詩|白いたんぽぽ
もう誰も住んでいない家の前には
綿毛になったたんぽぽがあった
それはいくつも生えていて
風が吹くとゆっくり揺れた
白いワンピースを着た女の子が
その家の庭に忍び込んで
白くなったたんぽぽを
一つ摘むと息をかけた
風に乗ったたんぽぽが
遠くへ遠くへ飛んでいく
窓のそばで雲を見ていた
ゆきちゃんのところにやってくると
ゆきちゃんはその日ワンピースを着て
久しぶりに家の外へ出た
風はゆきちゃんを迎え入れ
目の前には美しい花が広がり
いつの間に木々は葉をつけて
それがさわさわ揺れていた
鳥たちのさえずりも賑やかで
川のせせらぎも気持ちがいい
風が吹くたびに肺が膨らみ
どこまでも進んでいけそうだった
誰も住んでいない家の前には
白くなったたんぽぽが
たんぽぽの綿は風に乗って
空へ空へ登っていった
あれはどこへ行くんだろう
春の空は軽やかで
飛行機雲は真っ白だ
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