【スタートアップ!占い師】#31 「占いのアピールにカードの絵柄をネットに載せちゃえ!」……って、それ許可とった? 占い師と知的財産③ 知的財産の基本③
自宅で占い師の活動をしているさくらさん。
自分の占いのアピールとして、SNSで三択占いを行おうとしています。
SNSで他の占い師さんたちがやっているところをみて、「自分も!」と、思ったのでしょうね。
タロットなどの写真を載せ、「どれにしましたか?では、みてみましょう」と占いの結果を展開していく、SNSでの占い。ブログやYoutubeでもよくみかけますね。
でも、ちょっと待ってください!
それって、カードを描いた人やカードの出版社に黙ってやってもいいものなのでしょうか。みんながやっているから、大丈夫?ほんとうに?
今回は、知的財産についてお話していきます。
法律の話もめちゃくちゃ難しく、難しい文章アレルギーを起こされても困るので、 今回も帳簿や特商法などの回同様、必要最低限のところだけをピックアップして、めちゃくちゃ噛み砕いて書いていこうと思います。
これも大事な話なので、無料です。
(経験に基づく情報は有料記事にしております。無料記事が続いておりますが、いつも無料ではないです!ご理解くださいませ!)
今回は、本題につながる知的財産権・著作権についてです。
著作権について
著作権とは
そもそも著作権って一体何でしょう?
著作権とは、著作物や著作物を作った人の権利、著作物や著作者に関わったものに対する権利のことを指し、著作権法はそれらを守るためにあります。
制作したものや人の権利が守られないと、コピー品の流通や作品のパクリが正当化されてしまいますし、知らないところで自分の作品が好ましくない状態で作り変えられてしまいます。そんなの嫌ですよね……。そういったことがないように、法律で守っているのです。
著作者とは
著作者とは、著作物をつくった人やグループを指します。
著作者がサイト制作等の会社に著作権を明け渡した場合は、その会社が著作権を持つことになります。
また、著作者や著作グループはプロ・アマ関係ありません。趣味で創作をした人の著作物にも、著作権が発生します。
著作物とは
著作物とは、「誰かが制作した創作物すべて」をあらわします。本の内容やイラスト、漫画が注目されがちですが、美術品、書物、ブログの文章、SNSに投稿した文章や写真やイラスト、映画、舞台、脚本、放送内容、なにかの実演、録音されたもの、誰かが作成したプログラム、誰かが構成したデータベース、スピンオフ作品、翻訳本、脚色した演劇、写実絵画、創作物を写真や絵にうつしたもの、創作物を立体化させたもの(例えば、仏や書を木彫り化したもの)、雑誌や写真(自然的な構成ではなく、人為的な構成が含まれているもの)、なにかの解説なども著作物になります。販売されていないものも著作物に入ります。もちろん、著作物を作った人の年齢や性別も関係ありません。
著作物は、世に出されているものだけではありません。未公表なものも著作物に入ります。
著作物にならないものは
著作物にならないものは、以下のものになります。
・観賞用ではない実用品
(例……アクセサリー。芸術品としての作品だと著作権。実用のためのオリジナルデザインだと、著作権というよりは意匠権になる。それも意匠権を申請していないと権利の主張は難しい)
・工業用品
・ニュースなどの報道
・ただ事実を伝えているだけの言葉
(SNSでよくみる「つぶやき的な記事」がそうですね)
・普段の会話
・裁判の判例や結果
・法令の条文
・ただのデータ
・アイデア
・レシピ、なにかの手順、独自のルールや法則そのもの
(ただし、書かれた文章や写真、図には著作権がある)
・ただのイメージ
著作物の定義に「思想や感情を創作的に表現したもの」とあります。それ以外のものは著作物にはなりません。
また、生放送といった、記録媒体に残らないものも著作物に含まれないとされています。
著作権はいつ発生し、いつなくなるの?
著作物は、「創作されたときから始まる」(第51条)とあります。製作途中のものも実は著作権が発生します。
イメージのままのものは、著作物にはなりません。
著作権がなくなるのは、著作者が創作してから死後70年です。ただし、ペンネームや無名の著作物や団体名義の著作物、映画の著作物については、公表してから70年となっています。
70年経った著作物は、社会全体の共有物(「パブリック・ドメイン」)と位置づけられます。パブリック・ドメインとなった著作物は、著作権を気にせず、誰でも自由に利用することができるようになります。
なお、これは日本の著作権の場合です。
海外の著作物はどうなっているの?
占いの仕事では、海外のカードを使う方が多いと思います。
海外の著作物における著作権はどうなっているのでしょうか。
海外の著作物の場合は、国際条約を結んでそれぞれの著作権を保護しあっています。
条約によって内容が異なりますが、その中でも優先されるのが「ベルヌ条約」です。
ベルヌ条約は、「加盟国の著作物が、別の加盟国で利用される場合には、その国の著作権法が適用される(内国民待遇)」「登録しなくても権利が生まれる(無方式主義)」などといった決まりがあります。
つまり、ベルヌ条約の加盟国の創作物を日本で利用した場合は、日本の著作権法が適用されます。逆に、日本の創作物をベルヌ条約の加盟国で利用した場合には、その国の著作権法が適用されるのです。
海外の著作物のほとんどに、「公開した年(出版した年)」と「著作者(著作会社)」の記載があります。
(ベルヌ条約加盟国の)海外の著作物は日本の著作権で保護年数をみるので、「公開した年(出版した年)」+70年が、その著作物の基本的な保護期間となります。
著作者がペンネームを使わず本名で著作物を作った場合だと、著作者の没後から70年後になります。
「公開した年(出版した年)」+70年経っていても、著作者が生存していたり、著作団体が活動しているのであれば、バッチリ保護期間中です。この場合の著作権は著作者のものです。
(年と著作者(著作会社)のそばに「©」「All rights reserved」の文字が入っているものもありますが、これは「著作権持ってるよ〜」という意味です。ちなみに「®」「™」は商標権のマークです。覚えておくといいですね)
著作権の種類は大きくわけて2つある
著作権はひとつにまとめて言われることが多いのですが、実は「著作者人格権」「財産権」の2つに別れます。
著作者人格権
著作者人格権は、さらにこの3つにわかれます。
・公表権
まだ公表されていない著作物を公表する権利。
(著作者の同意なしに、勝手に公表したらダメ。ただし、公表していない著作物を誰かに譲渡しちゃったり、著作権が会社等に帰属している場合は公表OKと推定されます)
・氏名表示権
著作物に自分の名前やペンネームを表示するかしないかを決められる権利。表示する場合、どんなふうに表示するのかを決められる権利。
(ペンネームで記載したかったのに勝手に本名になっている、名前を勝手に消されたる……というのはダメ。ただし、どこかの利益を害するおそれがない場合は省略することは可能。)
・同一性保持権
著作物やお題の同一性(中身やタイトルを変えずにずっと同じまま)を保持する権利。
(著作者の意思に反して、変更したり改変してはダメ。学校教育の使用など、やむを得ず改変などを認められるケースもある)
著作者人格権は、著作権が発生したときに取得し、死亡時になくなります。ですが、死後も著作者人格権の侵害となるべき行為はしてはいけないことになっています。亡くなっても、著作者は守られるのですね。
財産権
財産権は、さらに11にわかれます。
・複製権
著作者は、自分の著作物を複製する権利を持つ。
ここで言う複製は、コピー等の複写、録画・録音、印刷、写真などの映像化、ネットへの書き起こし、スキャナー等での電子的な読み取りによる複写のことをいう。また、それらを保管することもいう。例外を除いて、複製・複写をする際は著作者の許可が必要。
許可なしに、著作物の複製・複写を作ってはいけない。例外であっても相手が「ダメ」と言っていたら、それも複製・複写をしてはいけない。
・上演権・演奏権
著作者は、自分の著作物を直接見せたり、聞かせることを目的とした上演や演奏を行う権利を持つ。
例えば、演劇やミュージカル、作曲者の生演奏など。
上演や演奏をしたい場合は、著作者や著作権管理団体に許可をもらわないといけない(JASRACなどの著作権管理団体がこの権利も含めた著作権を管理していたりしますよね)。
・上映権
著作者は、自分の著作物を、何らかの機器を用いて画面に映し出し、不特定もしくは特定の多数の人に見せる権利を持つ。上映とは、例えば、プロジェクターを使ってのスクリーン上映、プロジェクションマッピング、映像を建物に映し出してCM作品を流すといったもの。
「アニメを上映したい」など、上映したい場合は許可が必要。
・公衆放送権・公の伝達権
著作者は、自分の著作物を放送やネット等で発信できる権利をもつ。
誰かの曲や振り付けをネットで流したいとき、誰かの作品をテレビやネットで取り上げたいときは、著作者の許可が必要。趣味で著作物をネットで取り上げるときも、著作物の制作側が何も言っていない場合、もしくはガイドラインが「NG」と言っていれば、取り上げることはできない。
また、著作者は放送やネット等で発信した自分の著作物を、受信装置を使って、公に伝達する権利も持つ。音楽のストリーミングサービスやコンビニ等の有線放送などが「公に伝達する」ものにあたる。
食堂で流れるテレビやラジオもこれにあたるけれど、家庭用の受信装置を用いる場合は著作者の許可がなくても大丈夫。
・口述権
著作者は、著作物をしゃべり言葉にして公に伝えたり、広めたりする(=口述する)権利をもつ。録音・録画したものを再生されたものも含む。
例えば、作品の朗読、朗読のCD、落語の講演会など。
著作物を口述したい場合も許可が必要。
ただし、台本読みの練習や子供への読み聞かせなど、私的使用や無料で非営利なものは、著作者の許可がなくても大丈夫。
・展示権
著作者は、自分が制作した美術品や芸術品の著作物を展示する権利をもつ。写真の著作者であれば、まだ発行されていない写真の著作物を展示する権利をもつ。
ただし、美術作品の所有者が展示する場合や、所有者に了承をもらって展示する場合は、著作者の許可がなくても大丈夫。
・譲渡権……映画は除く
著作者は、著作物の原作品や著作物の複製物を、不特定、もしくは特定の多数の人に譲渡し提供する権利をもつ。
自分の作品を販売する、分冊版を作って無料で配る、本を出版して売る、録音した音源(CDなど)を売る……といったケースがこれに当てはまる。
著作物や著作の複製物を売りたい場合や譲りたい場合は、著作者の許諾が必要になる。
なお、一度許諾を得た著作物が人に渡ってしまうと、譲渡権が消える。
(中古本や中古CDなどがこれにあたる)
・貸与権……映画は除く
著作者は、不特定、もしくは特定の多数の人に、自分の著作物の複製(出版本やCDなど)をレンタルできる権利をもつ。レンタル業をしたい人は、著作者の了解は必要になる。
ただの個人の貸し借りは貸与権に引っかからない。
・頒布権……映画の著作物が対象
著作者(映画制作者)は、著作物をその複製物により頒布する権利をもつ。ここで言う「頒布」とは、不特定、もしくは特定の多数の人に、譲渡・貸与すること。有償・無償は問わない。
著作者は、その著作物の複製物を放送したり、有線放送したり、インターネット上にアップしたり、ビデオ・DVDレンタルできる権利をもつ。
複製物を使用したい場合は、著作者の許可が必要になる。
・翻訳権・翻案権
著作者は、自分の著作物を翻訳、編曲、変形(著作物を写真で公表する、画像加工するなど)、脚色(演出等のための書き換え)、映画化する権利を持つ。
翻訳、編曲、変形、脚色、映画化したいときは、原著作者の了解が必要になる。
なお、私的使用のための複製(私的使用の範囲は下記にあります)、教科書への掲載、学校教育番組の放送、学校における複製、視聴覚障害者のための複製を場合は、原著作者の許可がなくても著作物の利用ができ、その翻訳、編曲、変形、翻案としての利用も同様に行うことができる。
・二次的著作物の利用に関する原著作者の権利
著作者は、二次的著作物(翻訳本や編曲した曲、スピンオフ作品など)の著作者と同じ権利を持つ。原作があるものを使った二次的著作物を作るには、原著作者の了解が必要になる。
他にも、「出版権」「著作隣接権」があります。
おまけ・出版権
著作者との契約により、出版社が著作物を出版する権利(出版権)を持つことができる。期間は基本は3年(契約の設定による)。
出版権を持った出版社は、著作者のかわりに
・頒布目的で著作物の複製を制作できる
・著作物を放送やネット等で発信できる
・出版権が切れた場合も著作者が死亡した場合も、著作物の全集の複製ができる
……といったことが可能になる。
なお、原稿等の出版に必要なものを受けとった場合は6ヶ月以内には出版しないといけない義務がある。義務違反がおきた場合は、著作者は、出版社の出版権を取り消すことができる。
ちなみに。著作物の海賊版が出回った場合は、出版権を持つ出版社ではなく著作者が訴えることになる。
おまけ・著作隣接権
著作隣接権は、著作物等を伝達する役割を担っている実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者が持っている権利。
実演家とは、著作物を演じる役者や歌手、ダンサーやアイドル、パフォーマー、落語家、指揮者などの表現者のこと。
実演家の表現行為にも著作権があり、その権利に基づいた報酬をもらうことができる。レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者にも各自権利がある。
著作者に許可をもらわなくても、自由に著作物を使える「例外」とは
著作者に許可をもらわなくても、自由に著作物を使えるパターンがあります。上記にも例外パターンを一部書きましたが、それ以外にも例外パターンがあります。
・私的使用のための複製
自分ひとりの場合や家族、ごく少数の仲間で楽しむ場合。仕事ではなく個人で楽しむ場合。
・付随対象著作物の利用
自分が撮った写真や動画などに、著作権があるものが「たまたま」入り込んでしまった場合。その写真や動画をネットや放送にアップする場合。
・検討の過程における利用
例えば、キャラクターやエフェクト音、テーマソングなど、企画でどの著作物を選ぶかを検討するときに使う場合。社内資料や企画書等に添付するために複製する、など。
・著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用
(著作物から思いを受けとったり、感情を感じ取るようなことを目的としない。また、自分以外の誰かの知覚に触れて、感情を揺さぶらせたり、感想を抱くようなことがないようにする。)
技術開発や実用化のための試験に使う場合、情報解析のために使う場合。AIの学習のために情報を使う場合、など。
・図書館における複製
図書館は営利を目的としない事業として、図書館資料の保存など、場合においては複製・蔵書の電子化・インターネットの送信ができる。
・引用・転載
引用や転載する場合。
ただし、
・引用や転載する理由が明確
・利用する箇所が適当・適切・適量・正当
・引用元や転載元がちゃんと書かれていること
であること。
・教育への利用
教科書や学校教育番組などで使用する場合。ただし、著作者への通知や補償金の支払いなどが必要。
この教育は学校等の教育活動を表すもので、営利目的の会社やカルチャーセンター等の外部の教育や講座は含まれていない。
・試験問題としての複製等
入学試験や採用試験などの問題として複製したり、ネット等で配信する場合。ただし、営利目的での使用は、著作者へ補償金の支払いなどが必要。
(著作者の利益を不当に害することとなる場合は、許可されません)
・視覚や聴覚が不自由な人への複製等
公表された著作物を点字によって複製したり、放送された内容の音声を文字化して複製する場合など。
・営利を目的としない上演・演奏・上映・口述等
お客さんからお金をとらず、出演者等にも報酬を払わず、非営利目的で行った上演・演奏・上映・口述等を行った場合。
(ちなみに、Youtubeでよくみる「弾いてみた」「歌ってみた」は、Youtube側がJASRACやNexToneに著作権料を払っているから、JASRAC・NexToneのものは大丈夫だそうです。へぇ〜)
・時事問題に関する論説の転載等
新聞、雑誌に掲載された時事問題に関する論説。ただし、転載・引用禁止のものは使えない。
・政治上の演説等の利用
公開の場で行われた政治上の演説や陳述、裁判での公開の陳述。同一の著作者のものを編集して利用する場合は除く。
・時事の事件の報道のための利用
時事の事件を構成した著作物や、事件の過程で見聞きされた著作物。ただし、報道の目的上、正当な範囲内で使う。(事実を捻じ曲げるとかはダメ)
・司法、立法、行政の内部資料としての複製
裁判の手続き、立法、行政上の資料として必要なときや、知的財産権や薬事に関する審査等の手続きのために、複製する場合。
・情報公開法等による開示のための利用や公文書管理法等による保存等のための利用、国立国会図書館法によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製
必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができる。
(行政機関の長など特定の人物におけるものなので、こちらには関係なし。)
・放送などのための一時的固定
放送、有線放送、放送同時配信等を行うために、著作物を一時的に録音・録画することができる。ただし、録音・録画したものは、政令で定める公的な記録保存所で保存する場合を除き、6ヶ月以上保存することはできない。
(放送事業者等に関係するものなので、これもこちらには関係なし)
・公開の美術の著作物などの利用
屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物や建築の著作物は、真撮影等で複製したり、ネット等で拡散したりすることができる。
ただし、販売目的の複製や譲渡はできない。
・美術または写真の著作物等の展示に伴う解説や紹介のための利用
美術展や写真展などの展覧会の開催者は、観覧者への解説や紹介の目的で小冊子などに展示した著作物を掲載したり、電子機器を用いた上映を行ったり、ネットなどで拡散したりできる。
・美術の著作物などのオークションに伴う複製等
インターネットオークションや通信販売等で美術や写真の著作物を出品する際、紹介のためにその画像を複製してネット等に公開する。
・プログラムの所有者による複製など
プログラムの著作物の所有者は、バックアップやプログラムの修正など、プログラムを実行するために必要と認められる限度において、当該プログラムを複製することができる。
・電子計算機における著作物の利用に付随する利用など
コンピューターのキャッシュの作成、データ消失に備えたバックアップ、データの圧縮など。
・電子計算機による情報処理などに付随する軽微利用等
パソコンの検索結果を表示する場合、情報を解析した結果を表示する場合などに、著作物の軽微な利用を行うことができる。
著作権。言葉では簡単に聞こえますが、細かくみていくと結構複雑ですよね。
では、著作権と占いの仕事の関わりを次回でみていきましょう。
続きます!
引用・参考サイト
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