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詩 | 月とピエロ

ピエロは月がきれいだと思った

それはふと見上げた冬の空に
輝く月を見たときに

山を登って頂上に出ると
きれいな三日月が彼を待っていた

木々を見上げながら道を進むと
月はいつまでも彼を追いかけた

後ろ向きに歩きながら月を見て
「きれいだね」とつぶやいて

ピアノを弾き続けた真夜中に
ふと見ると窓に月がいた

涼しい風が通りかかった

夜はいつもより静まり返り
月だけが彼の注意を引いた

今日は大きな満月で
ピエロだけがそのとき月を見ていた

「一人になってしまったよ」

月はそれを聞いたのか、
ピエロの好きな色になった

シャンパンのようなやさしい色

繊細な泡がぷくぷくと浮かび
小さな泡が弾けていく

月はそんな音をしているのだろうと
ピエロはその夜考えた

ピエロが月に目をやると
月はたちまち輝き出す

それはシャンパンのような淡い色

ぷくぷくと浮かぶ泡のように
小さく弾ける音になるのだ

ピエロは今日も月を見ていて
月もまたピエロをじっと見ている

ピエロはもう一人ではなかった

寂しくなったら月を見て
シャンパンの音を聞くのだから

それは弾ける繊細な音

ピエロにしかわからない音だった

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