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「明るい夜に出かけて」

最近、大切に読んでいる本がある。

佐藤多佳子さんの「明るい夜に出かけて」である。

新潮社の夏の100冊に選ばれてて、本屋さんで平積みされているのを発見した。題名がスンと心の中に入ってきた。表紙の絵も素敵だった。

夜といえば暗いイメージだけど、明るい夜もあるよね、と表紙を見た時私は思った。
明るい夜が何なのかはわからないけれど、夜を生息地とするような、太陽光が降り注ぐ昼ではなく世の中が暗くなった時に息がしやすくなるような人にとって、夜は生きるための時間だと思う。(かくいう私も、最近は夜を生息地にしている)

そんな、人が生きている時間をただ暗いと表現するのは何か違う気が心のどこかでしていた。から、明るい夜っていいなって思った。出かけてっていうのも、なんか、いい。


私は最近、1日が早く終わってほしいというか、昼間に多くの人が活発に動いている時に同じように動くのがしんどい、という感じがある。だから朝はできるだけゆっくり起きてスロースタートで始めたい。予定があるとそうもいかないけど、できるだけゆっくり起きてる。朝早く起きて、自分にたくさんの時間が用意されていると、怖くなってしまうから。


「明るい夜に出かけて」を本屋で見つけた時、文庫だから1000円もしないし、直感にまかせて買おうかな、と思った。でも私は買って読んでない本がたくさんあるから、一回結論を置いとくことにした。これ以上積読を増やすのは私にも本にも良くない気がした。自分で買って、「読まなければ」という圧を自分で感じてしんどくなっていたから。


夏の100冊がまとめられている小冊子だけもらって本屋を後にした。小冊子の紹介文を読んで、やっぱり読みたいな、と思った。

数日後に就活の最終面接が終わって疲れながら近くの本屋に行った時、再びやっぱり読みたいと思った。
題名だけではなく、主人公が大学を休学していること、芸人の深夜ラジオが話のキーになるという情報を知って、自分に近いかも、と思ったからだ。
私は芸人さんのラジオを結構聞くし、たしかに休学したいとか思ってるし、人生に希望もない感じだから、読んでみたいと思った。だから、買った。


今は、ゆっくり大切に読んでいる。
ずっと気が鬱々としていて本を読んでいなかったから、昔と比べて本を読む体力がなくなったなーと思った。

でも、今はそれでいい。1章ずつ、主人公と自分をシンクロさせたりさせなかったりしながら読んでいる。

今日は読み始めて5日目くらいで、ぶわーっと呼んだ。まだ結末はわからない。みんなどこに向かうんだろう。あの4人みんなが好きだ。読み終わった後、感想を書くかは分からないけれど、今の私が少しだけ救われているような気がしているから、私はあの本からたしかに何かを受け取っていると思う。それを上手く言語化できるかは分からないけれど、確かに私の体に、記憶に、「明るい夜に出かけて」は残ると思う。

21歳の夏、私は大事にしたい本に出会ったよ。

感謝感激雨あられ!