大蛤が気を吐く
本当に雪が積もってきた。水分の多い雪だ。
昨夜、夜中にふと目が覚めた。そういうことはよくあるが、唐突に「しんきろうってどういう字(漢字)だっけ」と思った。間際に何か夢を見ていたのかもしれない。
スマホを開けばすぐ調べられることだが、そんなことをしたらまた眠れなくなるので、目を閉じたまま思い出す。
しんきろう。
「き」と「ろう」は「気」と「楼」だ。でも「しん」が思い出せない。なんとなく、いやーな感じのする字だったということだけ思い出す。「しんきろう」のイメージに合わないような、あまり馴染みのない字だったはず…。馴染みがないんだったら思い出せるわけもないか。
しんきろう…しんきろう…
わからないまま眠りに戻り、朝、目が覚めて早速スマホを開いた。
(覚えていたのも珍しい)
「蜃気楼」
ああ、そうだそうだ!
ほら、どうして「虫」の字がついているんだろう。
「蜃」て何だろう。
それはね、
蜃気楼は別名、「海市(かいし)」とか「浮島」ともいうとか。
そういえば福永武彦の小説に「海市」というのがあった。未読だしタイトルしか知らなかったけれど、あれも「蜃気楼」という意味だったのね。(実は「うみいち」と読んでいた)
それにしても、大蛤が気を吐くだなんて、絵を思い浮かべると滑稽でもある。
もう忘れないぞ「蜃気楼」の「蜃」
……と思ったけれど、龍じゃなくて蛤の方を思い出しちゃったらまた分からなくなりそうだ。