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一番好きな歌

2003年の嵐コンサートで披露された相葉くんのソロ曲です。このころはまだソロ曲がアルバムに収録されていなかったため音源はなくて、DVDでしか聴けないレアものなのだけど、範囲を作らず1番と言っていいくらい好きな曲。ちなみに衣装はなぜかボクサー風。20歳の相葉くんはとにかくほっそくて、伸びてかけで根本の黒いサラサラの金髪をかきあげながら、必死にこの曲を歌っていた。

夜風/相葉雅紀

明治通りに連なった
車の一つから見上げた
狭すぎる空を流れてる
白い雲に追い越された

明治通りと言えば原宿の交差点ってイメージ。ジャニーズファミリークラブとかがあるよね。でも調べてみたら明治通りってのは東京を8区も横断する長い道路。マネージャーが運転する移動車から都会の狭い空を見上げたのかな。
追い越されたという言葉から連想するのはこの時期の嵐。デビューこそ華々しかったけどそのあとあんまりパッとしなくて、後からどんどん出てくる後輩たちに人気を奪われていた。
渋滞にはまっているのか信号待ちか分からないけど、ぐずぐずと動かない車を悠々と追い越す白い雲なんてすごく、自由で、眩しい。

あたりはセピア色だから
夕方かまたは夢の中
テールランプを追いかけて
僕は再び走り出した

この上の二行が世界一好きなフレーズ。セピア色。まだモノクロではなくて、ささやかなあたたかみだけを残して色を失った世界の風景を見たとき、夕方だろうか夢の中だろうかなんてロマンチックな発想を「または」ってそっけない日本語で。もちろん夢の中なんかじゃなくて夕方だから、灯りはじめるテールランプ。

いつまでもあると思っていた
限りなくあると信じていたんだ
赤い河になって追いかけていた
白い雲を追って走っていたんだ

何があると思っていたのか、追いかけているものはなんなのか、分からないまま疾走するサビ。いつまでも限りなくあるものなんてないのに人間はそれをいつも覚えていることができなくて、失ったときにはじめて気づく故の、過去形が連なる。

モノクロな夜のカーテンに
追いつかれた頃の空には
君の姿は見えなくて
僕はしばらく立ち尽くした

はじめてでてくる君という他人、そしてここにしか出てこない。ジャニーズの歌は大抵君とかあなたとかがたくさん出てくるから、なんか珍しいなと思う。そういえば歌詞ってだいたい一人称だね。人間が口で歌うからかな。
走ってはしってきたけど夜になってここで立ち止まる。

人は止まるなと言うけれど
答えを見つけろと言うけれども
暗い空の中で溢れるくらい
黒い風になって溢れるくらいであった

さっきの二行と同じメロディーのここも好きだな。言うけれども、のあとに続くのは言わなくても分かるよ。止まらなきゃ無理だし答えなんて見つからない。
そしてタイトルの夜風が吹きはじめる。溢れるくらいなんなのかはやっぱり分からない。感情、だろうか。

明治通りの歩道から
くすんだ空を見上げたら
記憶のように不確かな
ひ弱な星が光りだした

記憶は不確かだということを星の修飾語でさらりと言ってしまうのがあまりにも切なくないですか。

頭の隅に残っていた
忘れてしまえば楽だったことも
ひどい人になって
千切れるくらい
広いことを言って
迷えるくらい

忘れてしまえないくらいいい人。ひどい人にはきっとなれない人。これを相葉くんが歌ってくれること。うれしいよ。適当に生きれたらきっともっと楽だったよそうだよ。

暗い空の中で
溢れるくらい
黒い風になって
溢れるくらい
夜の風になって
夜の風になって
夜の風になって

夜はひとりでいろんなことを考えてしまうけど、どうしようもなくなったら外に出て夜の風になるのもいいなと思う。この曲を聞くだけでもそんな気分になれるし。いつだってなにもかもを悲しみながら疾走していけたらいいなと思う私の人生のテーマ曲。こんな風に美しくて不安定で色の見える文章が書けたらな!おわり。

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