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ガールズバンドクライ9話/キレない仁菜から見える、本当の仁菜

『ガールズバンドクライ』9話視聴。智の回だった。そして仁菜がおとなしかった回。智に酷いこと言われてもキレない仁菜。あの狂犬仁菜が。マジか。そこから「仁菜のスケールのデカさ」が見えた気がした。智も桃花も、仁菜のデカさに「凍り付いた心」を動かされたのではないか。そう感じた。感じたことメモしておく。

#ネタバレあり

智には、バンドメンバーに本音のダメ出しを繰り返して、バンドが崩壊してしまった過去がある。それから彼女は本音を言わないようになっている。そんな智に仁菜が言う。「どうして嘘つくの?」
それは、未熟なギターなのに「ステージで弾けばいいんじゃないの」と言われたことに返した言葉だ。でもそこにはもっと深い意味がある。あなたは嘘がつけない人なのに、なぜ自分自身に嘘をついているのか。仁菜は智にそう聞いている。仁菜は智の心の闇に切り込んでいったのだ。

●智と仁菜は似ている
仁菜だけが智に切り込んでいけたのには訳がある。仁菜が無神経だからだけじゃない。智と仁菜は似ている。だからこそ切り込めたのだろう。二人のどこが似ているのか、私の思うところを挙げてみる。

①「心の声」が大きい
普段の何気ない会話の中で突然「今のはなんかおかしくないか?」と感じることがある。そういう「原因不明の突然の気づき」を「心の声」と呼ぶなら、仁菜も智も「心の声」がとても大きい人なのだと思う。そしてそれを他人に伝えると、まるで責めているように響いてしまう。仁菜が場違いに相手を責めているシーンはいくつもある。それには「怒り」の力もあるだろうけれど、「心の声」の大きさも影響しているはずだ。

②「心の声」に逆らえない
「心の声」の大小とは別に、聞こえてきた「心の声」に逆らうことができるか、の違いがある。声が大きくても、それに従わずに自分を抑えられる人がいる。そういう人は心の声を客観視できる。「奥の深い人」と言われるタイプだ。でもそういう人では打開できない感情の縺れがある。客観視したら打開できないデッドロックがあるのだ。智は心の声に逆らえない人だろう。自分を抑えることが出来ず、心の声が湧きそうな場面を避けている。意見を言わないのも、そういう場面に自分を置かないためだろう。

●仁菜だけが智の言葉を「ちゃんと受け止める」
智は仁菜に暴言に近いことを言ってしまう。
「そんなままごとギター、一生かかったって、まともにならないわよ!」
智にそういわれて、仁菜はショックを受ける。でもそれは「普通の人が受けるショック」とは全く違ったものだ。普通ならこう感じる。
「私を応援していない。きつく責められた。私が嫌いなのかも。」
でも仁菜の感じたショックはこうだ。
「智から見ると、私のギターはそんなにダメなのだ」。
そして仁菜の方が「ちゃんと受け止めている」。でもそれができるのはなぜだろうか。

●「怒気の感覚を知っている」が重要
それは、智の言葉に含まれている「怒気」の感覚を知っていること、が重要になる。この怒気は「湧き上がる心の声」が持つ熱量だ。それは智が相手のことをどう思っているか、と直接関係がない。前から仁菜のギターに虫唾が走っていたから、怒りが漏れたのではない。「ギターの技量」と「ステージで弾きたいという希望」の差の大きさが、心の声の怒気を生んだのだ。そして仁菜は、そういう感情を知っている。だから「怒気」にショックを受けない。むしろ智の「心の声の熱量」を感じ、ちゃんと答えてくれたと感じて、だからこそショックだったのだろう。

●「怒気の感覚を知っている」だけではダメ
しかし、思わず湧き起こる怒気の感覚を知っていても、智の暴言には腹が立つものだ。そんな言い方をしなくてもいいじゃないか。そういう感覚が湧き起こる。でも、仁菜にはその感覚はなさそうだ。それには強い違和感がある。だって彼女は「なんにでもすぐに腹を立てていた」ではないか。その疑問に答えるためには、仁菜のトゲトゲ能力について考える必要がある。

●仁菜のトゲトゲ能力
仁菜は桃花に対してたびたび「嘘をつかないでください」と言っていた。それはきっと、「言葉に心の声の熱量を感じない」という不満をぶつけていたのだろう。つまり仁菜は「心の声に従っていないこと」を見つける達人なのだ。それを見つけると「強い違和感」を感じてしまう。そして自分の「心の声」が湧き出してくる。他人の「無視された心の声」を違和感として感じて「自分の心の声」が湧き出す。その「違和感から湧き出す心の声」が「トゲトゲ」の正体ではないだろうか。

●仁菜が智の言葉をちゃんと受け止められる理由
私の仮説はこうだ。仁菜は「なんにでもすぐに腹を立てている」のではない。心の声を無視している人を超敏感に(トゲトゲを出して)察知して、それに対して、とても強く腹を立てていたのだ。だから、心の声に従った智の暴言に対しては、全く腹を立てることはない。智の伝えたかったことだけを、過不足なく受け取ることができるのだ。
心の声を無視している人にだけ腹を立て、それ以外には腹を立てない。そんなことが出来るのだとしたら、仁菜はすごい。人間がデカいと思う。本当にそういう人がいるのか、私にはよく分からない。でもそれはとても筋が通っているように感じる。本当に仁菜がいたとしても不思議はない。そういう説得力を持った魅力的なキャラクターだと思う。

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