さなコン2 感想 65 - 71

前回の続きです。

3ページ目はたったひとつの作品により深刻な出血を強いられた。
正直なところ読むべきだと他人に伝えたいほどのものはないです。
そのつもりでいてください。

総張替え | 有町 朋

テレビ番組のために地球が異星人の手によって一人を残して全員有機アンドロイドに置換される。そのあと番組はつつがなく終了する。番組終了後、他の異星人によって地球が発見されるが、そこは高度に模倣された惑星であったがために、一般的な(すこし遅れた)文化の惑星であると判断されてしまう。
このテレビ番組の内容がどこかの映画で聞いたことがあるので、その時点で相当マイナスだった。本文の大部分がどうやって生存者を騙すかのテキストで占められていて、なかなか読み通しづらい。オチの皮肉が利いていたので、ショートショートだったら切れ味がよかったかもしれない。

アイドル侍 大東桐子 | kotakesi

未完成のレギュレーション違反作品。
これ以上のコメントは差し控えさせていただく。

死という技術を捨てた世界 | トラの遊び場 

不老不死という技術が生まれ、それが普及する。前半はそれによるドタバタコメディみたいなエンタメが続くが、ラスト付近で突然真面目なSFに切り替わり、死を捨てたことにより繁殖できなくなったこと、そして不死を捨てられるようになったころには不死者でなくなった人間は生きられぬ環境になっていたことが描かれる。人類は死というものの尊さを知りながら滅亡する。
台詞回しなどにおかしなところが散見され、真面目なSFとして読むと結構無理がある。ただ、書こうとしていることに妥当性があるので、案外悪い読後感ではない。感心した。

夢幻の箱庭 | はるかなつ

割と一次創作で見かける、作家の神視点による思考実験、のような形をした自己陶酔的な文章旅行に見えた。
ただ、それを自覚的にするための努力があちこちに見られて、最後には寂寥感発生させていたので、真面目に全文を読むと、それほどバカにしたもんじゃないと感じるようにはなっているかもしれない。ただ、それはあくまでも半端な創作者が読んでいるからそう感じるのであって、これが一般受けするとは思えないかな。

紅茶を一杯 | 種

滅亡後の地球で、異星人の手によって、人間が紅茶を栽培するための存在として復興するというお話。短い作品で、綺麗にまとまってはいるので、ショートショートとして読める。紅茶好きには刺さるんだろう、と数字だけ見て思った。
私は別に紅茶好きではないので、書かれている内容があまりにも普通というところも合わさって、切れ味の鈍さばかりを気にした。すとんと落ちてはいないので、新しいお茶を試すくらいのノリで読んだ方がいいと思う。

世界の螺旋 | tanakas.eth

世界を知覚する存在という主人公が、マトリョーシカみたいな構造の世界観で次々と滅亡していく人類を見つめ続けるお話。話の中にドラマ的なものはないので、本当に淡々と事象を観測するカメラの語りをどう捉えるかだけが試される。地の文と台詞の乖離が凄いので振り落としポイントになると思った。あと、この文体の中でDAOという単語もかなり異質。色々気になってしまって素直に読めなかったな。

ニュープレイヤー | 猫隼

題名通りと言えばそうだけど、大きな物語のプロローグみたいなもの。誰かと完全にコメント被りしてるけど、それが的確な表現。逆に言えばそれだけでしかないので、完結した作品かと言われると、オチてはいないと思う。
人の心だけを破壊する物理現象というアイディアそのものは悪くなかったので、それを起点にしてきっちりストーリーに仕立て上げられていたら、まったく別の感想を抱いただろう。主人公が神になるまでの過程があまりにも説明的すぎるのが、この作品最大の欠点だろうから。

というわけで以上です。
お読みいただきましてありがとうございました。

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