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あたまの神様

<監督補佐>
大紀町大内山に入ってログ倉庫建築現場に行くまでに「頭之宮四方神社」がある。土地を購入してから何年も神社の案内看板は見ていたが、いつも素通りしていた。
少しでも早く現場に行って作業をしたい現場監督が寄り道をしたがらなかったからである。出来ることなら毎日でも現場に行きたい監督は、思い描いたその日の作業工程に一刻でも早く取りかかりたくて、いつも気もそぞろなのである。

そんな監督から、ある年の1月4日の朝、山へ行こう、と電話があった。「え~っ、もう働く?!」。仕事始めは6日か7日から、ということで安心していた監督補佐の当然の拒否反応に「作業は無しで、ちょっと現場を見るだけ、頭之宮四方神社に初詣に行こうではないか」と言う監督。

「あたまの神様や、拝んでおきたい」「君も惚けんように拝んどいたらええ」と一歩も引きそうにない監督。

確かに現場監督は「あたま」が仕事の要。監督のあたまが機能低下すると、職場は閉鎖せざるを得ない。お正月早々、監督の「あたま」の保護と維持を祈願しておくと御利益があるやも知れん、と諦めて出かけることにした。

車で通り過ぎる際に見る看板を、見たままの「あたまのみや しほう じんじゃ」と読んでいたので、私の中では、四方八方に御徳を振りまく頭の神様、のイメージが出来ていた。ところが神社入口の看板には「こうべのみやよもうじんじゃ」とフリガナがふってあるではないか。合っていたのは「みや」と「じんじゃ」だけ。。持っていたイメージはぐらついてきた・・一体どんな神様なのか。

こんな読み方だったのか・・

この神社に祀られているのは桓武天皇の子孫の唐橋中将光盛卿だそうである。

この中将が祀られることになった経緯は神社によると、

「村の子供達が川を流れて来るドクロを見付け、拾って遊んでいたところ、村の老人がこれを見て『不浄』だからとドクロを捨てさせ、子供達を家に帰らせた。

その直後、この老人は乱心し、大声で中将の言葉を話し始めた。中将が言うには『子供達と楽しく遊んでいたのに、予に向かって屈辱を加え遊びを妨げた。もしドクロを崇め祀れば、汝の乱心を止め、万民に幸福を与え、永く守護する』とのことだった。

この様子を見ていた村人は畏怖敬心をもって、老人の非礼を謝し、神殿を造営してドクロを祀った。」

そして今日の頭之宮四方神社に至っているらしい。

天皇の子孫ともあろう御方のドクロが川を下っていたのは何故なのか、一体何があったのか、腑に落ちないのであるが、神社はそこまで説明していない。尤も、昔話というものは、茫漠とした部分があるからこそ、各自それぞれに、いにしえに思いを馳せることが出来るのであろう。桃太郎の桃だって、何故、川を下って来たのか、川上で一体何があったのか、腑に落ちないままでいいのである。

神社の水は知恵の水。力を頂ける石もある。

初詣の社務所で馬の置物を頒布していたので、1匹授かって帰った。とても可愛いので、次の週にも立ち寄って、職場用にも1匹持ち帰った。自宅に来た馬には「ご神馬さま」と名付けた。

「ご神馬さま」

次の年も「ご神馬さま」を求めて神社に行ったのだけれど、いなかった。「ご神馬さま」は馬年だけのものだったらしい。

「ご神馬さま」が欲しくて、12年後の馬年に駆けつけたものの、別の馬だった。
馬以外の置物も頒布している。

今までに頭のかみさまを数回参拝した。監督補佐の頭の具合は「あたまの神様」にお願いしたから、この程度で済んでいるのだろうか、と言えなくもない昨今ではある。現場監督は遠くの神社ではなく、最近は近場の神社を毎日参拝している、と自慢する。願うのは「宝くじを当てておくんなさい」だそうだ。神社も種々の願いを野放図に持ち込まれて受け止めるのに大変だろうと思う。

<現場監督>
日本の神社というのは簡素で清々しくっていいものだ。祀られる対象も神話の人であったり、実在の人であったり、動物であったり、植物であったり、鉱物であったり、山であったり、川であったり、何でもありのところが面白いし気楽である。

頭之宮四方神社の御祭神は唐橋中将というから、実在の人物ということになる。中将が何で大紀町大内山に居城を持っていたのか、そのあたりの説明は今のところ見たことがない。都で失恋でもして山の中に籠もり、学問に励んだのであろうか。

兎に角、頭の神様ということになったことから、受験生本人や親族の御参りが絶えないのである。この為、この神社の財政は豊かな様子である。全国にある天満宮の小型の様なものである。

天満宮といえば、私の自宅から事務所まで毎朝通る途中に大阪天満宮がある。毎朝ここに参拝して、あるお願いをしている。「天神様!!宝くじの1等が当たるように、おいべっさんに頼んでおくれやす。宜しうお頼み申します」とお願いをして頭を深々と下げてから事務所に向かっている。

宝くじが当れば、大内山に別荘が建築出来る。それに、道を挟んだ西側の山3つを買い、太陽光発電事業、水の輸出事業、更にはその両方を生かした水素燃料の生産事業をやりたい、と夢は果てし無く膨らむ。笑う勿れ!!人間、夢を持つことが大事なのだ。宝くじが当ってもゆめゆめ嫉妬するなよ!!

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