言ってるのは自分
「8月最後の日曜日だから」というショート・ストーリーを書いたことがある。最初に書いたのがいつだったのか覚えてもいないけれど、8月最後の日曜日になるとブログにそれを再掲するということを、何年か続けていた。
年を経るごとに「稚拙だなー」という思いは増しつつも、「8月最後の日曜日」というタイトルだから、まあ、いいんじゃないの? という感じで、多少の推敲をして載せていた。
「楽しみにしています」と言って(コメントして)くださる人は、ひとりだけいらした。ありがたいことに毎年、「今年も読みました」と伝えてくださった。
けれどもある年、本格的に恥ずかしくなって掲載を止めた。
どこからか、「またそれかよ」という声が聞こえてくる気がしたのだ。
「気がした」だけだ。誰にも何も言われていない。
毎年読んでいますというひとりの声を無視して、聞こえてもいない方の声を気にした。大多数の聞こえない声を勝手に聞いて、ネット上に置いていたファイルも削除した。
それから毎年、8月最後の日曜日が近づくとそのことを思い出す。私は誰の声を聞いたんだろう。