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方言の聴き取り~相生・高見澤さん~

今回は、相生町にお住いの、高見澤恵美子さんのお宅へお伺いさせて頂きました。先日、恵美子さんのご友人が、方言の聴き取りに御協力頂いたことをきっかけに、「それでは私もご協力致します。」とご連絡を下さり、訪問させて頂くこととなりました。
「方言なんて、既にいろんな方からたくさん聴いてらっしゃるでしょ?私の知ってる方言なんてあんまりお役に立てないかもしれないわ。」と、何度もおっしゃりながらお話しされていたので、とても控え目な方だなぁという印象でした。

日常でご主人との会話の中で出てくる言葉を、その都度書き留めて下さり、「走り書きだけど、こんな感じで良いかしら?」と、これもまた、何度も「急いで書いて読めないような字で、お恥ずかしいわ。」と、書いたメモを見ながら一つ一つの方言について丁寧にご説明されました。
何気なく話していたり、作業の中で飛び出す言葉に、「これって方言だっけ?」などと、ご夫婦で言い合いながら書き留められたそうです。
「色々と話しながらお互い会話が出来たし、意外と方言とは思わずに使っていたりして、どうだったっけ?なんて考えたりして、面白かったわよ。」ともおっしゃいました。

「かき混ぜることを『かんます』って言うのよ!やーねー!」、「キュウリを樽に『ぶっ込む』って、入れ込むことね。おっかしいわよね。」などと、方言が荒っぽい言い方に感じるようで、何度も恥ずかしそうにされながらも、「おっかしいんだけど、これが方言とは思わずに当たり前に使っていたのよ。恥ずかしいような、懐かしいような言葉もあるわね。」とおっしゃいました。             

恵美子さんご夫婦は、ずっと佐久穂町でプルーンを地場産業として発展させるためにご尽力されてきたこともあり、畑や果樹園をされながらそこで働く方々にお手製の食べ物を振る舞うため、野菜を育て、お漬物も大量に漬けるそうです。
その中で『かんます』や、『ぶっ込む』などの言葉が飛び交っているのです。果樹園の仕事は体力を消耗するので、汗をかいた後に、塩分補給やお茶うけ・食事のお供に「ハリハリ漬け・ビーツ漬け・ナス漬け・野沢菜漬け・南蛮漬け」など、色々な種類の漬物をご夫婦でも作っていらっしゃると伺いました。
よく長野県の特徴の一つに、「お漬物文化」を耳にしますが、恵美子さんからも、「工夫して漬物を漬けるのは楽しみの一つ。少しでも漬けないと張り合いがなくって。」とお聴きし、ここでも地域のお漬物文化が継承されているんだなぁと思いました。

また、お料理がお好きなだけあって、「『はさみこみ』・『ほうとう』は、どちらもうどんのことね。」や、「『半殺し』は、おはぎのことだけど、小豆をすり潰すのに、粒が残る程度に半分くらいすり潰すから、『半殺し』ね。」、「あんまり『やっこく』なんないようにって、柔らかくって意味ね。『こわい』が反対の意味。」など、お話の中で食べ物に関する方言がたくさん飛び出してきました。
「本当に今までよくやったなぁと我ながら思うわ。」とおっしゃるほど、畑や、果樹栽培と、大変なご苦労もあったそうですが、『せっこよく』(精を出して)頑張っていらっしゃったのだなぁと感じました。果樹園のお仕事から離れた今でも、お漬物などをたくさん作っていらっしゃるそうです。

また、その他にも学校で子ども達に向けての読み聞かせボランティアをされたり、社交ダンスにも精力的に活動され、外へ出る機会が増えたことで、改めて地元を見直す機会が増えて行ったということです。その時に、地方から出てきた方に地元言葉を話すと、すごく喜ばれたそうです。
「やっぱり地元を離れたりすると方言が懐かしく感じるし、同郷の言葉を聞くだけで、懐かしくて会話が弾んで、それで仲良くなったりすることもあるんだよね。だんだん使わなくなって、忘れられていく言葉もあるって言うから、それをずっと残していくことも大事だよね!」と、方言についての想いもお伺いすることが出来ました。

お料理好きで、お花が大好きだという優しいお人柄が滲み出ていらっしゃり、美味しいお漬物を頂きながら楽しくお話しを聴かせて頂きました。どうも有難うございました。 

文・天田


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