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今朝の気付き

「いって〜き、まっすッ!」

 幾つだろうか?
マンションの玄関吹き抜けから、元気の良い女の子の声が響き渡る。

 昭和54年に竣工し、入居した頃はウチの子供たちを含め、各階、たくさんの子供たちで溢れていたが、その子達も大きくなり独立し、すっかり老人ばかりになったマンションに、久々響く、新鮮な声だった。

 私の住むマンションは、都市に自分たちの手で住まいを創るコーポラティブマンション。いわば縦割り長屋のマンションなのである。自分たちの手で土地を探し、住人を集め、陣取り合戦で部屋を割り当て、建築業者を決める。
 
 もちろん、素人で全てできるわけもなく、そこには建築家集団が強力にバックアップしていた。

 思い返せば入居当時、20人余りいた子供たちの親睦を図り、お母さん中心に「ぐりとぐら」の紙人形劇をお披露目したり、お正月の互礼会、七夕の笹作り、屋上での夜店ビアパーティー、クリスマスツリー飾りなど、子供たちを集め楽しませてやろうといろいろと画策したものだった。

 子供たちの成長と私たちの歳の上昇とともに、その企画も一つ消え、二つ消え・・・そのうちすっかりそういう事もなくなり、主人など、自主管理の総会でさえ委任状を出して出席しなくなってしまった。

 いつだったかすっかり忘れたけれど、これから先のビジョンを語る中で、
「老人ばかりになることが予想されるので、次は介護付きの住宅を目指す?」
などと言った時、

「あかんよ!そんな考え方は!若い子たちが入ってきて子供たちの声が聞こえなければ活性化しないから!」
と、一喝されたことがあった。

 その時、私はとても驚いたのだけれど、今、幼い子供の声がマンションに響き渡り、たったその一声で頬が緩む今朝を経験して、『なるほど!』と、今更ながらにあの時の助言を思い出している。

 いろんなゼネレーションが交じり合ってこそ人は人と為す。
 今朝の気づきである。


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