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看護師無理だ!と思った話②

今回は、学生時代のお話。初めての実習

さて、受かってしまった私だが、看護師のことは嫌いになったわけではなかった。仮にもずっと、将来の夢の欄に書き続けた仕事の第一歩だ。

突然だが、私は人と話すことがあまり得意ではない。

だが、周りからはあまりそうは思われていなかったらしい。不思議。

苦手だからこそ、丁寧に。笑顔はおかしくないだろうか?声のトーンは?

この人は何を言ってほしいだろうか?考える、考える…

きっと、この思考のおかげだろう。無事に初日から友人をつくることに成功した。その時の一人とは、きっとこの先ずっと友人なのだろうなと思うほどである。まぁ、その友人、仮に友人Aとしよう。Aちゃんはのちに大学を中退することになるのだが…

大学の話は、どこからしようか。きっと、楽しかったこともあるが、ここは看護師が嫌になった話なのでつながることを書いておく。

最初のひっかかりは初めての実習だっただろうか。

校内の演習を経て、ナース服(仮)を初めて学外で着る機会だ。期間は1週間程度だっただろうか。とても短いがとても長い。

よく、ナースは学生に厳しいという。実際、挨拶をしても返してくれなかったり、話しかけないでオーラを全身にまとったような方もいた。ただ、大半の看護師さんは優しい。というか、命を扱う現場に教師同伴であれ、うろうろ邪魔をする集団は今思うとちょっと怖いな…そういう意味で、ぴりつくんだろうか。実際、教えてくれる看護師さんも通常業務がある。的確に指摘してくれる看護師さんは、たとえ話し方や伝え方が多少きつくてもありがたい存在である。そして、ありがたいことに私は指導してくれる立場の人に恵まれる。だから、そんな人間関係の厳しさで看護師が嫌になったわけではない。

無力感

私は最初の実習で感じてしまったのだ。何もできなかった。

病気で会話がうまくできなくなってしまい、体も半身麻痺がある患者さんが、私が人生で初めてナース服(仮)を着てケアをさせてもらった患者さんだ。とにかく複雑だったのはその方の人間関係。内縁の妻ってなに?

看護学生は関連図というものを書かなければいけない。

これが慣れないうちはなかなかに難しい。私は内縁の妻の意味を調べるところからのスタートだった。もうすでに、人の人生の複雑さと世間知らずの自分に嫌気がさしていた。

患者さんは、ほぼ寝たきり状態の方で毎日窓の外を眺めて、苦しそうな声を時々上げていた。体位変換やおむつの交換など看護師さんや同行してくれていた教師とともに行った。私はその人の苦しそうな姿しか覚えていない。それでもベッドサイドにはよく立った。面会に来る方が少なかったし、なんとなくそばにいたかった。それしかできなかったから。

あっという間に一週間は過ぎた。

何もできない自分に泣き続けた一週間は長かった。

きっと、看護学生さんなら実習の辛さとか、どの看護師さんが優しいとか、実習後仲間内で話したりすると思う。それが、看護師になってもうまく看護師ができる人たちだと思う。私は、一人で泣いた。何もできない人間だと周りに思われるのが怖かったし、恥ずかしかったし、何より誰にどう話していいかわからなかった。このもやもやが、今後より大きなもやもやを育てていくことをこの時の私は知らなかった。

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