わたがし
【櫻の魔法 〜わたがし〜「村井優」】
「嬉しいですけど.....先輩に無理させてないかなって.....」
村井に夏祭りに誘われた。
「してないよ笑 夏祭り行きたかったけど今まで全部バイトだったから来れて良かったよ」
「ほんとですか....?」
「うん」
村井は大きなわたがしを片手に持ちながら不安そうに前を向いた。
「逆に良かったの?僕で」
「先輩が良かったんです」
真っ直ぐ見つめられても僕にはその勇気はないよ....。
「.....そっか」
「わたがし食べますか?」
「いいよ食べなよ」
「そうですか.....」
なんでそんな寂しそうな顔......。
「えーっとやっぱり貰おうかな」
「食べたかったんじゃないですか〜笑」
村井はたぶん感情が全部顔に出る。たぶん。
「美味しいですか?」
「.....うん美味しい」
「良かったです😊」
「わたがし好きなの?」
「ん〜....たぶん?夏祭り来たら毎回買ってるかもです」
「へ〜」
「先輩は何が好きですか?夏祭りの食べ物」
「僕、ベビーカステラ好きなんだよね」
「え!私、今食べたいなって思ってました!」
「ほんとか?笑」
「ほんとです!」
「じゃあ探そっか」
「はい!きゃっ!」
他のお客さんとぶつかって僕が支えた。
「危ないなぁ....大丈夫?」
「あ....りがとう....ございます」
優の肩は信じられないくらい熱かった。
「.....あ、あの」
「ご、ごめん!ほんと気をつけろよな〜」
「ごめんなさい....」
「あぁ!違うよ!?あの人がね!」
「そっちか笑」
しばらく2人でぼーっと屋台の間を歩いてた。
「先輩って優しいですよね.....」
「なんで急に?笑」
「.....急じゃないです」
「え.....?」
「私、知ってますよ。みんなに優しい訳じゃないの」
「そんな事ないよ、みんなに優しくしてるつもりだけど....」
「.....先輩、今日どうして来てくれたんですか?」
「それはさっき言っt」
「ほんとのこと言って欲しいです」
急に袖を掴まれる。
「私は先輩の事g」
「好き....なんだ....村井のこと」
「先輩....」
「ごめん急に....」
「それも急じゃないです。だって私も好きですから」
何を言われたか一瞬分からなかった。
「私にばっかり優しくして....ずるいです。そんなの好きになっちゃうじゃないですか」
「村井.....」
「下の名前で呼んで欲しいです」
「.....優」
「はい😊」
袖から手が離れる時、手が触れる。
「.....」
「あ、ベビーカステラありました!」
きっと手を繋ぐなら今なんだろうけど、手汗が滲んで選択を鈍らせる。
なのに.....
「並びましょ!」
優はなんの躊躇もなく繋いでくる。
「ちょっと!」
「なんですか?」
「ごめん手汗かいてて.....」
「あ!ごめんなさい!私も....」
自分の事に精一杯で気づかなかった。
「手繋ぎたいな、が全力ダッシュしちゃいました....笑」
「ふっ笑 なにそれ笑」
「ごめんなさい、嫌ですよね」
勇気を出して力を入れる。
「ううん、繋ぎたい」
わたがしは暑さで萎み始めていた。
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