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米国大学院進学のいろは(Part2)~出願校の選び方~

前回の米国大学院進学のいろは(PartI)の続きとして、PartIIでは、「なにを基準に志望校を選べばいいのか?」というテーマを私の体験をもとに書いていきます!

アメリカには、4000校を超える学位取得可能な大学があり、研究活動が盛んなR1大学だけでも131校にのぼります。その中から行きたい大学院を、多い人は15校、少なくても5校選ぶことになります。まさに選択のパラドックス、「選択肢がありすぎて何を選んでいいのかわからない」という状況に陥りやすいです(私もそうでした)。この記事は、そんな方に読んでほしいと思って書きました。

数ある大学院の中から、自分のやりたいこと・レベルに合った出願先を選ぶための基準を解説していきます!
私の経験から、この順番で大学を絞っていけば最終的に10~20校の出願先を決められると思います。これから⓪~④について詳しく解説していきます!

⓪曲げられない条件は何か自問する。
①修士か博士か決める。
②分野別ランニングをチェック。
③ランニングと大学の応募資格や合格者統計を見比べて、自分のレベルを判断する。
④博士の場合、奨学金制度があるプログラムに絞る。

0. 自分にとって曲げられない条件は何か?

「この大学には受かっても行けない / 行きたくない」と思っているような大学はありますか?
誰しも曲げられない条件はもっています。例えば、財政面であったり、気候であったり、街の大きさであったり。本格的に志望校を絞ってく前に、ちょっと考えてみてください。もし博士に進むなら、4~5年は住むことになります。日本人がほとんどいないような地域にいけますか?冬は-30℃になるような場所に住めますか(ノースダコタとか)?
私の場合、曲げられない条件は、何を隠そうお金で、奨学金を受けられなければ合格してもいかないと固く決めていました。受かっても行きたくないような大学を選ばないために、自分にとって曲げられない条件をクリアしていることが大学院選びの前提になります。曲げられない条件がすべての土台になるので、あえて⓪番としました。

1. 修士課程か博士課程か?

日本と違って、修士をするのか博士をするのかによってプログラムも選考プロセスもことなります。一般的に日本で「大学院に行く」=「修士課程に入学 (修士課程在籍中に博士に進むか就職するか決める)」という、以下のような流れになりますよね。

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しかし、アメリカの大学院の場合は、「大学院に進学」=「ターミナル修士」or 「博士一貫過程」という2つのオプションがあります。ターミナル修士というのは、修士課程終了後、博士に進まず就職することを前提としたプログラムです。ターミナル修士に進学したけれど、博士に進みたいという学生は、ターミナル修士修了後、博士一貫過程に再入学という形になり、学部から直接博士課程に入学するよりも、博士号を取り終えるまでに1~2年長く時間がかかってしまいます。なので、もし博士に進むことを将来的に考えているのであれば、学部卒業後、博士一貫課程に進学するオプションが、一番効率的です。また、ターミナル修士と博士では、大学から受けられる援助が大きく異なってきます。セクション4で大学院の学費について解説します。

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2.分野別ランキングをチェック

分野別ランキングというのがキーポイントです。アメリカの大学は、分野によってランキング上位の大学が大きく異なるからです。総合トップの大学、アイビーリーグやバークレーなどは、だいたいどの分野でもランキング上位にいますが、それ以降は分野によってガラリとランクインする大学がかわってきます。
例として、経済学とエンジニアリングの大学院ランキングをUS News*で検索してみました。*US Newsはアメリカの大学ランキングや大学情報などの大手サイトです。他の団体や研究者が出しているランキングもあるので、US Newsの情報だけを鵜呑みにしないように注意です(ランキングを100%信頼するなという批判もあるし)。

経済学大学院トップ10
1. ハーバード大学
2. MIT
3. プリンストン大学
4. スタンフォード大学
5. UCバークレー
6. イェール大学
7. ノースウェスタン大学
8. シカゴ大学
9. コロンビア大学
10. ペンシルベニア大学

エンジニアリング大学院トップ10
1. MIT
2. スタンフォード大学
3. UCバークレー
4. カルテック(California Institute of Technology)
5. カーネギーメロン大学
6. パーデュー大学
7. ミシガン大学
8. ジョージア工科大
9. イリノイ大学アーバナシャンペーン
10. テキサスA&M

このように、3位以降はバラバラですね。さらに、文系/理系内でもランキングに違いがあります。日本ではほぼ全く知られていないような大学が実は分野別ランキングのトップ10だったとかよくあります。

ここで、ランニングの上から10~20校に応募したらいいんじゃないと思った人(過去の私:はーい!)に聞いてほしいのですが、私はランキングの有用性とは「自分のレベル(立ち位置)を判定する」ということにあると思います。

3.ランキングを使って自分の立ち位置を判定する

どういうことかというと、自分の持ってるカード(GRE・TOEFL・GPA・必修科目・研究実績など)をランキング上位の大学が掲載している合格者平均数値(主にGRE・GPA)と比べることで、自分が約何位の大学の合格ラインに達しているのか知ることができます。
例えば、私の持ち札はこんな感じでした。

分野:応用経済学
GRE:154(verbal) 164(quant) 3.5(writing)
TOEFL: 108
prerequisite*:線形代数学、実解析、統計学、多変数微積、微分方程式
研究実績:ほぼなし
GPA:3.8/4.0
強み:アメリカ学部卒(無名大学だけど)・数学マイナー
*prerequisiteとは、大学院に入学する前に取っておかなければならない必修科目。経済学は数学の必修科目が多い。

しかし、これだけでは、自分が一体どのレベル(ランク)の大学院に受かり、あるいはどのレベルで落ちるのかがわかりません。高望みしすぎて全滅したくないし、かといって全部合格してしまったらもう少し上のランクに行けたんじゃないかと後悔してしまいます。

なので、私は1~10位で興味がある大学を2~3校を適当に選び、それらの大学が公表している合格者統計(prerequisiteや合格者の平均GRE・GPA・TOEFLなど)と自分の持ち札を比べ、コンペティティブネスを測りました。同じことを10位台、20位台、30位台と繰り返し、どこのランクの大学を本命にしたらいいのか探りました。例えば、経済学大学院US Newsランキング29位のUCデイビス(Agricultural and Resource Economics, Ph.D.)の最低GREが161(Q)・157(V)なのに対して、59位のバージニア工科大(Economics, Ph.D.)の最低GREは156(Q)・153(V)です。16位のコーネルはTOEFL各セクション26点をボーダーラインにしていますが、30位以下の大学はTOEFL総合80点くらいが最低ラインです。さらに、prerequisteも大学のレベルにより異なり、UWマディソンやコーネルは実解析もprerequisteとしてリストしていますが、ランキング下位の大学は線形代数学まででよしとしています。

私はこのようにして、各ランクの大学の応募資格や合格者統計を自分の持ち札と比べた結果、本命を20位~40位内の大学(オハイオ州立、メリーランド大学、UCデイビス、エモリ―、ミシガン州立など)に絞り、滑り止めとして40~60位内の大学(ジョージア大、オレゴン州立、バージニア工科大など)に出願することを決めました。

(補足)もちろんGREは選考の一部に過ぎませんが、足きりに使われることが多い(らしい)ので、出願先のせめて最低GRE、できたら合格者平均より上回っているスコアを確保しておいたらひとまず安心です。また、GREのどのセクションが重視されるかは分野によって異なります。おそらく理系全般や、経済学のように数学の比重が大きい学問はQuantitativeを重視し、VerbalやWritingは二の次です。しかも、英語が母国語じゃない人にとってはVerbalはすごく難しいので、留学生はVerbalで高得点は取れなくても大丈夫だと思います。

このようにランキングベースで決めた出願先ですが、私の「ここは落ちるだろう / 受かるだろう」という予測は、なんと、だいたい当たりました!受験した12校の中で、①落ちるだろうけどもし受かったら最高(3校)、②本命(5校)、③滑り止め(4校)という3つのグループに出願し(かっこ内は出願校数)、グループ①は全滅、グループ②は2校受かり、グループ③は3校受かり、③のあと一つはまだ返事待ち中という結果に落ち着きました。

4.結局「お金」が決め手?

結婚相手選びも、就職先選びも、アメリカ大学院選びも、「結局お金が決め手」です。特にアメリカの大学は学費が高い!学費は学位や分野などによりますが、年間で公立で200万~350万、私立で350万~500万です。それにプラス生活費もかかってきます。地域によりますが、アメリカは生活費も日本より高く、都心部では日本の大学生が暮らしているような下宿用1Kアパート(Studio apartmentといいます)で家賃10万以上とかザラです。奨学金無しでアメリカの大学院に進学しようとなれば、年500~600万はの予算は必要になりますね。

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「そんな大金持ってないけどアメリカの大学院で勉強したい!」という方に朗報です。アメリカでは、博士課程の学生の多くはTA(Teaching Assistant)やRA(Research Assistant)として働くことで、授業料免除や生活費補助などのサポートが受けられます。
しかし、残念ながら、修士課程では援助は基本見込まれません。博士号を取れるような大学は学部生も何万と在学していて、研究で忙しい教授の代わりに、大学院生が学部生の初級クラスを教えていることが多いです。この学生講師として働くポジションがTAと呼ばれています。RAは、教授の研究を手伝うポジションです。生活費補助はStipendと呼ばれており、大学によりますが平均20万~30万で、アメリカでぎりぎり生きていけるレベルです。これも大学によりますが、博士課程合格者全員がそのような援助を受けられるわけではなく、またどれだけ免除・お金がもらえるかは個人差があります。つまり、合格しても、お金はもらえないという状況も発生するわけです(私も本命のミシガン州立に援助無しで受かりましたが、600万の貯金がある訳もなく、断腸の思いで断りました)。

ほとんどすべての大学院は、どれだけの合格者にどれだけの援助を申し出ているのかという情報をウェブサイトに記載しているので、どのような言葉で援助について書かれてあるのか要チェックです。私の経験から、ランニング上位だったり、お金がある私立大学は「すべての生徒は授業料免除と生活費補助を受けられる」と期待できる文句を書いてありますが、あやしいのは、曖昧に「ほとんどの生徒~」や「多くの生徒~」と書いてある大学です。例えば、援助をくれなかったミシガン州立(Agricultural, Food, and Resource Economics, Ph.D.)は、"the number of available assistantships is limited and not all students admitted to the program can be offered an assistantship"(「アシスタントシップのポジションは限られており、合格者全員が援助を受けられるわけではない」)と書いてあります。100%あやしいと思っていたら、やはり財布のひもはかたかったようです。反対に、UCバークレー(Agricultural, Food, and Resource Economics, Ph.D.)は、"It is the policy of our department to ensure that all of our students are fully funded for at least five years"(「全学生が最低5年間の援助を受けられる」)と太っ腹なことを言っています。

合格しても援助がないと進学しないという方は、大学の財政援助のページをよく読んで、曖昧な言葉を使っている大学は避けたほうがいいと思います。なるべく「すべての/ほとんどの生徒は援助を受けられる」とクリアな言葉で書いてある大学に絞ることをおすすめします!

長くなりましたが、以上が私がおすすめする大学選びの基準です!これからアメリカの大学院へ応募される方、全力で応援しています!少しでも参考になれば幸いです:)



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