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ふーちゃんはすぐに泣いてしまう

【櫻の魔法 〜図書館の記憶〜「齋藤冬優花」】
「綺麗だね〜」

友人の結婚式に来た。

「あ、ちょっと待って泣きそう」
「ふーちゃんって意外と涙脆いよね」
「うるさい笑」

付き合って3年、お互いそろそろいい歳だし結婚も視野に入れたいけど今まで一度もそんな話をされたことはない。

「結婚おめでとう!」
『あー!ふーちゃん!ありがとう!』
「旦那さんも由依を何卒宜しくお願いします」
『期待に添えるよう頑張ります!』
『大袈裟だよ笑』
「初めまして○○です。冬優花がいつもお世話になってます」
『あぁ!ふーちゃんの!初めまして』
『あ、そうだ良かったら○○さん、この後の余興参加してくださいよ。丁度男手が欲しかったんです』
「もちろん!」
『ちょっとだけ準備があるんで着いてきてください』
『......ふーちゃんの彼氏、良い人そうだね』
「そっちこそいつの間に?」
『彼ねちゃんと私が卒業するまで待ってくれてさ....一度ちゃんと断ったんだけどね』
「一途なんだね.....」
『ふーちゃんは?結婚とか』
「ん〜まだなのかなぁ.....」
『そうなの?もう3年でしょ?』
「うん、まだ一度もそんな素振り見せてこない」
『意外と考えてるかもよ?』
「そうかなぁ.....」
『知らんけど』
「笑笑」『笑笑』

式は順調に進み、ブーケトスの時間がやってくる。

『ふーちゃんもぜひ参加してよ』
「いや私は.....」
『大丈夫だと思うよ?ほら』

彼を見ると何かを察したように優しく微笑んだ。

「え.....あ.....」
『なんで泣きそうなの笑』
「いや......大丈夫.....」
『絶対に取ってね』
「うん......」

『それではこれからブーケトスを行います。新婦からブーケを受け取った方には近いうち大きな幸せが訪れると言われております。その幸せの形は今の時代、何も結婚だけではありません。素敵な出会いや出産、未来に羽ばたく大きなチャンスかも知れません。ぜひとも独身、既婚に関わらず多くの方にご参加頂きたいと思います』

由依は私を見て微笑み、隣に居る彼の顔を見ると安心できた。

「ふーちゃん行っておいで😊」
「.....分かった」

『準備はよろしいでしょうか?それではみなさん一緒にお願いします』
『3!2!1!』

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「ふーちゃ〜ん」
「なに〜?」
「目開けてもいい?」
「ん〜....もうちょっと待って」
「分かった〜」
「......あはは笑  うそだよ開けていいよ」
「開けるよ?」
「うん」
「見るよ?」
「うん笑」
「ほんとにいいの?」
「早くしてよ笑」

純白の衣装を纏った彼女の潤んだ瞳に反射した僕は確かに涙を流していた。

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