くりぃむしちゅー
【櫻の魔法 〜 くりぃむしちゅー 〜「大沼晶保」】
「ご飯できたよ〜」
「ん〜」
親の再婚で姉ちゃんが出来た。
「早く食べてよ冷めるじゃん」
「後で食べるから」
「お姉ちゃん1人で食べることになるじゃん」
「今良いとこなんだよ」
「もう.....」
しかも反抗期にそうなったから接し方が分からない。
「.....」
「やっと来た〜.....」
20分後くらいにリビングに行くと姉ちゃんはソファに座ってた。
「はい食べるよ」
「え?食べたんじゃないの?」
「一緒に食べたかったから待ってたの」
姉ちゃんは小走りでご飯をよそう。
「ご飯ほくほくだぁ.....」
「姉ちゃん」
「なに〜?」
「.....いやなんでもない」
「そう?ドレッシングどっちにする?」
「ごま」
「は〜い」
「.....」
「はい」
「ありがと」
「あ、お茶お茶.....」
ご飯の時、いつも姉ちゃんは動き回る。
一度で全部用意したらいいのに。
「よし、頂きます」
「頂きます」
「今日、シュークリーム買ってるから後で食べてね」
「うん」
テレビには姉ちゃんが好きな芸人さんが映ってた。
「.....母さんは?」
「今日も遅くなるって」
「そう.....」
「お父さんは今日も泊まりだよ」
「.....姉ちゃんってさ」
「うん?」
「寂しいとか思わないの?」
「なんで?」
「.....いやなんでもない」
ひと口じゃ食べられないくらい大きいからあげを食べようとする。
「別に寂しくないよ」
「.....」
「今は○○が居るからね〜」
姉ちゃんはいつも恥ずかしげもなくこういうことを言う。
「やめてよそういうの」
「なにが?」
「.....なんでもない」
「今日のからあげどう?味濃くしてみたけど」
「大きすぎ」
「え〜...ごめん.....」
「あと今日の給食からあげだった」
「うそ!」
姉ちゃんは冷蔵庫に貼られてる献立表を見に行った。
「うわ〜ほんとだぁ.....見てなかった.....」
「.....別にいいけど」
「ごめんね」
「すぐ謝るのやめてよ」
「.....ごめん」
別にこんな事が言いたい訳じゃないのに....。
「ごちそうさま」
「あ、シュークリーム食べてね」
「さすがに覚えてるから」
「そっか.....」
シュークリームを持って自室に戻り、しばらく友達とゲームしてた。
『そしたらまた姉ちゃんが怒ってきてさ、まじウザイんだよね〜』
「ふーん」
『そういえば○○って姉ちゃんできたんだっけ?』
「そうだけど」
『いいな〜結構可愛くなかった?』
「....まぁ」
『ハプニングとかない訳?笑』
「ねぇよやめろ」
『そんな事言って本当はあんじゃねぇの〜?』
「ないって....あ、ヘビーアモない?武器変えるわ」
だから余計接し方に困る。
『俺も○○の姉ちゃんみたいな姉が良かったなぁ〜』
「別に変わんないって」
23時、ゲームをやめて水を飲みにリビングに向かうとまだ電気がついていた。
たぶん母さんが帰ってきたんだと思う。
自分の名前が聞こえてきて風呂場に隠れる。
「ごめんね晶保ちゃんに任せてて」
「全然」
「ほら○○今、反抗期じゃない?」
「ですね笑 今日もからあげ大きいって怒られました」
「あいつ....」
「でも嬉しいです。ちゃんと毎日食べてくれて」
「△△くんは帰ってこないからね.....」
「お父さん忙しいから.....」
「毎日作らなくてもたまにはスーパーで買ったものでもいいのよ?晶保ちゃんだって忙しいでしょう?」
「できるだけ手作りしてあげたいんです。きっとお母さんの料理とか食べたいはずだからせめても、と思って」
「ほんとできた子だわ.....」
その日は水を諦めて自室に戻って寝た。
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次の日の放課後、新しいゲームを買いに行くとなにやら抽選会をしてた。
『ではこちらから1枚お引きください!』
「.....」
『あ、5等ですね〜』
渡されたのは飴だった。
しかも別に好きじゃない味の。
家に帰ると姉ちゃんが夜ご飯を作ってた。
「おかえり〜、ご飯もうちょっとでできるからね」
「.....姉ちゃんいちご好き?」
「好きだけどどうしたの?」
「これなんかもらったから」
「いいの?」
「うん、俺好きじゃないし」
「え!?いちご嫌いなの?」
「うん」
「そっか.....」
自室に戻り、ご飯まで宿題をしてた。
「○○〜ご飯できたよ〜」
「ん〜」
ちょうどキリが良かったのですぐ向かった。
「あれ早いじゃん」
「.....」
「ごめん一瞬待ってて」
「別にいいよ」
ソファに座って待ってたら姉ちゃんのスマホに来た通知をふと見てしまう。
[あ!でも○○いちご嫌いだったかも!]
母さんからだ。
「お待たせ〜座って座って」
今日はクリームシチューだった。
「頂きます」
「どうぞ!」
ふと、しばらく食べてない母さんが作ってくれたクリームシチューを思い出した。
「どう?」
「美味しいけど」
「え!!ほんとに!?」
「え?うん」
「そっかそっか.....良かったぁ」
またテレビには姉ちゃんが好きな芸人さんが映ってた。
「ごちそうさま」
「うん!」
お茶を飲むために冷蔵庫を開けるといちごが1パック入ってた。
「これって.....」
「あ!ごめん.....いちご嫌いなの知らなくて.....」
いつも夕食のあとにデザート的なものが出てくる。
たぶんそれを謝ったんだろう。
「いや別に」
「他に嫌いなものある?」
「ないよ」
「分かった〜」
「.....姉ちゃんは?」
「私?」
「うん」
「しょっぱいと見せかけて甘いものかな」
「なんだそれ」
「なんかあるじゃんコーンポタージュとか!」
「ふーん」
「あ、ねぇアイス食べる?」
「今はいらない」
「そっかぁ....あとで買ってくるから食べてね」
「別にわざわざ買ってこなくていいよ」
「違うよ私が食べたくなっただけ」
「.....そういうのやめてよ」
「え?」
「そういうのなんて言うか.....ウザい」
「.....ごめん」
いつも笑顔の姉ちゃんから笑顔が消えたことが怖くて自分の部屋に籠る。
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次の日の夜、いつもの時間に姉ちゃんが帰ってこなかった。
仕事が忙しいのかと思い、仕方なくカップ麺を食べた。
久しぶりにカップ麺を食べたから、こんな味だっけと不思議だった。
少し食べ進めたら姉ちゃんが息を切らして帰ってきた。
「ごめ〜ん!!」
「.....おかえり」
買い物袋と仕事のバッグを両手に持って汗をかいてた。
「仕事伸びちゃってしかもスマホの充電切れちゃっ.....」
姉ちゃんはカップ麺を見ていた。
「.....ごめん、遅くなると思ってカップ麺食べちゃった」
すると急にその場に座って泣き出してしまった。
「え、」
「そっかぁ.....ごめんね遅くなって.....」
「姉ちゃん.....」
「あ!違う違う目にゴミが.....」
そんなわけない。
「.....ごめんね.....ダメなお姉ちゃんで」
買い物袋からクリームシチューの素が崩れ落ちてた。
「.....ごめん、俺も待てばよかった」
「ううん.....大丈夫だから.....」
「泣かないで.....」
「ごめんね.....」
涙を拭いて、買ってきたものを冷蔵庫に入れだした。
「あぁ.....すっごい大きいゴミが目に入って来たんだよね.....笑」
「ごめん、姉ちゃん」
「○○は悪くないよ」
「違う.....その.....」
「なに〜.....?」
「.....俺、姉ちゃんの料理好きだから」
「え?」
「姉ちゃんの料理、暖かくて好きだから.....」
「.....そっ.....か」
「まだお腹空いてるから食べたい」
「でも.....」
「カップ麺1個じゃお腹いっぱいにならないから」
「.....わかったすぐ作るね」
あまりにも気まずくて自分の部屋に逃げる。
.....泣いてるところ初めて見た。
しばらくして姉ちゃんの声が聞こえた。
「○○〜ご飯できたよ〜」
いつもの姉ちゃんの声だった。
「お待たせ」
「ううん」
「あ!今日、アイスあるから後で食べてね」
「姉ちゃん」
「なに?」
たぶんこの先こんなチャンス来ない。
そう思った。
「いつもありがとう」
「.....え?」
「姉ちゃんの料理全部美味しいから」
「.....」
「俺さ.....急に姉ちゃんが出来て、どう接したらいいか分かんなくて」
「.....」
「思ってもない事まで言って.....ほんとにごめん」
「○○.....」
「次からちゃんと待つから、毎日姉ちゃんのご飯食べたい」
気づいたらまた姉ちゃんは泣いてた。
「そっか.....そっかぁ.....」
姉ちゃんは泣いてる姿を見せるまいと後ろを向いてきっと涙を拭っていた。
「.....さ!冷めちゃうから食べよ!」
「頂きます」
「頂きます!」
「.....どう?」
「2日連続クリームシチューはないよ.....笑」
「ごめんね.....笑」
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