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佐久穂町の昔の集落の暮らし 大石③~水と共にあった暮らし~

川沿いの集落、大石。大石水源にもほど近く、豊富で良質な水と暮らしがとても密接にあったようです。今回は大石公民館にお集まりいただいた皆さんに、昔の集落の暮らしを教えていただきました。何十年も共に過ごした気心知れた仲間同士でのお話は、生き生きと当時の様子を映し出します。

最初の記事はこちら―――

お話を伺ったのは…

<大石在住>
菊池 常雄さん(87)
篠原 春之助さん(83)
島崎 焼子さん(82)
菊池 千賀子さん(81)
菊池 光夫さん(77)
相馬 元一さん(81)
西沢 茂人さん(73)
(座っていた席の順に記載)

男性陣は生まれてからずっと大石で暮らしていると話してくれました。女性陣は途中で外に働きに行ったり、お嫁に来てから暮らしていたりしましたが、長くここで暮らす皆さんです。

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今もなお湧水が出ている。上にはマスがある

駐屯していたアメリカ人とのエピソード

篠原 春之助さん(以下 春)「大石川は水が多い部落だから、どこ行っても湧水があってね。」

インタビュアー(以下 イ)「今ここに来る前にここから上にある湧水所、見てきました。」

春「そうそう。私たちも使わせてもらっていてね。20年くらい前にあそこにあるマスを作ったんだ。大きい石がそこに今もあるけど、その石の両側や奥の方から湧水が出ててね。」

イ「とても水が豊富なんですね。」

春「当時、アメリカ軍が軽井沢へ駐屯してたんだ。昭和24年くらい、俺が3年生の時の話ね。日本は負けた国だから、(アメリカ人に)何をするかわかんねえっつうことで、いい加減なところじゃ顔を洗えなかったのね。歯も磨けなかったし。」

イ「戦後の時代ですね。」

春「博士みたいな人を連れて、アメリカ人が水質検査をしてね。そしたら、今私共の使ってる水は、南佐久でまず一番くらい、全部がいいってことでね。おいしいし、大腸菌がないってことで、ジープ3台くらいでアメリカ人も毎日来て。そこで顔洗ったりなんかしてたけど。」

イ「昔から変わらずおいしい水だったんですね。」

春「そいでね、私たち三人くらいだったけど、アメリカ人が珍しいからね、(湧水の所に)見に行っただよ。そしたら“ボーイ”、“ヘイ、ボーイ”って(アメリカ人が)言ってさ。喜んで行くと、キャラメルくれたり、ガムくれたり。子どもには、そういうのくれて。」

イ「あそこで、そんなことがあったとは・・・なんだか不思議な光景です!」

春「大人もね、アメリカに負けてはいるけれど、興味はあったんだよね。5,6人の大人が来てたね。俺の親父、割といい加減な人間だったから(笑)アメリカ人がタバコ吸ってたから、分かってるのにさ、“それは何でやす?”なんて言ってさ(笑)」

イ「(笑)」

春「通訳の人が、タバコだっていうわけです。そしたらアメリカ人が、うちの親父に対しても、“ボーイ”って言ったね(笑)そんで、タバコくれたで(笑)親父はそれ、3年くらいは吸わなかったね。一本ぐらい吸っちゃあ、ずっと置いといてね。珍しかったからね。」

イ「面白いエピソードですね(笑)アメリカの方が持っていたタバコは、日本とは銘柄が違ったんですね。」

春「うん、全然違いました。」

石の間からも水がしみ出している

周辺地域も恩恵を受ける!みんなが誇る大石の水

イ「それにしても、湧水があんな量、しかも変わらずに出てるって、すごいですね。」

春「使っても、余ってるよな。この集落は、一番水があったからな。大石川が近いんだからね。」

菊池 常雄さん(以下 常)「水量に変化がねえだな。」

相馬 元一さん(以下 元)「佐久平は今あんだけ発展してるけど、この大石の水があって、水道をそっちまで伸ばしたから栄えたんだな。」

春「八千穂農水の水も、この大石川だ。※兜岩の。あれ、すごいでしょ。」※大石川の上流にある大きな岩。岩の隙間から湧水が出ている

元「大石川のあの水で、田んぼ作ってたんだ。全部水路管理してやってたんだ。兜岩から水を引いてたんだから。」

イ「大石の人たちが田んぼを作るために、兜岩から引いて農水を作ったということですか?」

元「そうそう。『夢の森』あたりに来るまでに、3日くらいかかったんだ。水が染みちゃってね。」

春「土だから、染みちゃうんだ。今みたいにコンクリじゃないから。」

イ「大石川ってそんなに水深があるわけでないのに、水が豊富なんですね。」

元「昔はお米が大事だったから、水があるところは殆ど田んぼだったな。山ん中でも、みんな田んぼ作って。今はもう全部荒れちゃってるけどな。苦労したんだ。」

イ「湧水は、みなさん今も取りに行くんですか?」

元「今でも結構お茶が好きな人とか、汲みに行くよ。」

光「佐久の喫茶店の人とかな。いい水だからな。」

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改めて、大石の水は色々な人たちに恵みをもたらしているのだと感じたエピソードでした。次回はそんな水が豊かな大石にあった水車について教えていただきました。引き続きご覧ください。

次回はこちら――――

文 櫻井麻美


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