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【スタートアップ!占い師】#30 「占いのアピールにカードの絵柄をネットに載せちゃえ!」……って、それ許可とった? 占い師と知的財産② 知的財産の基本②

 自宅で占い師の活動をしているさくらさん。
 自分の占いのアピールとして、SNSで三択占いを行おうとしています。
 SNSで他の占い師さんたちがやっているところをみて、「自分も!」と、思ったのでしょうね。

 タロットなどの写真を載せ、「どれにしましたか?では、みてみましょう」と占いの結果を展開していく、SNSでの占い。ブログやYoutubeでもよくみかけますね。
 でも、ちょっと待ってください!
 それって、カードを描いた人やカードの出版社に黙ってやってもいいものなのでしょうか。みんながやっているから、大丈夫?ほんとうに?

 今回は、知的財産についてお話していきます。
 法律の話もめちゃくちゃ難しく、難しい文章アレルギーを起こされても困るので、 今回も帳簿や特商法などの回同様、必要最低限のところだけをピックアップして、めちゃくちゃ噛み砕いて書いていこうと思います。
 これも大事な話なので、無料です。
 (経験に基づく情報は有料記事にしております。無料記事が続いておりますが、いつも無料ではないです!ご理解くださいませ!)

※あと、今回はまだタイトル本題には触れていません。タイトル詐欺みたいな感じになってしまってすみません!ですが、大事なことを書いています。読んでいただけると嬉しいです。


知的財産権、具体的にはどんなもの?占い師の仕事と関わりがあるの?②

 知的財産権、具体的にはどんな法律なのでしょうか。これらは占いの仕事と関わりがあるのでしょうか。

 前回は太字までを書きました。

  • 特許権……登録後20年

  • 実用新案権……登録後10年

  • 意匠権……登録後25年(2020年3月31日以前の出願は登録から20年)

  • 商標権……登録後10年

  • 著作権……創作時から著者死後70年(登録の必要なし)

  • 不正競争の防止……永続。なんらかの登録の必要なし

  • 育成者権……登録後25年。樹木は30年

  • 地理的表示法……登録後、取り消されない限り存続

  • 回路配置利用権……登録後10年

  • 商号……商号を取り消すまで永続

 で、この続きをやっていきますが、著作権だけが長くなりそうな気がするので、著作権以外のことを今回はお話していきます。

 なお、ここで挙げるものは、現在の法律等各サイトを調べて書いている内容です。確実性を求めるのであれば、弁護士さんや弁理士さんに直接ご相談いただければと思います。

不正競争の防止……不正競争とは

 不正競争を防ぐために、不正競争防止法というものが制定されています。
 これは「ズルや悪さをしないで、正しく商売や取引をして、同業者同士で切磋琢磨しましょうね」という目的で決めた法律なのです。

第一条 この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

不正競争防止法 第一条より

 不正競争とは、簡単にいいますと、以下のようなことになります。

・世の中に広く知られている商品・表示・商標・名前と同じ表示をした別の商品・表示・商標・名前等、もしくは激似な表示をした別の商品・表示・商標・名前等を直接相手に売ったり譲ったりする。売買や譲渡のために、仕入れたり、相手に引き渡したり、輸入・輸出したり、展示したり、直接ネット等のメディアで告知したりする。(第二条1号)

・世の中に広く知られている商品等と同じ表示をした商品・表示・商標・名前等、もしくは激似な表示をした商品・表示・商標・名前等を「自分の商品」や「自分の商品の表示」「自分の名前(商号)」「自分の商標」として使用する。直接相手に売ったり譲ったりするだけじゃなく、輸入・輸出したり、展示したり、直接ネット等のメディアで告知したりする。(第二条2号)

・他人が作った商品のコピーを、直接相手に売る、譲る、レンタルする。そのための展示や、輸入・輸出もする(第二条3号)

・マニュアルやノウハウ、顧客情報などの会社の営業情報や技術情報(データも含む)を、不正(ウソをついてだまし取る、勝手に持っていく、強要して奪い取る)に入手して、勝手に自分で使ったり、第三者に明け渡す。勝手に情報や秘密を公開する。
業務委託等、就業でもらった社外秘の営業情報や技術情報を、情報元の会社の損害を与える目的(売上が下がる、会社の評価が下がるなど)や不正な利益(情報をあたかも自分の力で手に入れたものにして、利用して売上をあげる……など)のために使う。
会社と関わりのない部外者が、本来社外秘だった営業情報や技術情報を誰かから受け取り、自分の私利私欲のため、情報元の会社の損害を与える目的や不正な利益のために使う。
会社が業務委託等で明け渡した、社外秘の営業情報や技術情報のうち、仕事上公に使用・開示を許していない情報を、会社と関わりのない部外者(その情報でどうにかしたいとは思っていない)が受け取り情報を使用・開示する。これは、部外者が情報を受けとった経緯が不正かどうかは関係なし。(第二条4〜10号)

・企業間でも共有できる、新しい事業の創出やサービスや製品の付加価値を高めるのに有効なデータ(以下「データ」)を、アクセス権のない人が不正に入手・使用・開示する。業務委託などのアクセス権のある人がデータを横領したり、会社を騙し(背任し)て、データを使用・開示する。
データに関わりのない部外者が、データを誰かから受け取り、自分の私利私欲のため、誰かに損害を与える目的や不正な利益のために使う。
どこかの会社が業務委託等で明け渡したデータのうち、仕事上公に使用・開示を許していないデータを、会社と関わりのない部外者(その情報でどうにかしたいとは思っていない)が受け取りデータを使用・開示する。これは、部外者が情報を受けとった経緯が不正かどうかは関係なし。(第二条11〜16号)

・何らかの技術・システムなどで制限されているコンテンツの視聴や記録、プログラムの実行、情報の処理を可能にし、制限を無効化する装置やプログラム、指令符号、役務を提供する。その装置やプログラムなどを仕入れたり、相手に引き渡したり、輸入・輸出したり、展示したり、直接ネット等のメディアで告知したりする。(第二条17、18号)

・自分の利益をあげたり他者の損害を与える目的で、世の中に広く知られている商品や名称、商標登録されているもの、それと同等な商号などと同じ名前、もしくは激似な名前のドメイン名をつけて使用する。そのドメイン名を保持したり、ドメイン名をつける権利を取得する。(第二条19号)

・商品や名前、広告などに、原産地や質・品質、内容を相手に誤認させるような表示をする。その表示がついたものを売買・譲渡する(ただし、ただのネーミングなら適用外)。(第二条20号)

・競争相手の信用を落とすようなウソを告知する、情報を流す。相手が「もしかしたら、自分のことかも」と、なんとなくわかる内容も含む。(第二条21号)

・パリ条約の同盟国などにおいて、商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なしにその商標を使用などする。(第二条22号)

 不正競争の定義をみてみると、特許や商標などの知的財産が絡んでいるのがわかります。

不正競争の防止……占いの仕事との関わり

 この法律も占いの仕事と関わりがありますが、いかんせん項目が多いので、「このようなことをするとこの法律に触れるよ」というのを挙げていきます。
 あくまで日本での活動ということで、外国での活動で抵触する内容は書いておりません。

・許可なく、著名な方のオリジナルの占いを名乗る。
(「タロット占い」は侵害にならないが、著名人が行う「六星占術」「五星三心占い」といった占いはその人そのものを表すこともあるので、アウト)

・許可もなく、メソッドを知らないのに、著名な方のオリジナルの占いをそれっぽく行う。

・著名な方の名前を勝手に名乗る。

・自分の占い館やサロン・事務所に、著名な名前や有名な商標をつける。

・許可なく、人気の占いのお店の名前と同じ鑑定メニュー名をつけ、同じ鑑定の流れで占いを行う。

・占いカードや占い本のコピー本を作る・売る・譲る・輸入する・輸出する、ネットで告知する

・占いカードや占い本に則って、似たような作品(まるっとコピーはしていないが、レイアウトも文章の書き方も構成も内容もイラストも激似のもの)を制作して、売る・譲る・輸入する・輸出する・ネットで告知する

・手元にある占いカードや占い本が、コピー品や類似品とわかった上で、フリマアプリで売る

・占い館やサロン・事務所・電話占い会社や占いサイト等で働いていた占い師が、独立するために、自分のお客さんの顧客情報を勝手に持ち出す(原本もダメ出し、コピーもダメ)。
持ち出した顧客情報を使用する。
(お客さんに独立することを伝えたり、独立後に勝手にお客さんがついてきたなら、法には触れません。お客さんが流れないように「独立することを伝えるのはNG」など、店内ルールがある館やサロン等もありますが、法的には一応大丈夫。)

・自分の売上を伸ばすために、ライバルの占い師からお客さんの顧客情報を盗む。盗んだ顧客情報を使用する。

・占いライティングや監修等、企業との仕事でいただいた資料やデータ等を勝手に外に漏らす。自分の占いに、公に資料やデータ等を利用する。知り合いの占い師に「勉強になるから」と資料やデータ等渡す。

・有料占い鑑定ソフトや有料デザインツール、有料イラスト素材などをタダで使えるようにするためのソフトやプログラムを開発する。それを仲間と共有する。

・「相手が気に食わない」「相手の占いのやり方が気に食わない」「自分の流派以外の流派は許せない」からといって、相手の評価を落とすようなウソを流す。ネットでウソのレビューを書く。

・たくさんの人にみてもらうために、人気の占い師や占い館・サロン・事務所の名前を使ったドメイン名をつける

※他の占い師と同じ占いを扱うことは、「同じ業種の同じジャンルを扱う」ということであり、これは上記の「世の中に広く知られている商品・表示・商標・名前」には当てはまりません。
つまり「私のほうが先にタロット占いをはじめたのに、あの人も同じタロット占いをしている!侵害だ!」とはなりません。

 ここで特に注意しておかなければいけないのは、
・占いカードや占い本のコピー本を作る・売る・譲る・輸入する・輸出する・ネットで告知する
・占いカードや占い本に則って、似たような作品(まるっとコピーはしていないが、レイアウトも文章の書き方も構成も内容もイラストも激似のもの)を制作して、売る・譲る・輸入する・輸出する・ネットで告知する
・手元にある占いカードや占い本が、コピー品や類似品とわかった上で、フリマアプリで売る

 こちらです。
 「占いカードの海賊版に注意!」とカード卸会社が訴えているのを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
 占いカードの海賊版は、著作権だけではなく、この不正競争防止法にも抵触します。プロですら掴まされるくらい、巧妙にできているものもありますので、相手の不正に加担しないためにも絶対に正規ルートでカードを買うようにしてください。
(っていうか、これはもうプロになった方ならみんなわかっていることだと思っていますが)

 相手の行動を受けて「これ、不正競争だな」と思ったら、差し止め請求や損害賠償の請求、信頼回復措置などを行うことができます。その場合は弁護士に相談しましょうね。

おまけ・不正競争防止法

 ちなみに、不正競争防止法は、以下のことも禁止しております。

・許可なしに、外国の国旗や国際機関の商標を、会社等を商標として利用する。
 許可なしに、外国の国旗や国際機関の商標と類似した商標を使った商品等を、相手に売ったり譲ったりする。売買や譲渡のために、仕入れたり、相手に引き渡したり、輸入・輸出したり、展示したり、直接ネット等のメディアで告知したりする。
 外国の国旗を原産国を誤認させるような方法で使用する。
 国際機関の商標を、それと関係があるように見せかけた使い方をする。

・外国公務員などに対し、国際的な商取引に対して賄賂等不正を行う。

 しかしこれらは、占いの仕事とほとんど関わりはないでしょう。

育成者権、地理的表示法、回路配置利用権

 育成者権は、植物の品種に関わる法律です。
 地理的表示法は、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律です。
 どちらも、農業に関わるもので、占いに関係はありません。
 回路配置利用権は、半導体集積回路の回路配置に関する法律です。
 こちらも、占いの活動には関係がありません。

商号

 商号は、占いの仕事に大きく関わっています。

 商号は、会社や事業者が事業を行うのに使う名前のことです。
 合同会社や有限会社、株式会社などの会社の名前は「会社名」、個人事業主の会社の名前は「屋号」になります。
 占い師の場合は、「占い館○○」「占い▲▲」といった名前が屋号になりますが、自分の占い師名を屋号にする人もいます。
 個人事業主が法人成り(会社化)する場合は、名前は「屋号」から「会社名」となりますが、この会社名は必ず登記(法人として認めてもらうのに、法務局に登録すること)しなければいけません。
 
 商法に、商号について書かれています。

 占い師の仕事を始める際に、自分の占い師名や館・事務所名をつける人にとって、気をつけなければいけない内容です。

第十二条 何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。

商法 第4章より

 商号をつける際に、不正目的で、他の占い師や占い館と間違われるような名前をつけてはいけません。有名占い師と同姓同名の商号をつけ、お客さんを騙して占う……といったことはやってはいけません。
 名前が被ってしまうのは仕方がないでしょう(実際、占い師や占い館・サロンに似たような名前は多いです)。わざとやるのが、ダメなのです。
 また、「他の商人」とあるので、占い業以外の職業と思わせる商号をつけてはいけません。例えば、占い師の業務のみなのに「カフェ」や「神社」という商号をつけてはいけないのです。

第七条 会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

会社法 第2章より

 会社法では、個人事業主として活動している占い師は、屋号に「会社」とつけてはいけないことにもなっています。

 さらに言うと、商号を使ったロゴを作成・使用する際は、どこかの会社や事務所、館と類似したものを使ってはいけません。これは、上記の「不正競争防止法」にある通りです。商標登録されているものと類似してしまった場合は、向こうが「商標権」を持っているので、これも取り下げてロゴを作り直す必要があります。
 ロゴを作成したい人は、既存のデザインと被らないように、商標登録サイトや他の占い師のサイト等を調べないといけませんね。

 次回は本丸・著作権。
 続きます!

引用サイト

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