ブンゲイファイトクラブマン(B/F/C/3落選展・碑文の裏)

「良い子のみんなお待たせ! ブンゲイファイトクラブマンだよ!」
「わー!」「わー!」「わー!」「わー!」
「ブンゲイファイトクラブマーン!」
「だれー?」
「ブンゲイファイトクラブから生まれたブンゲイファイトクラブマンだ!」
「ブンゲイファイトクラブってなにー?」
「ブンゲイファイトクラブ略してBFCは、すべての文芸の書き手たちが作品で闘うという前代未聞の、とても無茶なイベントだよ。怪文書でもチラシの裏でもなんでもいいから、原稿用紙六枚に貼り付けて、みんなで勝負するんだ。しかも、審判であるジャッジも、みんなから選出されるんだ。それでね、」
「長い」「難しい」「説明が不適切」
「ブンゲイファイトクラブマンはなんでブンゲイファイトクラブマンなんて名乗るの? 一回呼ばれるたびにブンゲイファイトクラブマンで十三文字も持っていかれるんだよ?」
「それはね、ブンゲイファイトクラブマンがママンにつけてもらった大切な名前だからだよ。桃太郎が桃から生まれて桃太郎になったように、ブンゲイファイトクラブマンもブンゲイファイトクラブから生まれたからブンゲイファイトクラブマンなんだ。だから、たとえ一度呼ばれる度に十三から十四字、時に十五字消費されたとしても、ブンゲイファイトクラブマンはブンゲイファイトクラブマンであり続けるんだ」
「カッコワルイ」
「ブンゲイファイトクラブはカッコイイよ」
「ブンゲイファイトクラブマンはどうしてカッコワルイのに生きていられるの?」
「良い子のみんなと同じくらいの歳に、ブンゲイファイトクラブマンは名前が原因でいじめられたんだ。そのことでママンとケンカした。その翌日だったよ。ママンが死んだ。ブンゲイファイターとブンゲイファイトクラブ公認原稿用紙を輸送するブンゲイファイトクラブ号に弾き飛ばされて。だがその事実はブンゲイファイトクラブカイザーの工作で、」
「待て、ブンゲイファイトクラブマン! まさか貴様は、あの時の子供なのか!?」
「そうだ。ママンはただ自分の作品をブンゲイファイトクラブ号に乗せて銀河旅行をさせたかっただけなんだ。それなのに、ブンゲイファイトクラブ号は強い光でママンそのものを飲み込んで、見落とし、跳ね飛ばした。ブンゲイファイトクラブカイザー、貴様は自分を太陽だと思い込んでいるようだな。
 ならば、オレは太陽の子!
 仮面ライターBLACK RX!」
「貴様、BFCカイザー光線を喰らえっ!」
「ブンゲイリボルケイン! 光あれ!」






 ――――ピカッ






「ぐわああああ!? 文字が見えん!?」
「ブンゲイファイトクラブカイザーが!」
「復讐はよくない! 生産性がない!」
「ブンゲイファイトクラブマンはダサい!」
「哀れな。良い子の皆まで、ブンゲイファイトクラブカイザーに洗脳されて文芸の心を忘れたか! 全ての文芸よ、我が手に集え!」

 神は言っている。宇宙はいずれ滅び、全ての宇宙文芸は等しく無となる。ならばなぜ人間は文芸なるものをするのだ?
 ママンが言った。
「人間は心にヒマがある生物。昔、漫画にそう書いてあったわ。だからね、ブンゲイファイトクラブマン。どんなに嫌なことがあっても、文芸をするのよ。それがたとえ作文以下の、文字ですらない落書きでも、その作者はブンゲイファイトクラブマンで、いつかブンゲイファイトクラブマンが書いたと過去形で語られるようになるの。みんなにね。だからあなたは、文芸をやって、みんなの暇潰しになりなさい」
「たとえ、観測されなくても?」
「そうよ。だって、あなたはブンゲイファイトクラブから生まれたブンゲイファイトクラブマンなんですもの。書かないブンゲイファイトクラブマンはただのマンよ」

「ぐぎゃああああむっ」
「どうやらオレの哀しみの方がブンゲイ強度で勝ったようだな」
「ぐぼぼぼぼ。私を倒しても第二第三のブンゲイファイトクラブカイザーは生まれてくる。貴様はその力で何をするつもりだ?」
「感想を書きに行く」
 ママン、ブンゲイファイトクラブマンを生んでくれてありがとう。ブンゲイファイトクラブマンは、ブンゲイファイトクラブママンに見せびらかす為に、ブンゲイファイトクラブの墓地に、銀河の煌めきを届けに行くよ。
「行っちゃうの?」
「ああ。みんなの心を照らすためにね」
「彼氏彼女が、承認欲求の化身でも?」
「そうさ。栄光の半分、すなわち光はみんなに平等に分け与えるべきものだから」
「もう半分は?」
「ゴミ箱に捨てた。あんなものは、生きている人間には不要さ」

 おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?