「御物作り」体験会を行いました
1月12日。茂来館にて「御物作り」体験会を行いました。「御物作り」について語る会に続いて、今回は実際に御物を作ってみる会です。当日は地域の方8名、「佐久穂町むかしたんけん館」所属の方3名、集落支援員7名の計18名もの方が集まりました。
材料のノリデッポウ(ヌルデ)の木と、オマイダマ(繭玉)用の柳の木は参加者の井出栄さんと井出利松さんが事前に切り出してくださいました。
最初に簡単な挨拶と事業の趣旨、御物作りの説明をした後、早速作業に取り掛かりました。
今回の参加者で実際に昔作っていたことがあるのは栄さんおひとり。そして『長野県南佐久郡八千穂村佐口民俗誌稿』(長野県史刊行会民俗資料調査委員会編、1980年刊)を参考にその日の朝、参考に、と初めて作ってくださった高見沢宝輔さんです。
御物は作りとしてはシンプルなので、語る会の際にも使用した見本を見ながらのこぎりや鉈を手に持ち、それぞれ作業していきます。
まずは俵用に直径5~6cmほどの太さの枝を長さ15cmほどに切っていきました。
サイズを合わせて切った枝は、皮を削いでいきます。
俵を結ぶために藁から縄も綯いました。
縄づくり初挑戦だった私は、そもそも縄の形になりませんでした。
何度かやったことがあるという集落支援員の一人は、「どうしても右巻きになっちゃう」と普段の右巻きとは違う、神事に使う縄用の左巻きに四苦八苦していました。
そのような中、井出栄さんはするするとほんの数分で縄を仕上げていかれました。
早い!そして美しい!
藁がこんなにも美しい縄になることに驚きました。今までにも草鞋に、布団に、注連縄に、動物たちの飼料に、と藁が生活に非常に密着していた様子を色々な方から伺っていましたが、これだけしっかりとした縄ができるのならば、と腑に落ち、そして栄さんの藁を綯う手つきから、実感することができました。
御物作りと同じ小正月のお飾りで、同じ日に行ったという「まるめ年」のオマイダマ(繭玉)。
普通はお米を臼で引いた米粉を丸めて作ったものを木の枝に刺すのですが、ヌルデの余った部分で花を作ったと聞いたことがあるという参加者の方の声に応えて急遽作成していただいたのが木の花です。今回は虫食いの穴を利用しましたが、本来ならまず枝に刺すための穴をあけ、下から1~2㎝のところにぐるっと切り込みを入れ、皮をそいで、花のように開いて作成しました。
御物作りも最後の仕上げに入っていきます。
刀には柄の模様を彫り、
俵に願いを込めて文字を入れていきます。
鍬や鋤は黒いほうが本物らしく見えるのではないかという思い付きから、先を塗っていきました。
そしてついにすべて完成しました。
今回は俵、刀、おんべ、鍬、鋤、小槌、ケエカキボウ(かゆかきぼう)と7種類の御物を作成することができました。
完成品の一部は後日作成した繭玉と一緒に2024年3月5日までロビーに飾った後、「佐久穂町むかしたんけん館」で飾っていただくことになりました。
その他の御物は、15日に神棚に供えていただけるようにお持ち帰りいただきました。
参加していただいた方からは「面白かった」「今度は孫と一緒に作ってみたい」等のお言葉も頂戴しました。楽しんでいただけたのもうれしかったですが、何より、地域に昔からあった行事をテーマに、地区や世代を超えて集まり、協力し合う会になったことが良かったと思いました。
最初はただ、御物作りという年中行事が分からないから知りたいという思いから始まった御物作りを中心とした「やらなくなった行事」というテーマでしたが、色々な方にお話を伺っていく中で、記録として残したかったけど残せなかったという方と出会い、「共」に作り上げることができました。
紙の上でしか情報が残っていなかったものを形にすることができ、映像にも残すことができました。
「御物作り」というものをご存じなかった方にも存在を知っていただき、興味を持っていただくこともできました。
不思議なご縁で繋がって開催することができたこの会、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。
最後に。
こちらは当日の様子の動画です。
文 永井
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