「もったいないから」と続けていることは断ち切ろう ~ コンコルド効果

コンコルド効果

コンコルド効果とは、投資を継続すると損失が出てしまうとわかっているにも関わらず、これまでに費やしたお金や時間、労力などの無駄を惜しんで、失敗する見込みがある投資を続けることです。
「サンクコストバイアス」ともいいます。

コンコルド効果の由来

コンコルド効果の名前は、1970年代に開発された超音速旅客機「コンコルド」に由来しています。コンコルドは、開発費が非常に高額で、また燃費も悪かったため、開発当初から採算が取れないことが予想されていました。しかし、開発を中止すると、これまでに費やしたお金や時間、労力が無駄になってしまうため、開発は続けられました。結果として、コンコルドは開発費を回収することなく、負債はどんどん大きくなり、最終的に開発が中止された頃には、開発会社は倒産せざるを得なくなっていました。
このように、うまくいかない結果が予測できていたにも関わらず、これまでかけた費用を惜しみ、中止の判断ができないまま投資を継続してしまうことをコンコルド効果といいます。

サンクコスト(埋没費用)とは

サンクコストとは、投資や作業に使ったお金や時間、労力など、もう取り戻せないコストのことです。サンクコストは、将来の判断に影響を与えないように注意する必要があります。
たとえば、ゲームをしていて、負けそうになっていても、これまでにプレイした時間が無駄になってしまうからといって、ゲームをやめられないことがあります。これは、サンクコストに陥っていると言えます。
サンクコストに陥ると、失敗する見込みがある投資や作業を続けてしまい、さらに損失を大きくしてしまう可能性があります。サンクコストに陥らないようにするためには、将来の判断にサンクコストの影響を与えないように注意する必要があります。
あるタイミングで、事業を継続するかどうかの判断が迫られた際、これまでに投下したコスト(資金や時間など)を惜しむことを理由として成功見込みが低い投資を続けてしまうと、さらに損失を大きくしてしまう可能性があります。
サンクコストに対して、将来に対する合理的な判断を下すためには「サンクコストをあきらめる」選択肢を準備しておくことで、将来の損失を最小限にとどめられる可能性が高まります。これまでに支払った費用が無駄になってしまうからといって、失敗する見込みがある投資を続けるのはやめたほうがいいかもしれませんね。

日常生活におけるサンクコストの例

  • ゲームで負けそうになっていても、これまでにプレイした時間が無駄になってしまうからといって、ゲームをやめられない

  • 新しく始めた習い事やスポーツで、上達しなくても、これまでに費やしたお金や時間、労力が無駄になってしまうからといって、続けてしまう

  • 株で損失を出しても、これまでに投資したお金が無駄になってしまうからといって、売らない

  • 恋愛で失敗しても、これまでに費やした時間や労力が無駄になってしまうからといって、別れない

普段の仕事におけるコンコルド効果の例

「いままでやってきた業務だから」「せっかくはじめたところだから」などの理由で、有効性が見込めないのにも関わらず、中止できずにコストをかけ続けることを選択している場合などは、コンコルド効果が働いている状態にあるといえそうです。

コンコルド効果への対処方法
このような心理バイアスであるコンコルド効果を断ち切り、冷静に判断するには次のような方法があります。

▽損切り
損切りとは、損失が出た時点で、その投資を切り捨てることです。損切りをすることで、さらなる損失を防ぐことができます。
損切りを行う際には、あらかじめ損切りの金額や期限を決めておくとよいでしょう。損切りの金額や期限を決めておくことで、損切りを行うタイミングを決めやすくなり、コンコルド効果に陥るのを防ぐことができます。
コンコルド効果に陥ってしまった場合は、損切りを行うことで、さらなる損失を防ぐことができます。

▽ゼロベース思考
ゼロベース思考とは、これまでの投資額に捉われず、一度白紙にして考えることです。たとえば、事業を立ち上げて赤字が出ている場合、これまでに費やした時間やお金を無駄にしたくないので、事業を続けてしまうことがあります。しかし、ゼロベース思考で判断すれば、採算が取れないと判明した時点で、事業を撤退することができます。
ゼロベース思考は、コンコルド効果に対処するだけでなく、ビジネスにおいても効果的な思考法です。たとえば、新しい商品やサービスを開発する際には、ゼロベース思考で考えることで、より良い商品やサービスを開発することができます。

▽相談できるメンバーを決めておく
自分だけではどうしても「もったいない」という思考に陥ってしまい、冷静な判断ができないとき、客観的な意見をもらえるメンバーがいることで冷静さを取り戻し、サンクコストに惑わされず、的確な状況判断をすることができます。

▽試算する
試算することで、これまでの投資がもったいないと思い込んでいたとしても、実は撤退した方が損失を少なく抑えられる場合があることがわかります。
例えば、ある事業に100万円を投資しました。しかし、事業がうまくいかず、1年後には50万円の損失を出しました。このまま事業を継続した場合、さらに100万円の損失が出ると予想されます。一方、撤退した場合は、損失は50万円で済みます。
この場合、撤退した方が損失を少なく抑えられることがわかります。そのため、コンコルド効果に陥らず、冷静に損益を判断することが大切です。

まとめ:「もったいないから」と続けていることを断ち切ろう

コンコルド効果による「もったいない」と考える心理状態は、プライベートはもちろん事業の重要な決定の場面においても、判断を鈍らせてしまうことがあり、完全に防ぐことは簡単なことではありません。
たとえば、勉強が苦手でも、これまでに多くの時間を費やしてきたから、続けるということがあります。しかし、このまま勉強を続けても、成績は上がらないかもしれません。むしろ、別の勉強法を見つけた方が、効率的に成績を上げることができるかもしれません。
また仕事でも、あるプロジェクトに多くの時間とお金をかけてきたけれど、うまくいっていないということがあります。この場合、プロジェクトを中止した方が、最終的には得をするかもしれません。しかし、コンコルド効果に陥ってしまうと、プロジェクトを中止することをためらってしまいます。

2003年に運航を終了したコンコルドの失敗は、過去の投資だけに目を向けることの危険性を教えてくれました。過去に多くの投資をしてきたからといって、必ずしも成功するとは限りません。事業を成功させるためには、過去の投資を踏まえた上で、未来を見据えた冷静な判断をすることが大切です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?