時計仕掛けのオレンジ[完全版] - アンソニー・バージェス

久々に読んだ。通常版とあわせて四回目かな?

キューブリックのスタイリッシュな映画も超好きで、繰り返し繰り返し観たものだけど、よりブラックで物語に沈溺できる小説も味わい深くて素敵だ。何より、原作の主人公アレックスが読み手に話しかけてくる軽妙な語り口は、裏切りや拷問といった血生臭い場面であってもトーンが変わらず、陰惨すぎないのがポップなのだ。ライ麦が好きな人ならきっと本も気に入るだろう。

概ね映画と同じスジだけど、この完全版には映画と通常版からは抹消されていたオリジナルのラストがしっかりと書かれている。これがあるとないとでは、まったく印象が変わってしまうのだな。

映画は、「治ってよかったね!」と、またアレックスが超暴力をやらかしそうなハッピーエンド風で締められるんだけど、完全版はもう一歩先に行ってしまっている。ただそれは現実的であっても、ピカレスクロマンとしてはやってはいけない路線なのだね。むろん、原作者からすれば改変された映画は納得がいかないかもしれないが、思い切って削ったキューブリックの判断は間違ってないと思う。

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