長ーい不安定期に突入。妊娠7〜8週目
つわりの始まりと情緒の乱れ
そんな話はよく聞いたことがある。妊娠鬱なんて言葉もあるくらい。
でもいつだって自分ゴトにならないと、言葉の真意はわからないもんだ。
飲食店で働いているが、この頃から客席を離れてバックヤードに入るたびに、ちょびっと涙が出るようになった。
最初は、7週目に突然訪れたつわりの影響で、賄いの美味しいシーフードパスタが食べきれなかった時。
悲しくて、これからどうなってしまうのか漠然と怖くて、パスタの前でうつむき、メソメソした。
それからは、今まであり得なかったことで涙が滲むことが増えた。
お客さんの楽しそうな飲み会を見るのが、羨ましくて辛い。
食べ物や飲み物に制限がない人たちが、羨ましくて辛い。
赤ん坊が宿ってくれた奇跡がたまらなく嬉しいのに、こんな感情を抱いてしまう自分が嫌い。
そう思うと、バックヤードに一歩下がるたびに涙が出てしまう。
明らかな、不安定期への突入だった。
なにをしたらいいかわからない
何度も言うように、妊娠を望んでいた。年齢的に難しいことも、承知していただけに。
だけどある日突然訪れた現実と、生活の変化に心がついていけなかった。
妊娠初期から、夕方には帰宅できるよう時短で働かせてもらうことになった。疲れやすく、何でもないことでぐったりしてしまうため、ありがたかった。
でも、何をしたらいいかわからなくなってしまった。
私はひとり時間が大好きだった。
ひとり旅がすき。
写真を撮って歩くのがすき。
昼からビールを飲む特別感がすき。
お気に入りのカフェで飲む、苦くて濃いコーヒーがすき。
知らない道を歩いて、新しい景色を探すのがすき。
PCを持ってでかけ、ひたすら書くのがすき。
でも、お酒が飲めない。
コーヒーは少しくらい飲んでいいとされているが、常に「少し気持ち悪い」状態で、カフェイン中毒だったのが嘘のように、飲みたくならない。
違うものを飲めばいいんだけど、コーヒーが好きでカフェに通い詰めていた私にとって、楽しさ半減だった。
初期はとにかく流産の恐怖と闘い続けているし、妊娠中は自転車も避けているため、行動範囲が狭くなる。心が塞ぎ込むには、十分な条件が揃っていた。
だいすきだった「書く」ことは、頭と心が整理できなくて、言葉にすることができなかった。それも辛いことだった。
ライターの仕事も、つわりで先方に迷惑をかけるかもしれないと思い、取材はいったんお断りすることにした。
これらの心のぐちゃぐちゃや、生活の制限、でも分かっている「しょうがない」ということ。
だけどそんな一言では整理できない辛さと、自分を責める気持ち。これは誰にも理解されないと思った。だって、「妊婦はみんなそう」だから。
孤独だった。優しい夫に八つ当たりする自分をまた責め、「誰にもわかってもらえない」と抱え込む日々が、孤独で悲しくて寂しかった。
そしてまだ膨らむはずもないお腹の中で、小さな心臓がちゃんと動いているのか不安で不安で、四六時中怖かった。
結論から言うと、それから約2ヶ月はつわりっぽい症状が続いた。食欲はあるが、食後に気持ち悪くなるタイプだった。食べづわりでもなければ、極度の吐きづわりでもない。水分も摂れないほど酷い日もなく、周囲と比べると軽度だったのかもしれない。
それでも突然の体の変化は恐怖であり、「軽い重いの感じ方は人それぞれ。誰にとっても大変なことだよね」と言ってくれる人がいたことが、なんだか嬉しかった。
「軽いつわりで良かったね」なんて言わないでくれることが、こんなに嬉しいんだなと知った。
もし私も機会があったら、そう言える妊婦経験者になりたい。
さてさて、不安定期はますます激しさを増して、長く長く続きます。
夫よ、その節はごめん。
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