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1鑑賞で2度美味しい!『新渡戸の夢』

 新渡戸稲造の映画『新渡戸の夢』を鑑賞してきました。
 会場は「シネマハウス大塚」。JRの大塚駅近くにあります。自宅から行ったので、秋葉原で山手線に乗り換え、上野・巣鴨などを通って大塚です。

 この映画を見ようと思ったのは、撮影が高橋暢さんだからです。さくら社の『「映像で学ぶ」シリーズ 野口芳宏先生『教師の作法 指導』特別授業』の編集をしていただいたり、そのプロモーションビデオを作っていただきました。
 また、明石要一先生の『教えられること 教えられないこと』の刊行を記念してプロモーションビデオを作りました。その制作をしてくださったのも高橋暢さんです。

 新渡戸稲造の魅力もありますが、暢さんがどのような映画を作ったのかも気になり、それで「シネマハウス大塚」へ行ってきました。(行ってよかったです!)

シネマハウス大塚の前に映画のポスターが出ていました。
分かりやすい目印でした。

前半は新渡戸稲造の教育信念、後半はドキュメンタリー

 『新渡戸の夢』は1回の鑑賞で2度美味しいといえる映画でした。

 映画が始まると、昔の写真などがちりばめられ、新渡戸が活躍していた時代にすうっと入っていきました。そうして、新渡戸の教育への信念「学問より実行」がずしんと心に響きました。味わい深かったのは、この「より」をどう解釈するかです。珍しく感動的に頭をめぐりました。
 映像からも音声からも、「いい映画を観ている」という気分になり、随所で悦に入っていました。
 教育の暗い問題がニュースで流れていますが、何かもっと大切なところが…とふと思うことがある方々にお勧めしたい映画です。

 新渡戸の教育の映像は、途中でガラッと変わります。新渡戸の志を今も引き継いで活動をしている皆さんの様子、夜の学校になります。その事実に驚きましたが、そこに学びに来る人の姿に感動しました。
 少年少女時代に小学校や中学校の勉強をしたくても、うまくできなかった方がいます。戦後の混乱期だったことも一因でしょう。
 その人たちが高齢になった今、夜の学校に通って勉強しています。授業場面も映し出されていました。そこで学んでいたのは、「9-3」のようなひき算でした。これには驚愕しました。小学校1年生で学ぶ勉強だからです。それをタイルを使ってまじめに、それでいて分かりやすく、ユーモアも交えて教える先生がいて、その先生の説明を真剣に聞いて、プリントに答えを書き込む高齢の女性。
 その女性は言いました。
学んでいるだけで楽しい
 確か、このような言葉だと思いましたが、高齢女性のこの一言に、胸打たれました。「人が学ぶ」ということの本質がここに見えていると感じてきたからです。

 映画が終わったら、監督の舞台挨拶がありました。挨拶ではなく、監督や関係者の皆さんによるトークショーです。
 監督は開口一番に、「全共連崩れの人たちがたくさん来ている」とジョーク交じりに語ってくれたのですが、その瞬間、私の頭は青年時代にタイムスリップです。大学構内に並んでいた「立て看」が現れ、そこには「革マル」「中核」「民青」「社青同」などの文字が。
 今は昔の光景ですが、自分らのすぐ上の年代の人たちが今もこうして奮励している、その表れがこの映画と思え、大きな元気を頂いた気持ちになりました。

 いい映画でした。
 8/10、8/17、8/24、8/31にも上映されます。お時間が合いましたら、ぜひ、御鑑賞に足を向けられてください。詳しくは、<こちら>のリンクの下の方に出ています。

(余談)
 後半の夜の学校の授業場面に、算数の授業が流れてきました。ひき算をタイルを使って教えています。水道方式です。その板書を観ましたが、まさに正統派の水道方式です。
 今も、水道方式で教える先生がいることは知っていましたが、夜の学校でも活躍していることに感動しました。私が学生時代に夢中になって読んでいた算数教育書が遠山啓の水道方式の本だったからです。

 エンディングは人の名前をずっと見ていました。最後の方に「撮影 高橋暢」とあり、周囲に聞こえないように拍手しました。
 その前に「岡 潔」とありビックリ。高名な数学者の名前です。でも、もう遠に亡くなられています。同姓同名の人でしょう。でも、算数教育の水道方式と絡んでいい気分になりました。

(横山験也)