ギブミースピード - 単位時間あたりの出力文字数を増やす
はじめに - Give me Speed!
超高速で小説を書きたい。
そうは思わないか。
オレはいつもそう思っている。
超高速で執筆して超高速で世に出したい。
スピードを求める現代社会。
どうしてそんなにスピードが欲しいのか。
タイムイズマネー。
つまり単位時間あたりの出力はそのまま資産形成速度と同義である。
趣味の創作であっても似た傾向があることは間違いない。
人間の世界においてスピードは永遠の課題である。
現代社会といっておけばだいたいすべての時代に合致する。
ゆえにだれもがみなスピードを求めていた。(オレも)
本稿は日本語をキーボードで入力することによって小説を書くオレをターゲットに、目次を読むだけでなんとなくやるべきことがわかる記事だ。
オレによるオレのための執筆速度向上理論を唱えよう。
そもそも創作におけるスピードとはなにか
ここの意識があっていないと、スピードのことを誤解する。
そもそも執筆速度の使われ方はあいまいである。
あなたは執筆速度が速いと聞いてどれを思い浮かべるだろうか?
Ⅰ.単位時間あたりの出力文字数が多い
Ⅱ.構想開始から作品完成までの時間が短い
Ⅲ.仕事を依頼されてから納品までの時間が短い
これらはすべて別々の執筆速度の概念によって定まる。
だから、優先順位を決めて、速度をあげる方法を考えるべきだ。
というわけで今回は以下のものを取り扱う。
単位時間あたりの出力文字数を増やせ
この至上命題を達成するためならばいわゆる作品のクオリティなど二の次ということにする。
汎用速度上昇試論
①タイピング速度をあげろ
単位時間あたりの入力文字数が多いやつは理論上の最大出力速度だって速い
人間の出力速度の限界はなにに依存しているのか。
タイピング速度だ。
サクラクロニクルのタイピング速度はだいたい6key/secである。
※競技タイピングで優勝するには17key/secは必要である。
これに従うとサクラクロニクルの出力文字数はどの程度になるのか。
まず理論上のタイピング回数は次のとおり。
6 × 3600 = 21600 key/hour
日本語かな変換で半分になると仮定すると
21600 × 0.5 = 10800 字(毎時)
これに加えて確定と変換と修正によっていくらか文字数が損失することを勘案して、だいたい75%が最終的な出力文字数であると考えてみよう。
10800 × 0.75 = 8100 字(毎時)
なんということだろうか。
サクラクロニクルは理論上は時速8100文字で書ける。
実際に一時間で書いた作品に『ブラックホール』がある。
こいつの文字数が5000字である。
現実はそう甘くはなかった。
だがひとつ言えることがある。
オレはまだまだこんなもんじゃねえ。
理論上の上限値がわかっているから、まだ速度をあげられるという根拠ある自信を持つことができる。
タイピング速度をあげろ。
タイピングスピードが遅い奴は理論上の最高速度も遅くなる。だいたいローマ字入力じゃなくてかな文字入力を使えていれば、秒間6文字→時速21600文字ものひらがなを入力できることになる。25%を損失すると考えても16200文字で、400字詰め原稿用紙に目一杯詰め込んでも40枚オーバーというとんでもない速度に至る。
いいからタイピングスピードをあげろ。
文章を入力し終えるまでの時間が短いということは、その分のリソースをすべて次の文章を作ることに使えるということでもある。肉体制御術だけでこれが達成されるのであれば非常に楽だ。
だから執筆速度が遅くて悩むくらいならタイピングの練習をして理論上の入力速度を向上させるべきだ。スポーツにおいて基礎練習が重要なように、キーボード入力が支配的な創作において、タイピングスピードを磨くことは常に意識されるべきことである。
②入力内容に迷いを抱くな
初稿は下書きとし一刻も早く終わらせろそれ以外は考えるなシンイチ
止まってんじゃねえぞ。
指を動かせ指を。
自分が入力している内容が正しいかどうか迷いを抱いていると、文章の入力が止まってしまう。
いい表現が思いつかない、、、泣
くだらないことに気を取られるな。
これはタイピングスピードの向上とも関連しているのだが、いま入力している文章について迷いを抱くような人間は、その迷いの分だけ余計なリソースをとられており、最終的な出力量が低下する。
くだらないと思わないか?
ゆえにこうしろ。
初稿は作品を完成させるための下書きにすぎない。
まずは終わらせろ。
文章なんてあとでどうとでもなる。気にするな。あとでどうにもならないなら、最初からどうにもならんからな。
③決まってないことや矛盾はメモだけしてほうっておけ
初稿は下書きだからあとで全部直せばいい理論セカンド
決まっていないことを見つけてしまった。
決めないといけない。
その意志決定にどれくらいの時間がかかると思っているんだ?
だいたい文章書いているのだって超高速で意志決定を繰り返している状態なんだから、意志決定に意志決定を重ねたら、ダブルブッキングで処理能力に過負荷がかかって自爆する。
人間にかかるストレスはなにかという話に、単位時間あたりの意志決定回数の多さがあげられる。
だったらタスクだけ把握できるようにし、ほうっておけ。
※文章作品とはそこまで関係ないけど、ゲーム開発の現場でディレクターやリードプランナーがぶっ倒れるのは、だいたいまわりが自分の意志決定の判断を丸投げしてきて、結果として単位時間あたりに処理できるタスクの限界量を超えてしまい過労で爆発するからである。
どんなタスクが発生するのかわかってないやつは、そもそも創作のことをなにもわかってない状態だから、無限に問題が発生して当たり前だ。
気にするな。
どんなに問題があろうと、無より有のほうが自分にとって正しい。
逆に初稿でなにも問題がないことのほうが、あとで厄介な問題を引き起こすもんだ。
だから、気にするな。
④マイルールで見えてるタスクを破壊せよ
問題はマイルールによって最速で破壊しろ
登場人物の名前が決まってなくて、AさんとかBさんとか書くのはさすがに気持ち悪くて筆が乗らない。
気持ちはわかる。
人物の名前とか地名とかの固有名詞は決まってないともやもやすることがあるよな。これらは会話文のなかでも頻出したりする。なんだったら各登場人物の人称とかあだ名とかで停止することもあるよな。
じゃあマイルールを定めろ。
たとえば名前なら地名+過去に聞いたことのある名前とか。地名は地元の住所とか。
こんなもんなんでもいい。あとで全部なおしゃいいんだから。
おまえが気をつけなくちゃならんのは固有名詞の表記ブレだ。
あとで直すときに表記ブレしてると地獄を見る。
⑤展開で迷ったらサイコロをふれ
書きたいものが決まってないんだから物理法則に身を委ねろ
展開で迷うだと?
おまえはいったいなにをいってるんだ。
なんでおまえは小説を書き始めたのかいってみろよ。
書きたい物語があるなら迷うことなんてあるわけがないだろ。
迷うということはそこに確固たるおまえの信念なんてものはないんだよ。
だから思いつく限りの展開を書き出して数字を振り、サイコロをふれ。
その結果に身を委ねろ。
はあ?
展開が思いつかないだと?
おまえはなにをいってるんだ。
なんでおまえは小説を書き始めたのかいってみろよ。
まあいい。
展開が思いつかないならTRPGのシナリオクラフトを使え
テーブルトークロールプレイングゲームのサプリメントのなかには、ゲームマスター用にシナリオ作成テンプレートやシナリオクラフトというものが提供されていることがある。
システムによって呼び名に幅があると思うが、サイコロによって展開内容を決めるのはいっしょだ。
この項目に反抗しているおまえはすでにスピードよりもクオリティを求めるフェーズに入っている
絶対にそんなことしたくない、というような状況にあるとき、おまえはすでに速度よりも品質が欲しいと考えている。
残念だが、それにつける薬はない。
これからどうするか決まるまで帰ってくるな
どうしてもテンプレートよりいいものにしたいというなら、自分で考えるしかねえだろうが。
それに神ならぬ身である我々は、しばしば王道からはずれた意味不明な展開にこころを動かされたりする。
よって、どうするか決まるまで帰ってくるな。
⑥ベースの速度をあげるなら試行回数を増やせ
創作は数をこなすことでやりたいことが明確になっていくのだよ、関口くん
だれがどこでつまづくのかなんて理屈書いてるほうはわからん。だから汎用速度上昇試論は根性論と精神論で形成されている。
ゆえに言っておく。
見切り発車しろ。
試行回数を増やせ。
ぶっちゃけ創作に興味がある人間はなんだかんだいって色々調べてからスタートするんだろ?
だったら、ちょっとかじって雰囲気を掴んだらさっさと始めろ。
そして失敗しまくれ。
ベストプラクティスは極論、ひとりにひとつずつしか存在しない。
⑥最終的な執筆速度は肉体×理論×経験
入力速度が速い×どう書けばいいのか決まってる×同じことを何度もやっている=高速で執筆できる
以上だ。
Ⅰ.単位時間あたりの出力文字数を増やす方法
①始める前にやることを短時間で決定する
40秒で支度しろ
制限時間にもよるが、たとえば1時間で書くなら40秒で支度しろ。
15分しかないなら5秒で支度しろ。
自分が書いている作品がどういうものなのかわかっていないやつがいる。
言っておくが、凡人はこの状態からはなにも書けない。
ここでオレの文章なんか読んでるやつは書けないからこれを読んでいる。
ゆえに書くことを決めろ。40秒で決めろ。
おまえには時間がない。
ゆえに速戦即決ですべてを破壊する。
40秒でこれという内容を決めたら、それを書くことだけ考えろ。
だいじょうぶだ。
止まらなければ作品は確実に完成へと近づくから。
②自分にできることだけで書く
できんことで悩んでいても仕方ないので手が止まったら現時点でできることだけやって次へ行け
これ見て創作って自分にできないことに挑戦してなんぼでしょと思ってさっさと帰るひとがいると思うんだよ。
だが執筆速度をあげるという至上命題の前ではそんなもんどうでもいい。
できんことはやらない。
現時点において自分にできることの範囲内で処理する。
かっこいい文章やおしゃれな比喩表現とかおどろくような伏線回収とか、おまえにはいろいろやりたいことがあるだろうが、できないもんはできないのだ。残念なことにな。
だから手が止まって一定時間経過したら現時点でできる処置を施して次に進め。そこがたとえば作品の心臓や脳であったとしたらておくれになる前に処置しないとだめだろ?
救命救急センターの医者になった気持ちで作品と向き合うことだ。するとおまえの手は自然と超高速で動き始める。そういうものだ。
③読み返さないために慎重に書け
読み返しと修正は時間の無駄だからミスしないように書く
ここはキーボードの入力速度をあげるのとほぼおなじことをやればいい。
自分がいま入力している文章が頭のなかで作り上げた文章と完全に一致しているかどうか目視しながら書け。
書けてたらOKということにして先に進め。
まさか作文中に何度も何度も読み返してたりしないだろうな?
そんなことをしているやつの執筆速度は遅い。
そして自分の書いているものが本当にちゃんと機能しているかわからなくなって自爆する。短時間に同じ文章を何度も読むとその文章の効果は減衰するから当たり前だ。
読み返すな。
なんか違うとか思うな。
自分に疑問を抱く隙を与えるんじゃない。
おまえの手のなかにスピードがあるとき、おまえには推敲と校正の時間が与えられるのだから、あとでどうとでもなると信じろ。
④ 項目①という神に従い矛盾や破綻を恐れずに書け
未完より矛盾や破綻のほうがいい
展開や設定に矛盾がある?
話が破綻している?
そんなもんあとでどうとでもなる。
原稿が未完になっていて公開すら覚束ないことが最大の問題だ
①で自分が決めたことに従って書け。
それさえ守っているならば、矛盾していようが破綻していようがどうでもいい。
この項目に反抗しているおまえはすでにスピードよりもクオリティを求めるフェーズに入っている
また同じことを書く。
おまえはすでに速度よりも品質が欲しいと考えている。
だが、つける薬はある。
発生した矛盾が解決できるかどうかだけ確認してから戻ってこい
解決できる矛盾なぞたいした問題ではない。
解決できない矛盾はそもそも話の根本がおかしかったのだから、気にしたところで解決することはない。
最終的におまえには作品を発表するかどうかの権利があるのだから、発生した矛盾点がなんであるか確認して、どういう状況かだけ把握して忘れなきゃそれでいい。
それに、小説は矛盾してようが破綻してようが受容されるかどうかとは別だったりする。意図的に矛盾させたり破綻させたりするのは上級作文テクニックだが、無策の矛盾や破綻との区別だって上級読書テクニックがなければつかない。
解決できる矛盾なんぞ最後まで書いてから直せばいいんだ
⑤判断力が低下したらやめちまえ
速度が低下したら休みそのあと再開できないならそれがおまえの限界説
なんかスピードが落ちてきたし、いま書いているものが本当に正しいのかよくわからなくなってきたなあ。
この状況におちいったおまえはヒジョーに疲れている。
やめて休め。それがいまのおまえの仕事だ。
なお、この方法をそれらしくしたものがポモドーロ法だ。
巡行速度に興味があるならポモドーロ法を試してもいい。
合う合わないがあること、ポモドーロ法で指定されている時間はあくまでも他人の研究成果であることを忘れるなよ。
⑥マルチタスクはするな
シングルタスクで小説書いてない時点でおまえのリソースは執筆以外に使われている
あたりまえすぎて書いてなかったが、まさか小説以外の雑事が目に入ったり耳に入ったりする状況で小説を書いているんじゃなかろうな?
全リソースを小説を書くという一点に集中せよ。
いまできることをいまできる範囲でやる。
これだけでいいんだシンイチ。
視野を狭くして音を遮断し、次になにを書かなければならないかの一点を解決しつづけることこそスピードの本質だ。
番外編:ディスプレイ周辺を隔離空間化せよ
余計な視覚刺激を減らせ
ディスプレイの近くに本棚がある?
机のうえにウマ娘がいる?
左右をちらちら見たらその他いろいろなものがあるだと?
そういったものを見た瞬間、おまえには視覚情報に対する反射が働き、処理能力が自然減衰する。
視野を狭められないなら目に映るものを減らせ。
自分の視線が執筆スペース以外の部分に向いている間に余計な情報が入ってくる状況を阻止せよ。
そのための隔離空間だ。
おまえが手元に置いていいのは、執筆管理に必要不可欠な最低限の要素と、どうしても怖くて小説が書けないときに勇気をくれるなにかだけだ。
⑦単位時間あたりの要求出力量を達成せよ
一時間ごとにやってくる要求出力量チェックに合格するように書け
ポモドーロ法で25分区切りにしてもいいが、とにかくある程度短い時間のなかで、自分が必要とされている速度を出せているのかしっかり確認しながら書け。
そしてノルマを達成できない自分を許すな。
最終的に間に合ってればいいや精神はおまえのスピードを遅くする
それが短距離走だろうが中距離走だろうが長距離走だろうが、自分を律するルールを守れないようでは速度を手にすることはできない。
最終的に締切までに終わっていればいいみたいに考えているやつは、ていよく手抜きをしているだけだ。
おまえにとって大切なのはスピードだ。
おまえが求めるスピードに達するために、計算上必要な分量をしっかりと設定して進めろ。
ノルマが連続未達のときはノルマの設定がおかしい
精神力に無限の力があると思うのは、やめておけ。
結局のところ人間というものは物理現象だ。
人間は動物なのでそのときどきに調子というものがある。
ある程度の経験則が必要になるが、自分に要求していいノルマには物理的な限界がある。それはときに脳内物質の多寡だったりもする。
自分に課すノルマは自分の調子に合わせて変更してもいいんだ。
厳しすぎるとストレスにより入力作業自体ができなくなり、計画は破綻する。おまえの求めるスピードは初稿の完成と結びついていなければ自分のためにならない、ということは忘れないほうがいいぞ。
⑧中長距離走をするときに全力疾走するな
自分の脳が持つ体力に見合った速度で走れ
人間はときにX時間でn文字書けという要求をされることがある。
それを達成するために必要なのは、キーボードを超高速で叩く腕力だけではない。
次に書く文章をどうするのか思考して決定するという脳の処理能力も必要となる。そしてこの処理能力は鍛えなければ強化されない。
自分の身体が耐えられない速度を出すやつは自壊する。
もしスピードの虜になった結果、あるとき突然書けなくなった場合、おまえは自分の身体に対して過剰な負荷をかけてしまったのだ。これはときどきうつ病と呼ばれることがあるので本当に気をつけましょう。
結論:小説書くのもスポーツよ
ほどほどに鍛え、壊れないよう程度にやれ
できることをできるようにやる。ひたすらこれを守るに尽きる。
自分に対する過剰な期待は、書き始めるときには必要だろう。
だから止めることはせん。
たくさん失敗して学ぶといい。
文字と出会い文字と行く。
トライアル&エラーのその先で。
おまえはいつの間にか超光速のプリンスになっている。
以上
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