手書きの宛名
ポストに届く郵便物の宛名は印刷されたものがほとんどだが、たまに、私宛に手書きの宛名のハガキが届く。
郵便物に混じってポストに入ったそれを見つけると、何かノスタルジーを感じる。とてもとても懐かしい文字で書かれた私の名前。誰の字だっけ、きっと昔からよく知っている人よね……と思う。そうしてエレベーターの中でハガキの裏を返して思い出すのだ。
私が書いたんじゃん!!
歯科医院からの、「定期検診の日が近づきましたよ〜」のハガキだ。前回の検診の時、4ヶ月後の予約をして、狭い受付カウンターで書かされた自分へのハガキだ。忘れた頃にポストにやってくるので、そのたび新鮮に勘違いをする。我ながらお易い脳だね。
でも、もしも本当に古い友人からのハガキだったら、どう? 何を伝えるどんなハガキなんだろう。
なーんて、何かちょっと素敵なエピソードを綴ってみたいところだけど、残念ながら私はただ、そのハガキにビビると思う。ほとんど過去の繋がりを切ってしまっていて、ハガキをもらって嬉しい人も思い浮かばない。あら、可哀想な人ね、私って。でも、それが楽だからそうしてきたんだから、過去からの連絡はない方がいい。
まあ、そんなわけで手書きの宛名のハガキに誘われて、今日は歯科医院に行った。そしてまた受付で、自分の宛名を書いてきた。
4ヶ月後の私よ、それは歯医者からの定期検診のお知らせです。