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「カプコンがMODをチート扱いしている」という言葉が独り歩きしてしまった件について―タイトルだけで拡散される哀しみ

メディアとは罪深い。記事のタイトルだけで印象を操作することができ、場合によってはおろかな人間を煽りたててしまうことすらある。

本稿では、上記の記事について、いちゲームライターである私の思ったことを記しておきたい。

例の記事は、カプコンが技術者向けに公開したチート・海賊版対策の動画の一部を切り抜いて発信したものである。この動画の本筋は、カプコンがチート・海賊版対策を内製化し、外部ソフトと組み合わせて使うことでより強固なプロテクトを築くことができる、という話しだ。

何故かGIGAZINEの記事では英語版がソースとなっているが、こちらは日本語版があるので興味がある人は視聴してみると良い。

記事タイトルによる印象操作

確かに、この動画のなかでは「MODが行っていることはゲームデータの書き換えであり、チートとその仕組みは変わらない」とされている。GIGAZINEはここを切り取って記事のタイトルにしたのだ。

記事タイトルの「カプコンが「PCゲームへの非公式MODの導入はチートと変わらない」との見解を示す」だけを読むと、カプコンがMODに否定的な見解を示しているように読み取ることになるだろう。

ただここで重要なのは、「大多数のMODはゲームに良い影響を与えるが」と前置きしたうえで、この発言がされていることだ。

恐らくカプコンとしても(もちろん服を脱がせるMODなんかは作ってほしくないだろうが)、ニコラス・ケイジやきかんしゃトーマスが出てくるMODを公には認めないものの、そこまで悪質だとは考えていないのではないだろうか。

例えば、『モンスターハンター』では狩猟対象のモンスターアイコン横に弱点属性を表示させるものや、パフォーマンスの最適化MODなど、やっていることはチートとは変わらなくとも、それら全てを悪質なMODとは判断しないはずだ。

というかそもそもこのMODのお話しは、チート・海賊版対策の必要性を説明する一例であるため、公開されている動画の本質ではない。

タイトルだけで拡散される哀しみ

筆者としては、この「カプコンが「PCゲームへの非公式MODの導入はチートと変わらない」との見解を示す」という言葉がタイムラインで独り歩きしている状態を見て非常に悲しくなった。

偶然にも、同様の動画をソースに記事を書いていたからだ。

これがその記事だが、GIGAZINEの記事タイトルとはほど遠い。MODの話はこの動画の本質ではないのだから当たり前ではある。

私の記事とGIGAZINEの記事は、同じ内容の動画を扱っているにも関わらず、アクセス数は(メディアの規模の差を鑑みたとて)GIGAZINEの方が圧倒的に多いだろう。いや、圧倒的に“GIGAZINEの記事タイトルのほうが読まれる”んだろう。

きっと私の記事も、GIGAZINEのようなタイトルにすればもっとアクセス数を稼げたはずだ。

その現実がとても悲しいのだ。

しかしそれは仕方のない話でもある。Webメディアはクリックされてなんぼだ。どれだけ大義や意義のある記事を書いても、センセーショナルな記事タイトルのスキャンダルには勝てない。世間がそもそも求めていない。

結局のところ、記事を読む人たちが賢くならなければ、賢い記事を書いたところで仕方がない。

“文集砲”がなぜ炸裂するか、大衆がそれを求めているからだ。昨今のSNSには筆者にとって見たくも知りたくもない情報がひしめいているが、恐らく一般の大衆らはそれを摂取して、誰かを悪者にし、叩き、せいせいし、自分の人生から目をそらしている。

それでいいんだろうか。

私を含め、人間というのは自身の人生を他者にアウトソースすることでしか自身を保つことのできない生き物である。

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