ねぇ、まま。
子どものころの、母にあまえられなかった記憶。
大人になって ふと、置き去りにしてきた 本心に気づく。
あまえたかった。きいてほしかった。
笑顔をふりむけてほしかった。
わたしに。
笹飾りのらくがきをする。
笹の葉。願いを書いた短冊。それを見る私。手をつないで、一緒に見上げているのは、幼い日のむすこ。でも、ちがった。男の子はむすこじゃなく、弟に似ている。私は、〈「おかあさん」と呼んで、そっと手をとりたかった私〉を、でも、〈ホントは 離れてみていた私〉を その絵に書き足した。
わたしは大人になったから。
きっと、まだ おさないままの
いつまでも待っている 私の心を
迎えにいけるだろう。
ねぇ、まま?
行こうよ、
もう 帰ろう?
ほかの子なんて、いいじゃない。
ねぇ、ママ、あなたは
わたしに会えて
嬉しい?