るんです・・・ほんとに。

田村さん

でも、その頃から、驚くほど、大手を中心とするたくさんの分譲マンションで、不具合(指摘事項)が減ってきました。ゼロにはならないのですが、このサービスをスタートさせた当時の呆れるような、驚くような施工ミスは激減。

「さくら事務所がきっと内覧会立会いに来る」「社内検査をもっと徹底してやらないと」といったことが起きていると、現場でデベロッパーや施工会社の方にこっそりと言われました。

目指すべきは、良い建物が住まい手に届くこと。そのお手伝いが少しでもできているのか!と実感できて、猛烈に嬉しかった。

さくら事務所の後を追って起業した会社の中には、指摘の数を報酬額に設定している会社もあったようなので、どんどん業界内の指摘が減りつつあることを喜ぶ会社は、さくら事務所くらいだったかもしれませんね。

相談に乗っていたらビジネスになっていた

長くなってきましたね。でも続けます。21年分のストーリーなものですから・・・

内覧会に同行させていただいた分譲マンションのご依頼者さまが、引き渡し後に管理組合の理事となり、管理組合運営についてのご相談が入るようになりました。2000年始めくらいのことです。

当時、管理組合コンサルティングだけを生業にしている会社はほとんどなかったのではないでしょうか。さくら事務所も、毎度毎度「何がベストか」を模索しながらコンサルティングをさせていただきました。

ご相談で多かったのはこの2つ。

「共用部分に施工不良があるのではないか。売主の不動産会社に直させたい」
「管理費が高い、管理会社の質が悪いから変えたい」

管理組合 VS 不動産会社
管理組合 VS 管理会社

・・・という前提は、さくら事務所では置きません。

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結果的に、管理組合側の言い分が正しくて要望を飲んでもらうことが多いですが、何が起きているのか調べもしないうちに、決めてかかってはいけない。

中立な第三者の使命は、事実を当事者たちに的確に伝えることであり、裁判における弁護士のように、依頼人の意図を代弁する立場ではありません。

幸い、内覧会立会いのご依頼者様からのご相談ですから、「中立な立場とは、業者をやっつけるものではない」「診断結果をご依頼主が有利になるよう変更することは一切できない」ということはご理解いただけており、そのフェアさに期待を寄せていただき、これまた口コミでご依頼が激増。

いまや、さくら事務所といえば「個人向けのホームインスペクション」と「管理組合向けコンサルティング」と言われるほどで、さくら事務所の二大巨塔となりました。

いよいよおしまい・・・と言いたいが成長が止まらない

最近、さくら事務所で主に手掛けているのは「災害リスクコンサルティング」と、「マンション管理が不動産価値を高めるBorder5」です。他にも続々続く予定ですが、ここらで止めておかないと、記事が長すぎるとスタッフに叱られる。

さくら事務所が手掛ける事業はすべて、ユーザーのニーズがあって、私たちスタッフ自身も「あったらいいのに」と思ったサービスです。

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不動産会社や建設会社、管理会社など、供給側の業界の仕事も本当に面白かった(窮屈なこともたくさんありましたけど 笑)。でも、供給側だとできない仕事って、ある。私たちにしかできない、住まい手、業界、日本のためにできることをやりたいと思っています。

さくら事務所は小さな、小さな会社で、正直、皆、ドタバタで忙しいです。体(会社)を大きくすることを目的にしておらず、同志を募りながら来ているので。

でも、こんな会社のことを知って、ちょっとでも心の火が揺れ、あなたのガッツを生かしてみたいと思ってくれたのなら、きっと、さくら事務所で生きがいとなる仕事を見つけてもらえると思います。


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