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葬送のフリーレン21話/殴りかかる平和の使者(デンケン)

葬送のフリーレン21話を視聴。一級魔法使い試験に参加しているデンケンというキャラクターが人気らしい。彼は物語の中で面白い位置にいると思う。どこが面白いのか。感じたことをメモしておく。
※ネタバレあり

●老人のような若者たちと血の気の多いデンケン
この物語では、登場人物たちはみな老人のように悟りきったような人たちだ。強い意志はほとんど見せない。その中では例外的に「鉄の意志」を感じさせるのがデンケンだ。彼は明らかに何か強い目的意識をもって行動している。「老人のような若者」に囲まれている「血気盛んな老人」という彼のポジションはとてもユニークだ。

●でもフリーレンとは気が合う
デンケンはフリーレンと意見が一致する。魔法は探し求めるときが一番楽しい。だから、魔法を与えられる特権には興味がない。しかしフリーレンはゼーリエに野心がないと言われ、フランメには「平和な時代の魔法使い」と言われている。つまり血気盛んから正反対の位置にいる低温キャラクターなのだ。血気盛んなデンケンは、なぜ低温キャラ・フリーレンと気が合うのだろうか。彼らの間にある共通性とは何だろう。

●フリーレンとの共通性
フランメがフリーレンを「平和な時代の魔法使い」と形容したのは、平和な時代を生きるイメージが持てるから。単に生きていけるということではない。時代にマッチして生きていけるということだ。戦いを求めるゼーリエとは違う価値観を持つフリーレンは、戦いには喜びを感じない。そして、それはデンケンにも共通しているのだろう。そこにデンケンの立ち位置の面白さがある。戦いに喜びを感じない血気盛んな老人。それはどういう心境なのだろうか。彼を血気盛んにさせているものが何かは分からない。それでもそれはきっと、平和とマッチするものであるはずだ。彼のキャラクターがそう感じさせるのだ。

●血気盛んでも壊れない平和
「殴り合いじゃぁ!」と叫んで若者に殴りかかる老人は、しかし、平和な時代の魔法使いと呼ばれる素質を持っている。これは「暴力」と「平和」が対立概念ではないことを意味しているように私には思える。もちろん暴力というものは、ほとんどの場合「平和を壊すもの」だ。でも、平和を育む素質に恵まれた人が、永遠に暴力と無関係でいられるわけでではない。大事なものを守るためにできることが「暴力だけ」だったときに、その暴力さえも避けてしまうことは、平和を維持できなくなる結果を招くかもしれない。「若者に殴りかかるデンケン」は、そこだけを切り取ってみると「平和の破壊者」だ。でも、彼の物語の中でそのシーンを見直したときにはきっと「平和な時代の魔法使い」にふさわしい行為と感じられるのではないだろうか。そんな気がする。
フリーレンが平和な時代の魔法使いだというのは分かりやすい。でも平和とはそんなに単純なものではない。そういう、平和と言うものの奥深さや一筋縄でないところを感じさせてくれるキャラクター、それがデンケンなのかもしれない。

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