『〈高校生〉クイズ論』

「全国高等学校クイズ選手権(高校生クイズ)」の話をしましょう。「クイズをやらなかった企画」の話です。

「クイズをやれ」という批判(?)

 昨今の「高校生クイズ」には、ネット上でしばしば「クイズをやれ」という批判(?)が寄せられますね。(個人的に、)これは「知の甲子園」を主に見てきた層がよく発言しているイメージがあります。5年に渡り「超難問しか出ない番組」を見てきたら、「『高校生クイズ』はこういう番組」と思いこんでも仕方がないと思います。2008年~2012年に放送され、その当時小学生~中学生くらいだった人がネットに触れて、今の番組に物申すように……という流れが目に見えます。
 しかし、2013年以降(=知の甲子園が終わったあと)の「高校生クイズ」で、「クイズをやれ」という批判が通用するシーンはあまりないと考えます。「クイズ」を「答え(唯一でなくともよい)がある設問に、知識や経験、発想を活かして解答すること」と考える自分は、ここ数年の「地頭力クイズ」も十分にクイズだと考えています(身体を動かして解くクイズも、終了後には専門家とかによる『最適解』が紹介されるでしょう)。自分の好きな「謎解き」だってクイズです。もちろん「知の甲子園」で出た問題もクイズです。

クイズをやらない企画?

 よく「『高校生クイズ』でクイズをやらなかった企画」として、「Welcome Qッキングクイズ(1993年・第13回)」が挙げられます。しかしこれもまた、「クイズをやっている企画」だと考えています。
「Welcome Qッキングクイズ」は、全国大会1回戦の49チームが5品の料理に挑戦、シェフから5点満点を貰えれば2回戦進出……という企画です。確かにこれを「料理知識を試す"クイズ"だ」と言い張るのは厳しいですね。食に答えがあるのかもわかりませんし。しかしこれ、料理だけで勝ち抜けたのは10チーム、そのあと残り全チームは「料理の点に加算する形の5ポイント先取○×クイズ(YES-NOクイズ)」を行い、30チームが勝ち抜けているのです。つまり、(料理の出来がアドバンテージにはなるが、)多くのチームはクイズで勝ち抜けているわけです。49→10+30。これを「クイズをやっていない」とするのは難しそうです。

「高校生クイズ」の全国大会(地方大会にも着目すると膨大になるので今回は省略)で、「"一切"クイズをやっていない企画」は多くありません。では、「真に『クイズをやれ』と突っ込める企画」、つまり「クイズをやらなかった/クイズで決めなかったラウンド」はどれくらいあるのでしょうか。

クイズをやらない企画

 たとえば「3人バラバラ東京迷子クイズ(1987年・第7回)」はそのひとつです。当時出版された公式本があるので、見ながら。

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 49チームのメンバー3人が「知力」「体力」「運」に分かれ、それぞれの試練を突破したら集合場所へ帰還。3人揃えば勝ち抜けです。「知力」は新幹線に乗ってペーパークイズを解き、全問正解したらクリア。失敗したら問題が追加され、解いている間どんどん集合場所から遠のくという趣向です。「体力」はジムに行き、体重を500g落とさなくてはなりません。「運」は当たり付き自販機で当たりを出すと通過です。そう、「体力」と「運」の人はクイズをしていません。
 で、15チームが勝ち抜けたあと、敗者復活が行われたのですが、それも「15チームの早押しクイズの空席に、抽選で選ばれた敗者が入る」というものです。クイズは?

「ザ・越後・魚沼産 おむすび当てクイズ(2000年・第20回)」もひとつといえるでしょう。
 勝ち抜いてきた10チームは民泊をします。その家の「お宝」ひとつを持参し中島誠之助が鑑定。高価な順から「魚沼産コシヒカリを当てる『効きおにぎり(3択)』」に挑戦し、正解した先着5チームが勝ち抜けます。
 正解の米は民泊の夕食時に全員が食べたようですし(=正解を導くための知識はある)、「クイズは『答え(唯一でなくともよい)がある設問に、知識や発想、経験を活かして解答すること』」と書きましたから、効きおにぎりは「クイズ」といえるでしょう。しかしこの企画、鑑定額下位3チームは効きおにぎりに挑戦すらできず5チームが埋まって敗退となりました。つまりこの3チームはクイズをせずに負けたわけですね(鑑定をクイズとはいえないでしょう)。

では最近は

「高校生クイズ」の全国大会に「クイズをやれ/クイズで決めろ」と突っ込みたくなる企画はあったわけですが、最近はどうでしょうか。ひとつ思い当たるのは「漢字で導け!乃木坂BINGO」です。2019年の第39回大会です。
 お題を漢字1文字(チーム3人計3文字)で乃木坂46の9人に伝えるというものですが、お題が運であり、かつ難易度差がまぁまぁでかい。かつポイントの優劣は乃木坂46の面々がどれだけ正解できるかで決まる(=高校生の知力で決定するわけではない)ということで、これはクイズをやっているかといわれると、先の基準ではやっていないことになりますね(伝えるための漢字チョイスはクイズといえなくもないが、それで乃木坂46が理解できるかというフィルターが存在してしまう)。最初に「『知の甲子園』と比較する批判が多い! それは違う!」みたいに書きましたが、こればかりは突かれても仕方がない気がします。

「高校生クイズ」はクイズ番組です。しかしそのなかで行われてきた「クイズ」は、あまりに多様でした。これからもこの番組には、「こんな【クイズ】もある」という紹介をしてほしいと願っています(それが"ただしくクイズであること"が前提とも思っていますよ)。
 今年、残念ながら夏の開催はなくなりました。1984年に夏の大会が開催されて以来はじめてのことです。今年度中の第40回記念大会の開催を祈り、かつその大会が「『クイズ』という言葉の持つ意味を限界まで拡大しながら、クイズをやってくれる」よう期待しています。

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