大きなダンボール
【櫻の魔法 〜大きなダンボール〜「武元唯衣」】
「唯衣」
「ん?」
「もうすぐ出なあかんのやけどさ」
「うん」
「荷物届くはずやから家に居てくれる?」
「普通に家居るつもりやったで」
「ほんまに?助かるわ」
「全然」
「ほな行ってくるわ」
「待って」
○○の後を追いかける。
「行ってきますは?」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
たまにはちゃんと見送らな寂しがるからな.....。
○○が出た後、食器を洗って洗濯物を干して、軽く掃除機をかける。どっちかだけが休みの日に絶対やること。
ひと段落ついたので、○○がオススメしてくれた「ダンダダン」を観ようと思った。
Creepy Nutsさんが主題歌やってるし、気になってたから丁度いいけど.....。
「.....ちょっとえっちじゃない?笑」
1人で良かったぁ.....。
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数分後.....。
あかん!!!怖い!!!
何このチャイムの音!!!めっちゃ嫌や!!!
帰ってきたら絶対○○しばいたるからな!!!
ピンポーン
「いやぁあああ!!!!」
咄嗟に毛布にくるまるものの、すぐに冷静になる。
「.....ちゃうわ、たぶん○○の荷物や」
スリッパを履いてドアスコープを覗くものの、誰も居ない。
「置き配かな.....」
念の為、チェーンを付けて開けると、壁にピッタシくっついためちゃくちゃ大きいダンボールがあった。
「.....デカない?笑」
人1人入れそうなくらい大きいダンボールやけど、○○の仕事がファッション系のデザイナーのため、マネキンが入ってるんやろうと思った。
ただ、部屋の中に入れようにもめちゃくちゃ重たい。
「なにこれ...何が入ってんの.....」
なんとか玄関まで入れて、後は○○が帰ったらそのまま押して入ってもらおうと思った。
「暑っ...シャワー浴びるか.....」
久しぶりに力を入れたため、めっちゃ汗かいた。
シャワーから出て、ダンボールの中身が気になったので○○に連絡してみる。
[荷物届いたけど、何が入ってんの?]
仕事中でも割とすぐ返してくれる。
[仕事用の道具]
[いっぱい入ってんねやな]
[うん?]
[いっつもあんな重たいもの持ち歩いてんの?]
[重たい.....?.....あぁまとめたらな?]
[しかも大きいし]
なんとなくダンボールに寄りかかると、さっきまでこれくらいじゃビクともしなかったダンボールが急に簡単に動く。
「あれ?なんでやろ.....」
○○からの返信が来てないかスマホの画面を見て、背筋が凍る。
[大きい?ミシンのパーツやからちっちゃいはずやで?]
「えっ.....」
今までの状況を整理する前に1番に頭に浮かぶそれのせいでスマホを落として、玄関にあるウォークインクローゼットのドアの隙間に入り込む。
「.....」
言葉が出ない。
分からないけどそこに"居る"気がする。
○○に連絡しようにも警察を呼ぼうにもスマホが無いと無理で、外に出ようにもまずはダンボールを退かさないといけないけど、これを退かすときっと.....。
必死に考えた。
この状況を打破する策を。
とりあえず警戒しながらキッチンに行って包丁を手に持とうとしたものの、手が震えて上手く持てないので逆に危険だと判断した。
いっつもすぐ返信する唯衣があのタイミングで返さないと、さすがに不審に思うはず。
壁掛け時計の時刻は11時50分。
○○の休憩が12時からで、職場から部屋まで10分。
ならこのまま残り20分、玄関を警戒し続けたらいいだけ.....。
というかそれs
「なにしてるんですか?」