「割れ窓理論」と「赤信号、みんなでわたれば怖くない」

割れ窓理論について

割れ窓理論とは、軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できるとする環境犯罪学上の理論です。この理論は、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案しました。
ケリングは、1960年代のニューヨークで、ある地域が荒廃していく過程を研究しました。その結果、街にゴミが散乱したり、建物の窓ガラスが割れたりしているような、環境が荒廃している地域では、犯罪率が高くなる傾向があることを発見しました。
ケリングは、このような環境が「割れ窓」に例えられると考えました。割れ窓を放置しておくと、やがて他の窓も壊れていくように、環境が荒廃すると、犯罪が誘発されやすくなると考えたのです。

割れ窓理論は、アメリカの多くの都市で犯罪対策に採用されています。たとえば、ゴミの清掃や、建物の修繕、パトロール活動などの強化が行なわれています。また、日本でも、割れ窓理論に基づいて、犯罪を予防する取り組みが行なわれています。
割れ窓理論は元々犯罪学の理論ですが、教育やビジネスの分野などでも幅広く応用されているようです。

ニューヨーク市の治安対策

割れ窓理論のもっとも有名な成功事例は、ニューヨーク市による治安改善です。
1980年代のニューヨークは世界有数の犯罪都市でした。
1994年に市長に当選したルドルフ・ジュリアーニ氏は、治安回復を公約に掲げ、割れ窓理論を採用した治安対策を実施しました。
軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できると考え、ジュリアーニ氏は、落書きや万引きなどの軽微な犯罪を徹底的に取り締まるとともに、パトロールの強化や歩行者の交通違反や飲酒運転の厳罰化などを実施しました。
その結果、5年間で殺人犯罪を約70%減らしました。凶悪犯罪を大幅に減らして治安回復を果たし、ニューヨークのイメージを大きく変えたといわれています。

ディズニーランドのこまめな清掃・修繕

ディズニーランドは、割れ窓理論に基づいて、常にきれいな状態を保っています。
たとえば、開園前の毎朝、ディズニーランドのスタッフは、園内のゴミを回収し、施設を清掃します。また、営業中にも、スタッフは、ゴミを見つけたらすぐに回収し、施設に傷や汚れを見つけたらすぐに修繕します。
割れ窓理論による犯罪抑止の狙いもあるかもしれませんが、ディズニーランドでは、こまめに清掃・修繕を行うことで、園内を常にきれいな状態に保っています。これにより、来園者もゴミのポイ捨てや施設を傷つけるような行為を行いにくくしているともいわれています。

足立区のビューティフルウィンドウ運動

ビューティフルウィンドウ運動は、割れ窓理論を逆手に取り、足立区が2006年から実施している犯罪抑止運動です。
具体的には、ゴミの清掃や落書きの撤去、街灯の設置、街路樹の植樹などのほか、住民や商店などの協力を得て、見守り活動なども行われています。
この運動は、開始以来、効果を上げており、足立区の犯罪発生件数は減少し、より安全で安心な街を実現する有効な手段の一つとして注目されました。

「赤信号、みんなでわたれば怖くない」のアンチテーゼ

このフレーズは、1980年代に活動していたお笑いコンビ「ツービート」が、漫才で披露したネタから生まれた言葉です。このネタでは、二人が赤信号で渡ろうとしているときに、一人の男性が「赤信号、みんなで渡れば怖くない」と言いながら渡っていく様子が描かれています。このネタは、当時の社会に蔓延していた「ルールを守らない人が増えている」という問題意識を反映したものでした。

「割れ窓理論」と「赤信号、みんなでわたれば怖くない」は、どちらも、小さな問題が大きな問題につながるという考え方です。これらの理論は、犯罪を防止するために、日々の生活の中で、小さな問題にも注意することが大切であることを示しているといえるかもしれません。
仕事だけに限りませんが、普段から小さな問題を放置せず、その場でコツコツ対処して、大きな問題にならないようにしていくことが、結局、何気ない幸せな人生を築くうえでとても大切だと思います。

「割れ窓理論」と「赤信号、みんなでわたれば怖くない」のアンチテーゼを意識して、自分たちの職場も、安心して働きやすい環境にしていきましょう。

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