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お正月の設え

 ごく普通の庶民の中に生まれ育った私には、守らなければならないしきたりや行事なんて何ひとつないが、暮の大掃除や障子貼りではじまる迎春の一連の生活文化、特に、母の手づくりの『おせち料理』など、懐かしく愛しい思い出となっている。

お福茶(元旦の朝一番にいただくお茶)

  七輪の上に乗るアルマイトの大鍋の煮しめの匂い、豆を煮る匂いであったり、昆布巻きを煮る匂い、棒鱈を煮る匂いなどなど・・・それらは、子供心には決して良い匂いとは思えず、むしろ、ちょっと迷惑な匂いだった。

 結婚し、自分なりのおせち料理を作ろうと、花嫁修行に通っていた〈土井勝料理教室〉の本や〈家庭画報〉を引っ張り出し、首っ引きで献立作りを始めた。はじめは、斬新なおせち料理に憧れたものだった。が、歳を重ねるごと次第に極々オーソドックなおせち料理となり、できるだけ手づくりしたいとか、材料を余すことなく使い切りたいという想いが深くなり、昨今の目標は七輪で炊く母の豆や棒鱈のおせち料理となった。

 還暦を機に私流のお正月の迎え方を忘備録として書き記します。

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