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1番好きなのは...

【櫻の魔法 〜及ばぬ鯉の滝登り〜「中嶋優月」】
「私、また告白されました」

会社近くの小さな飲み屋。
珍しくテラス席があり、夏でも意外と涼しい。
いつもほどほどに賑わっているため、毎回飲む時はここを選んでいる。

「誰に?」
「金融営業の澤部さん」
「お〜凄いじゃん」
「付き合っちゃおっかな〜.....」
「いいんじゃない?金融営業ってどうなっても続くから将来安泰じゃん」
「.....やっぱりや〜めた」
「そう?もったいない.....すみませ〜ん」
『は〜い、ただいま〜!』
「でもすごいな中嶋、モテモテじゃん」
「そんなことないですよ」
「今年入ってから何人目だっけ?」
「4人目?」
「去年ってトータル何人だっけ?」
「9人」
「このペースなら2桁行くんじゃね?笑」
「からかわないでください!」
「笑笑」
『お待たせしました!』
「ハイボールと梅酒ソーダ割りを」
『かしこまりました、』
「梅酒の方、濃いめでお願いします!」
『かしこまりました!失礼します!』
「....珍しい」
「なんか飲みたくなったので」
「また家まで送らせるのは勘弁しろよ?」
「忘れてくださいよ、それ.....笑」
「いや〜ほんと面白かったな〜あれ笑」
「いや!でもあれのおかげで先輩とも仲良くなれたので!」
「ポジティブだな」
「取り柄です」
「いいね、そういうの好きよ」
『お待たせしました!ハイボールと....梅酒ソーダです』
「ありがとうございます」
「すみません、枝豆追加で」
『かしこまりました!ありがとうございます!』
「....先輩は?」
「なにが?」
「彼女とか」
「え〜.....今は要らないかなぁ」
「.....先輩から見て私ってありですか?」
「今、要らないって言ったばかりなんだけど笑」
「アリかナシかだけ!🙏」
「ん〜.....」
「.......」
「.......なしかな」
「えー!なんで!?」
「なんで.....?大切な後輩だから?」
「えぇ.....こんなにモテてるのに?」
「自分で言うな」
「はぁ.....」
「なんで落ち込むんだよ笑  一応褒めたつもりなんだけど」
「なんか悔しい....笑」
「天下の美人様がこんなんで落ち込むんじゃないよ笑」
「美人!?美人って言いました!?」
「え?言ったけど」
「そっかぁ.....笑」
「いや周知の事実だろ。あんだけモテてりゃ」
「んふふ笑」
「なんなんだよ笑」
「別に〜?」
『失礼します!枝豆です!』
「ありがとうございます....まぁそうだな。中嶋は美人だし仕事も出来るし、みんなからしたら理想なんだろうな」
「そうなんですよ〜笑  もうほんと困っちゃいます〜笑」
「自分で言うな」
「さっき『今は』って言ってましたよね?」
「言ったけど」
「ってことはいつかは欲しいって事ですか?」
「そりゃ家族の1つくらい持ちたいよ」
「先輩のタイプってどんな人なんですか?」
「ん〜.....料理できるのは必須かな」
「先輩って自炊しないんでしたっけ?」
「全然できない」
「へ〜.....料理.....」
「あとは笑顔が可愛いとか」
「え〜.....もう外見?」
「お前が聞いたんだろ引くなよ笑」
「つまんない.....笑」
「それ以外特に無いしなぁ」
「仕事ができるとか!」
「あ〜....たしかに話してて楽しい人が良いな」
「ほう....」
「....ってなるとやっぱり頭良い人がいいか」
「....もしかして先輩、経理の璃花ちゃん好きだったりします?」
「あ〜石森さん?.....たしかに」
「えぇ!!?」
「あ、いや全然好きとかではないけど」
「そっかぁ....」
「可愛いなぁってくらいよ」
「ああいう子が好きなんだ〜.....」
「いやだから笑」
「料理.....」
「中嶋って料理するんだっけ?」
「へ?で、できますけど」
「出来なさそうだな.....笑」
「できますから!!」
「ほんとか?」
「じ、じゃあ今度お弁当作ってあげます!!」
「お、いいね!いっつもコンビニで同じようなのばっかりだから人が作ったご飯食べたかったんだよね〜」
「なにが好きですか?」
「なんだろう.....肉じゃがとか?」
「肉じゃが.....」
「和食好きなんだよね〜」
「あ、だからいつもひじきのお惣菜とか食べてるんですか?」
「あ、そうそうよく見てるね」
「いやまぁ隣なので笑」
「ちょっと楽しみかも」
「....がんばろっと」
「あ、ごめん聞こえなかった、なんて?」
「なんでもないです!」

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