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飲んだことはないけれど

時々、娘のために漢方薬を煎じる。
娘と言ったってもう20代後半だし、もちろん基本は自分で煎じるのだが、時間の問題がある。

漢方を飲んでから30分過ぎないと食事ができないというし、その前に、漢方を煎じるのに30分必要だ。仕事から帰って夕飯までにそれだけの時間がかかるのではお腹もすく。私も早く食事にしたい。

そこで、帰りが遅そうな時は私が煎じてしまう。頼まれなくてもやってしまう。なぜなら、楽しいのである。

土瓶に水を測って入れて、4種類の漢方を入れて蓋をして沸騰するまで待つ。沸騰したら弱火にして、蓋を開けたまま20分。その後、もう一種類漢方を足して、10分。

なんとも言えない匂いがする土瓶の中を覗いて、なんだかお話の中の魔女のような、薬草を煎じる少女(?)のような気分。いや、本当に、なんとも言えない匂いがモワモワ。

そうして出来上がったら、2つのマグカップに最後の一滴まで大事に注ぐ。一つは明日の朝の分だ。

仕事から帰り、「あー漢方やらなきゃー」とキッチンに入ってきた娘が、マグカップを見て母の気遣いに気づき、安堵する。そして言うのだ。

「なんか、……少なくない?」

え?
水も時間もちゃんと測ってやっているはずなんだけど……。

ちょいちょい適当なことをする母(私)は常に疑われる。