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【石狩データセンター10周年-挑戦の軌跡-】想定と違った!初めての自社データセンター建設・運営

さくらインターネット、広報担当の中西です。
今回は、石狩データセンターの開所前~開所後間もない頃(2010年~2012年)のエピソードをご紹介します。

東日本大震災の影響による方針転換と堅牢な通信の確保へ

2010年6月に、北海道石狩市にて郊外型大規模データセンターを建設することを決定いたしました。さくらインターネットとして、初めての自社データセンターの建設です。

建設決定当初の石狩データセンターは自社サービスを運営するためのデータセンターであるため、当初の運営方針ではお客さまの入局は想定しておらず、需要動向に合わせて徐々に自社サービスを提供するための運用体制を整えていこうとしていました。ところが2011年3月11日、石狩データセンターの地鎮祭が行なわれた翌日に東日本大震災が発生。これにより、首都圏の地震や津波、液状化のリスクに対するBCP・DRの観点から北海道という土地が注目されるようになりました。
そのような需要変化の流れの中で、BCP対策のために大きなスペースを必要とするお客さまとの契約が決まり、当初は需要動向に合わせて順次構築していく予定だったサーバールームのうちいくつかを、コロケーション用に設計変更することになりました。コロケーションの場合は、サーバールーム内の設備や運用サービス内容に至るまで、お客さまのご要望に応じた個別設計を行います。必要な設備の構築、入館受付の方法や各種規約、それらをサービスとして運用するための手順書の作成などを速いペースで整える必要があったため、大変な苦労がありました。
後に見学会のイベントが多数開かれるようになり「ハウジングサービス」も始まるなど、現在では多くのお客さまのご入局があります。

また東日本大震災は、石狩データセンターのバックボーンネットワークの設計にも影響を与えました。震災の当時の石狩データセンターは、東京~石狩間のバックボーンネットワークの検討段階でした。当初は冗長経路として太平洋側に沿って敷設された「内陸ルート」と「海底ケーブルルート」の2系統でバックボーンネットワークを確保する予定でした。しかし、震災によりどちらのバックボーンネットワークも被害を受け切断されてしまいました。「内陸ルート」は早期に復旧出来ましたが、「海底ケーブルルート」は被災状況が激しく当面の復旧が不可能となりました。そのために急遽、「日本海側ルート」の敷設を打診・交渉を行ないました。その結果、開所までに太平洋側の「内陸ルート」と日本海側の「日本海側ルート」2系統の確保ができ、1号棟と2号棟別々に用意されたMDF(主配線盤)まで敷設ができ、現在も石狩データセンターは堅牢な通信の提供ができております。

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MDF室

開所当時の「困った!」から生み出された石狩データセンターのノウハウ

建設決定時との想定が異なったことは他にもあり、その内の一つが屋根です。石狩データセンターの屋根は、屋根に積もった雪を風の力で除雪するために独特の曲げ加工がされています。これは石狩データセンター竣工前の2010年12月~2011年3月まで、現地の敷地内に屋根の一部を縮小したモックアップを作成し、屋根および外周部の積雪状況や断熱性能の検証をしました。実験結果は、非常に良好で大きな問題はないということだったのですが、一点見逃していたことがありました。それは排熱です。

屋根の実験

屋根のモックアップ検証の様子

実際に石狩データセンターの稼働が始まると、IT機器より排出された熱が屋根に積もった雪を溶かし、その雪解け水が再度凍り、つららとなり落ちてくるという想定外の出来事が起こりました。つららはサーバーなどのIT機器を始めとした大型の荷物を搬入・搬出といった荷捌きをするためのトラック搬入口付近に多くできる傾向がありました。当時はそこが石狩データセンターの唯一の搬入口であったため、従業員をはじめとした人が怪我をしないように注意喚起として看板を設置するなどの対応に追われました。そのような経験から、2016年に開所した石狩データセンター3号棟ではそもそも屋根から雪が落ちない陸屋根にし、最初に開所した1号棟2号棟については屋根を取り付けました。これにより現在は、つららの心配をすることなく安心・安全に荷捌きを行えるようになっています。

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つらら除去の様子

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屋根がついている2号棟の搬入口

開所当時に困ったことをノウハウとして蓄積し、後のサーバールーム構築や運用に生かされたものとしては以下のようなものがあります。2012年1月まで提供していたサービスのサーバーは前後両側からマウントができるオリジナル設計の物を採用しており、石狩データセンターに当初設置されたラックはそのサーバーの熱を効率よく排出するために工夫されていました。しかし、メンテナンスのことはあまり考えられていませんでした。サーバーのメンテナンスは背面側で行なうことが多く、熱を効率よく排出するために設置していたヒートシャッターの着脱が想定以上に手間を感じさせる要因となり、運用には苦労しました。他にも、ラックの施錠解錠の導線や扉の形状など手間と感じる部分が多くありました。このように、ラックおよび付帯する物品の設計には設備の管理者だけではなく、データセンターの勤務者が関わり現場の事情を反映させていく事の必要性を感じました。また、初めに構築された1号棟のAゾーン・Bゾーンでは、1日に2回行なわれるラックの施錠点検において1ラックごとに施錠の確認を行なっていました。これは、非常に時間のかかる作業でした。そこで、次に構築された1号棟のCゾーンでは、下の写真のように、施錠がされていないラックはドアの取っ手が飛び出るものを採用し、列ごとに一目でわかるラックを採用しました。このように蓄積されたノウハウはそれ以降に構築されたサーバールームに生かされ、ブラッシュアップされていきました。

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1号棟のAゾーン・Bゾーンのノウハウを生かし作られた1号棟Cゾーンのサーバールーム

北海道ならでは、キツネと雪

また北海道ならではのエピソードは、屋根だけではなく他にもあります。データセンターは非常にセキュアな施設となっています。入局一つにとっても石狩データセンターでは身分証の提示やICカードが必要なゲートが何重にも施されて、防犯カメラもいくつもあります。ある日、防犯カメラに怪しい影が映り込んでいました。よく確認すると、それはキツネでした。石狩データセンターにあるセキュリティゲートの内の1つ、車路ゲートは下が空いている仕様となっています。車の入場を制限するためのゲートですので、人がここを通過すると警備に制止されるのですが、キツネは難なくパスをして侵入していたのです。さすがに、館内には入れず、駐車場スペースまでの侵入でしたが、このままにすることはできません。対策として1年間、狩猟の資格を持っている人に罠を仕掛けてもらいました。罠にキツネはかかりませんでしたが、カラスがかかるという珍事件も起こりました。

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セキュリティゲートの内の一つ、石狩データセンターの入り口のゲート

石狩データセンターはさくらインターネットにとって初めての自社ビルいうこともあり、ビルオーナーとしての苦労もありました。賃貸ビルの場合、清掃や警備はビルを経営している企業により手配されていることが多いです。しかし、自社ビルの場合はそれらを自分たちで調整・手配し、防災訓練や衛生点検、防災検知の煙感知器チェックといったことを行なう場合は、テナントのお客さまへの報告も必要です。これらの手配や報告は、東京・大阪でテナントとしてデータセンターを借りていることもあり、ある程度の勝手はわかりましたが、問題は除雪でした。北海道という土地柄、除雪は必須ですが、どのタイミングで除雪の手配をすれば良いのか、皆目見当もつかない状況でした。開所当初は、北海道のビル管理会社のアドバイスを受けながら試行錯誤を繰り返していましたが、現在はデータセンターの廊下の面よりも積雪量が増えたら除雪を手配するという基準ができ、毎年除雪を行なっています。

おまけ:石狩データセンターの開所式の準備

最後に、石狩データセンターの開所の思い出を訪ねると皆が口をそろえて話してくれるのが開所式のエピソードです。開所式は当時の北海道知事を始めとした多くのお客さまをお招きして盛大に行ないました。盛大に行なったと言うことは、それだけ準備も大変だったと言うこと。開所式で行なったサーバーの「電源始動セレモニー」を行なうためのラッキング作業をはじめとし、エントランスへお客さま用スリッパ200足分の配置、ご来場いただいたお客さまにお配りした「石狩データセンターカステラ」を収める箱の組み立てなどなど石狩データセンターで働くメンバーが一丸となり準備を行ないました。

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電源始動セレモニーの様子

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石狩データセンターカステラの箱詰めをする役員と社員

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