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残暑を逃れて、ソロ軽井沢

久しぶりに軽井沢へ行った。

10代の終わりから30歳ぐらいまでは、夏も冬もなくしょっちゅう行っていた。
というのも、私が大学生の頃、両親が軽井沢に別荘(といっても一軒家ではなく、いわゆるリゾートマンション的なもの)を買ったのである。父親の転勤にあわせて古い家や狭い家を移り住んできた私たちは、当時新築だったマンションの綺麗さと設備のすばらしさ、そして何より軽井沢という土地の魅力にすっかり惚れ込んでしまった。
大学4年生の夏休みには、この別荘を拠点にまるまる1ヶ月半リゾートバイトに明け暮れたし、社会人になってからも友人や同僚を連れてたびたび訪れていた。

しかし10年ほど前、大阪に移り住むと状況が一変する。
大阪、軽井沢からとにかく遠いのだ。車だとまた違うのかもしれないが、新幹線だと東京をいったん経由しなくてはならない。
大阪を愛してやまない私が大阪の欠点を挙げろと言われたら、
・歩きタバコが多い(最近は減りましたねさすがに)
・電車で降りる人よりも前に乗ってくる人が多い(これは未だに腹立つ)
・軽井沢が遠い
の3つである。
家族から誘われても「軽井沢に行く時間とお金で海外行けるな…」などと思ってしまい、結局大阪にいた7年間は一度も軽井沢を訪れなかった。

いまいる町への転勤が決まり、母にLINEで知らせたとき、忘れもしない第一声(第一返信?)は
「軽井沢に行きやすくなるね!」
だった。どないやねん。

とはいえ東京から行くほどは近くもないので、転勤したばかりの2年前に東京の友人と一度行って、それきりになっていた。
あまりにもあまりにも暑かったこの夏、帰省した東京でヒイヒイ言っていたら、母が「たまには軽井沢行きなさい!あとから渡すの面倒だから、あんた持っときなさい!はい!」となぜか私の手に別荘の鍵をねじ込んできた。
それほど言うならまあ、暑いうちに軽井沢の涼しさを感じに行こうかね…と重い腰を上げたのがこの週末である(前置きが長い)。

もとより観光目的ではなかったのでレンタカーを借りるでもなく、循環バスと徒歩で軽井沢と別荘を往復して、いくつか好きな場所へ行くだけののんびりステイ。
でも、久々にクーラーをつけず、窓を開け放して木々の匂いを嗅ぎ、虫の声を聴きながら眠る夜は何にも代えがたかった。
もちろん友人とわいわい飲み明かすのも良いけど、軽井沢の涼しく静かな夜はひとりで過ごすのがいちばん贅沢で、至福だと思う。私には経験がないが、ソロキャンプをする人ってこういう気持ちなのかもしれない。

今回は旅というほどでもないのだけれど、備忘録として行った場所をメモしておく。


ツルヤ

軽井沢へ行ったら、何はなくともツルヤである。
長野県に多く展開しているスーパーチェーンで、私は軽井沢店にしか行ったことがない。軽井沢店は別荘族が集まる場所なのでもしかしたら他の店舗と様子が違うのかもしれないが、とにかく、ツルヤはすごい。
値段がべらぼうに安いというわけではない(東京のスーパーは分からないが、私がいま住んでいるところに比べたらむしろ割高感がある)。ただ、圧倒的に豊かなのだ。広々とした店内にぎっしりと、それでいて整然と商品が並べられ、何もかもが品揃え豊富。野菜も果物も大きくてたっぷりしていてみずみずしい。惣菜は成城石井的にお洒落で彩りがよく、海がない県なのになぜかパック寿司までも元気そうにピカピカしている。氷のコーナーには、バーでしか見たことないまん丸な氷が売られているし、チョコレートの棚にいけば徳用の廉価なチョコレートからゴディバまであらゆる種類がある。酒類の充実ぶりは言わずもがな、紹興酒を3種類も置いているスーパーを私は他に見たことがない。

中でも目を引くのが「ツルヤオリジナル」の文字。ツルヤはオリジナルブランドがものすごく充実していて、特にオリジナルのジャムやスプレッドの瓶が所狭しと並んだ棚は圧巻である。りんごバターやあんずジャム、くるみペースト、といった文字を見るだけで、長野の山の恵みをしみじみ感じる。ナッツや果物のはちみつ漬けも美味しそうだった。
長野名物のおやきや野沢菜漬けもたくさん売られているし、オリジナルの生そばも美味しい。とにかく、すべての棚が新鮮で豊かで、外国のスーパーマーケットみたいなワクワク感があるのだ。ツルヤに行くと「あああ軽井沢に来たー!!」と実感できる。

野菜やジャムは重たいので諦めて、丸山珈琲のドリップバッグと飲み物、おつまみだけ買った。標高が高いせいで、スナック菓子の袋がぱんぱんに膨らんでいるのすら嬉しい。

ブランジェ浅野屋

東京にもある有名なパン屋だが、やはり軽井沢の浅野屋は美味しい気がする。もう20年ほど前、浅野屋で働いている人から聞いた「軽井沢店は水が違うから」というワードが頭に残っているせいかもしれない。

今回は旧軽井沢のお店ではなく、千住博美術館にある店舗でイートインさせてもらった。

たまごサンドと、「ザククロネ」というザクザクしたクローネ(そのまんまや)。特にたまごサンドが、シンプルながらとてもとても美味しかった。

手打ちsoba 香りや

「発地市庭(ほっちいちば)」という、わりと最近できた直売所に隣接しているおそば屋さん。
やはり長野に来たからにはおそばを食べたい。
旧軽の入り口にある川上庵は美味しいけど、死ぬほど混んでるし東京にもあるしなあ…と考え、ここに行ってみることにした。
結果、行って良かった!!

たどり着くまでにかなり疲れたので、昼前だったが迷わずビール。と、野沢菜漬け。

天もりを頼んだら、天ぷらのボリュームが予想以上で驚く。どれも美味しかったし、二八そばもすごく美味しい!!

ビールがあっという間になくなり、続けて地酒を頼む。

さらりとしていてすいすい飲めるお酒。
美味しいお酒で美味しいごはんを食べていると、「ぱかっ」と胃が開く瞬間がある。拡張される、というのか、キャパシティ以上に食べてしまうのだ。
今回も途中で「ぱかっ」が来たため、少し迷ったが、最後に田舎そばを注文した。こちらは二八ではなく十割。

ざらりとした舌触りとそば本来の甘みが心地よく、野沢菜を挟みながらあっという間に完食。
さすがにお腹ぱんぱん。でも両方食べられてよかった!

発地市庭自体も、地のものが色々と揃うのでお勧め。母曰く、惣菜も美味しいらしい。

旧軽銀座

やっぱり軽井沢に来たからには行きたいよね、ということで行ってみた。
特に買うものはないのだけど、歩いているだけで心浮き立つ。お店の入れ替わりもあるにはあるが、「はちひげおじさん」の看板が健在だったりすると少し嬉しい。
ジャム屋さんもたくさんある。私は「小林」というお店のブルーベリージャムが好きなのだが、やはり重いし、そもそも一人暮らしだと使いきれないので断念。

旧軽から駅へ向かう途中にある、アトリエ・ドゥ・フロマージュでチーズソフトを食べた。チーズ感はあまりないけど、普通のソフトクリームよりさっぱりしていて好き。発地市庭にも店舗がある。

プリンス ショッピングプラザ

軽井沢駅のすぐそばに、広大なアウトレットモールがある。
なんとなくぶらっと見るだけの時もあるが、最近ユニクロ以外で服を買ってないし、Bさんと誕生日デートするときの服も決まってないし、今回はちゃんと買い物しよう!と決めて2時間ぐらいがっつり回った。

この年になってもどうもアパレルの店員さんというものが怖いのだが、アウトレットだと適度に放っておいてくれるのでありがたい。どのお店の店員さんも優しかった。
おかげで気に入った服も見つかり、思っていたよりだいぶリーズナブルに済んで大満足。

敷地内にレストランも色々とあるが、今回はイベント広場みたいなところに出店していたキッチンカーでお昼を買う。
ヤッホーブルーイングのクラフトビール(よなよなエール&クラフトザウルス)飲み比べセット、サーロインステーキとガーリックライス。

よなよなエールはよく飲むけど、クラフトザウルスは軽井沢限定商品だそうで、初めて飲んだ。苦味とキレがちょうどよく、すごく美味しいペールエール!重くなければお土産にも買いたかった。

旅の一冊

滞在中、ちょうど数日前に見つけて買った、内田洋子『サルディーニャの蜜蜂』を読んでいた。

旅先で別の場所(イタリア)の本を読むのは変な感じだが、潮の香りや土の手触りを感じさせる文章は、軽井沢の空気にも妙にマッチした。
内田洋子さんのエッセイを読むのは『皿の中に、イタリア』に続いてまだ2冊目だけれど、読めば読むほど、この人は一体何者…と驚いてしまう。イタリアの奥深くに分け入っては出会う人々の話を聞き、一人ひとりの人生に想いを馳せる、その行動力と観察眼に圧倒されるばかり。地層のように折り重なるイタリアの歴史や文化の、一端に触れるとレモンの皮を噛んだような苦味が広がる。

どんな土地にもそれぞれの歴史がある、という当たり前のことを、品川ナンバーのベンツやBMWが行き交う軽井沢で噛みしめた週末だった。

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