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もはやほとんど振り返られることのない昭和の怪物 - 毒舌 身の上相談 - 今東光

天台宗大僧正、瀬戸内寂聴の師匠、谷崎潤一郎の弟子、不純異性交遊で中学を二度中退、宇野千代の元カレ、川端康成の親友。森鴎外、夏目漱石とも面識あり。仲間の芥川龍之介の自殺をきっかけに仏門へ。幼少期から喧嘩三昧で力道山にも一目置かれる戦闘力etc……などなど漫画のように面白い逸話が多すぎる御仁だが、現代においてほとんど話題に上がらないのは書いた小説がガチ過ぎて読み辛いからではないだろうか? せめて司馬遼太郎の半分でもキャッチーさがあればと悔やまれる。

この破壊的な個性なら、もっと平易な文体でライトな歴史小説を書いていたら今でも信奉者がいただろうに。

肝心のこの本の内容だが、身の上相談なのに、おまえは死んだ方がいいとか、その女をオレに紹介しろ、とか無茶苦茶言ってて笑えた。ただ、残念ながら読者から送られてきた悩み相談の手紙のいくつかは編集者の仕込みか本人が書いたものっぽい。同じような文体が何度も出てくるし、こんな言葉遣いの女や10代がいるわけねえだろってな具合なんだな。

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