さなコン2 感想 48 - 64

前回の続きです。

今回は17作品です。ローラーはここで終わりにします。

このページのハイライトは『環(わ) | マラカス』。Twitterで激推しした。なんと即日レギュレーション違反も修正された。これが優勝争いに関わらなきゃなんなんだよって感じ。さなコン2参加者は全員読んで損がない作品なのでぜひ読んで欲しい。
こんなの読んじゃうと、オレももっと頑張らないとってなります。テキスト読んでる場合とちゃうで。

人類が眠るという事~あるいは永遠に続くということ~ | superNEETwriter

いとなみは繰り返される、ということを老境になって理解する人の話。
繰り返されるものと、繰り返すことに目を付けた発想がよい。それ以外はあまりよくない。短ければ短いほど、誤字による作品の歪みは大きくなるので。(20220520)

一人っきりの長旅の末 | とんぼ さめ

ある老人が鹿と出会って餌付けする。そのあとがよくわからない。
描写はいいけど物語がない。SFとして読むのは結構厳しいという印象だな。

猿に支配されし世界 | 陽向

優れた能力を持つ猿を作ったら反乱されて人類が滅亡する。
題名通りのド直球ストレートが飛んでくるお話でした。

今は亡き父母に贈る子守唄 | ピエロの涙は金平糖

ロボットに管理された世界。人間を維持するコストが払えないので人間の維持をやめるロボットのお話。人類が絶望するくだりは私が以前に書いたやつとほぼ被ってて、アーアーアーとなった。

蛙化 | 酒田青

色々あってわずかな人間だけが残された世界。人類最後の智恵ある人間の手によって、人類の生きた証は蛙のDNAの中に残されるという判断が下される。そして最後の一人が死んでいく。
非常に粗削りな印象を受ける作品で、展開というか、細かい設定がちょっと強引すぎやせんか、と思った。だけどあらすじを読んだ瞬間に「これは面白いのでは?」と思える魅力を備えているし、実際に面白いので、これはこれでありでした。

イキショウニン | だくると

謎の『彼ら』に人類の身体の管理を託し、意識は消滅する。
アリか、もしくはハチみたいな習性だなと思ったが、それだと色々齟齬が出るので、その他の何か。でもそれがなんであるかはわからない。わからないことが不満であって、その欠点が致命傷なのかなと思う。

歴史が眠りにつくまで | 黒井羊太

謎の病気が世界を襲う。その病気は眠ることで症状が抑えられるが、感染を防ぐ方法が見つからない。そのため、人類すべてを寝かせることにした。だがそれは人類の滅亡と変わらないのでは、と主人公は思う。
軽い語り口の破滅SFで、問題解決の方法が根本的な解決になってない。それにも関わらずそれを実行しないといけない状態に追い詰められてしまった人類が哀れだ。

ごはんのはなし | 王蠱

食料問題を解決するための装置を開発した先輩と後輩。装置を稼働させると、あらゆる人類が眠りについて夢を産出し始める。実はこの装置を作っていたのは夢を食べる生き物、すなわちバクだったのだ。
ワロタ。シリアスなSFをやろうとしている話の中にポンとこれが置いてあると、ちょっとすがすがしい気持ちになるね。

ねむらないのはなんのため | はるかなつ

なぜ眠らないのかについてが描かれた小説。だが、いかにもあらすじ調で続くのでちょっと読むのがつらいかな。ずるして眠らないやつがいる、というのは、あるある、と思った。

彼女の物語 | nomin

メタノベル的なのだが、結末がぼやけていてはっきり読み取れない。難しすぎるな。

熟年期の終わり、あるいは幼年期の始まり。 | superNEETwriter

地球外生体に人類が飼われるという話。淡々と進んですっと終わるのであまり引っかかるところがない。

環(わ) | マラカス

少女二人のよくある終末紀行かと思いきや、実は片側が男だと発覚した瞬間からあらゆるものがひっくり返る。途中で出てきちゃった幽霊も、実際は幽霊などではない。終末的世界観の「歪み」が、ヒバリという存在のある種の「歪み」の比喩とも読める。そんなヒバリと連れ合っていた小夜が、とある駅でヒバリと別れてしまう。そしてラストで綺麗に環ができる。
は? めちゃ面白いんだが? なんでこれがスキ3とかで止まってるんだよ。(202205201600くらい)読者はどうなってんだ読者は。

この小説には4つの勿体ないポイントがある。多分これらが読者キラーの原因かな、と思う。
・開幕レギュレーション違反(今は修正された)
・あらすじが長い
・文章が難しい(長くて意味を読み取りづらい構造のものが多い。でもすごい文章もいっぱいあるんで、一方的に悪いとは思ってない)
・タイトル

他の人の小説には悪いけど、こんなすごい作品が全然読まれてないって事実が、数字で作品を選んで読んではいけない、という教訓を含んでいる。いい物なら読まれるなどというナイーブな考えは捨てろ、って心のラーメンハゲも言ってる。
というわけでみんな、これを読もう。

百鬼夜行 | 酒田青

人間が狂乱のうちに死したのち、蜂が滅びた人間たちの姿を幻視するという物語。幻想的であり、題名に偽りなしだった。でも、そこまでかな、とも。

其の名は、月。 | 八乃丞

なるほど、月から見た地球って感じの話なのかな? やさしい語り口にキレイな描写。だけどそれ以外の内容がどうかと言われると、なんとも……ですね。

地上から天上へ | 金銀花

宇宙人に身体を乗っ取られて地球人類が滅亡する話。色々とバタバタしてる感じだったな。うーん。

Last one | 青

なんの話なのかなと思ったら、希少動物と同じレベルで人類の最後が書かれるという内容。さらっとしてるけど皮肉が効いてて、ショートショートとしていいんじゃないだろうか。

碧き惑星、ダイヤモンドの吹雪の向こうへ | 月城友麻

どわー。ド直球なSFが来やがったな。世界を復興する少女の物語。なんかデウス・エクス・マキナってねえか? とちょっと思ったけど、気にしたらいけない。なんでもかんでも桁が多すぎて笑ってしまうところがある。0いっぱいつけときゃええねん!
ぼちぼちいい感じの描写もあって楽しい作品だった。エンターテイメントとしてこういうSFが混じってると、イイね。

というわけで以上です。
お読みいただきましてありがとうございました。

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