東方二次物書き初級者に送る短編のコツ


 最近東方二次小説書きたいって言ってる人にいっぱい出会えてわたしはうれしい。もっとじゃんじゃか気楽に書いて次世代の物書きになってほしいものです。やあやあ我こそは読んだ作品を燃料に変えて小説書くマンなるぞ。

 というわけで今回は東方物書き初級者・志望者に贈る短編のコツ、具体的には作品をより楽に書いてより良く見せるコツを書いていきたいと思います。関係ないけどこないだ知人との会話の中で「物書き志望」って言葉を使ったら「それただ小説書きたいって思ってるだけの人では……?」と言われました。それもそうか。


楽に書くコツ1:短編から始める

 前提として、物書きになったからといって突然長文が書けるようになる、なんてことはありません。むしろ慣れない形式に普段より短いところで息切れしてしまう場合がほとんどでしょう。ですから最初は短編、特に五千字行かない程度のごくごく短い作品から始めるといいでしょう。

※これはあくまで長く書けない人に対する助言であり、最初から「気付いたら一万字書いていた」となるようなひとに対するものではありません。もしこのようなことがあるなら貴方はとても長編物書き適性の高い人材です。ちゃんと長編に詳しい人に書き方の相談をしに行きましょう。


楽に書くコツ2:短い作品をまとめる

 とはいえ、五千字や二千字でも息切れしてしまう人ももちろん世の中には多くいます。初投稿の方の作品を見ると一千字にすら達していない人すらざらにいるのです。世の中そんなものです。なにせ文章を書く力というのは自然に身に付くものではありませんので。

 そんな方にお勧めしたいのが、五百字×四チャプター方式です。つまり、同じテーマで五百字程度でオチの付くような掌編を四つ並べて一作品とする手法ですね。例えばあるキャラのある解釈に基づいて象徴的な日常のワンシーンを四つ抜き取る。或いは共通項のある四人のキャラクターについて、同じテーマで短い小噺を四つ並べる。勿論四つに拘る必要も五百字に拘る必要もないですから、例えば七百字三チャプターとか四百字八チャプターでも良いのですけれど。

 この手法の魅力的なところは二つあります。一つは序破急や起承転結といった一般的な(場合によっては手垢のついたとも評されるような)創作理論を適応させやすいことです。三チャプターで変化球を投げて四チャプターでオチを付ける、などというように書いてみると、読み手の楽しませ方が掴めるのではないでしょうか。

 またこのような非常に短い作品では発想力の一発勝負になることが多いということも挙げられます。地の文のセンスだとか伏線回収だとかの文章スキルというものはしっかり小説を書いたり分析していたりしないとなかなか磨けないものなのですが、こと発想力という土俵に関しては自身の今まで摂取してきた創作物に依存する側面が強いため、物書き初心者であっても読み手を唸らせられる公算がかなり大きいのです。

 そして何より良いのは息切れしにくいという点です。チャプター式だとそれぞれのチャプターが一種独立した作品とも言えるため、それぞれのシーンを別々のタイミングで書き上げても比較的齟齬が出にくいのです。

 というわけで、二千字ほどでも厳しい方はまずはチャプター方式でものを書くのに慣れていくのが良いでしょう。大丈夫です、何本も書いていけば自然とものを書くための体力というものは身についていくものですから。


楽に書くコツ3:シーンの取捨選択をする

 某所にいるとよく出る話なのですが、「短編にお決まりのシーンって必要なくないですか?」という論があります。言い方を更にスラムに寄せると「能書きはいいからさっさと本題に入ろうぜ」となります。

 実際大手カプなどにはお決まりのシーンというものがよくあるように思います。レイマリであれば神社に魔理沙がやってきて霊夢にお茶などをせびるシーン。蓮メリであれば蓮子の遅刻にメリーが文句をつけるシーン。勿論それらが不要というわけではありません(特に中長編ともなるとそういったシーンが前振りとして重要になるのだと思います。知らんけど)が、実際のところ自身の体力に限りがあるという前提で考えてみると、果たしてそのようなシーンのために体力を使うことは是であるか? という命題が浮かんでくるわけです。

 そのシーンこそが書きたいものだというのであれば構いません。ですが、その後に主役らの語る事件や案件が本題であるならば、別段わざわざ書く必要はないのではないでしょうか。

 関連する話として「慣れるまでは短編はテーマを小さく絞った方が良い」「複数のテーマを下手に扱おうとすると取っ散らかって空中分解して良く分からないものになる」という論もあります。ご参考までに。


楽に書くコツ4:しっかり冒頭に注力する

 前項にも関係してくるのですが、冒頭の数行というのは非常に重要なものです。場所によってはタイトルとキャプションも同じくらい重要になってくるのですが、それはさておき。

 なぜ冒頭が重要なのかといえば、「この作品はどういった作品で、今場面に出ているのは誰で、読者はどのような心持ちでこの作品を読めばいいのか」を冒頭数行で理解してもらわなければならないからです。

 不条理ギャグを読む心持ちで感動系の作品を読んでしまったら乗れないことが多いでしょう。短編であればなおさらです。逆もまた然り。そうなってしまえばその作品の読者は、作品本来の面白さを感じることなく読み終えてしまうことになるのです。それでは読み手も書き手も損しかしません。

 そういった不幸な事故を無くすために、また読み手に「お、これは面白そうな作品が来たぞ?」と感じさせるために、冒頭は特に重要であるとされているのです。

 ちなみに冒頭全然わかんない……という方は、まず台詞で始めると良いと思います。特に語り部でない側のキャラクターが語り部側のキャラクターの名前を呼ぶと、スムーズに登場人物を読み手に理解してもらうことができるため非常に手軽です。

例:
「霊夢、事件だ」▼魔理沙は開口一番にそう言った。……
「そうそう、妹紅さん。私そろそろ冬眠しますね」▼リグルは私にそう言って……
「おう、ルーミアじゃないか」▼声が聞こえたので闇を解くと、そこには魔法使いの人間がいた。……

 ね? 簡単でしょ?


読んでもらうためのコツ:市場調査は入念に!

 正直個人的にはこれが一番重要まであると思っています。

 東方二次小説の投稿先というものは、皆が思っている以上にたくさんあります。イラストでお馴染みのpixiv、二次連載小説の花形とされるハーメルンを始め、短編東方小説書きの登竜門とも称される東方創想話、長編書きの花形である同人誌即売会。小説家になろうやノベルアップ+などのオリジナル小説を主軸にしている連載サイトにも、東方二次小説が許可されている場所が幾つもあるのです。

 そしてそれぞれの風潮によって、同じ作品でも評価の良し悪しが大きく変わってくるのです。例えばpixivで人気が生まれやすいのは大手カップリングの手に取りやすく分かり易い短編作品なのですが、同じ短編をハーメルンに投稿しても大きく跳ねるとは限りません。同様に、同人誌として高名な作品であったとしても毎週更新でなろうに投稿したとすると埋もれてしまう公算が高いと考えられます。小説家になろうで評価を伸ばすメソッドとしては、その殆どが一定期間の毎日更新を前提にしているからです。

 勿論これは、サイトに合った作品を書くべきだ、といった話ではありません。むしろ逆で、自身の作品が最も好まれそうな場所を探す必要があるということです。自身の作品がどれだけ面白いものであろうと、投稿先の風潮がその作風と異なるものであった場合は評価が伸び悩んでしまいます。それは読者にとっても作者にとってもあまり良いことではありません。

そういった各々のサイトや場の特性をしっかりと理解していくこと、そして自身に合った作品公開の場を見つけることが、最終的には物書きを続けていく上で最も重要なことなのだろうと思うのです。


成長のコツ1:恥ずかしくても過去作品を見返そう

 ここからは更に一歩進んで、物書きを続けていくにあたって大事になってくることを書いていきましょう。

 過去の作品を見返すと恥ずかしくなって耐えられない、消したくなる、といった話をよく聞きます。確かにその気持ちは理解できます。技量が伸びて審美眼が養われれば、自身の過去作を楽しむことは難しいでしょう。

 しかし、それでも自身の過去作を見返すことは重要です。今までの貴方がどういった感想を貰っていたかを見返すことはこれからの自分の得意とする作風を思い出すことにも繋がりますし、自身の過去作を読み返すことは自分の弱かった部分を知ることにも繋がります。何より過去作と直近の作品を見比べることは、自分がどれだけ成長したかを知るために非常に有益でもあるのです。

 上記の理由で過去作を読み返すことが重要であることと同様に、自身の過去作を公開したまま消さないでおくこともまた重要です。これは、その過去作を当時読んだ人がそのことを思い出して再読したとき、ついでにと最新作を手に取ってくれる可能性が大いにあるためです。或いはまた、最新作を見かけた方が作者を確認したときに、過去作があれば「ああ、あの時の作品のひとか!」といったように、より興味を持ってもらいやすくなる側面も挙げることができます。

 当時の過去作を面白いと言ってくれた人がいたならば、その作品には宣伝効果があるのです。仮に作者が下手だったと感じていたとしても、それを面白く感じたひとは確かにいたということなのです。ついつい忘れがちなことですが、過去作を読むときには気を付けていきたい点ですね。


成長のコツ2:分析して次に繋げよう

 PDCAなんて言葉がありますが、分析して良い点・悪い点を洗い出すのは創作の腕を上げることへの一番の近道と言われています。それと同時に、この洗い出しを突き詰めすぎて精神を病むひとというものも(特に絵の界隈などで)比較的よく見かけます。その原因に多く見られる傾向は、悪い点を注視し過ぎていることでしょう。

 確かに作品の悪い点と言うものは比較的目を惹きがちです。細かな粗が気になって周囲の絶賛している作品にどうにも乗り切れないということは、創作者にはわりあいよくある症状です。ですがもし仮に悪い点ばかりに注視して、粗をなくすことにばかり躍起になってしまったとしたら、そこにできるのは「気になる引っかかりはないが、何の面白みもない作品」かもしれないのです。

 創作物とは減点法ではなく、基本的には加点法です。良くない点が幾ら見受けられたとしても、しっかりその作品そのものの良さを読者に伝えることができたなら、それは「面白い作品」として多くの読者からは認知されるのです。

 いつか知人が言っていたのは、「良くない点を直すのは、その作品の良い点を余すことなく読者に理解させるため」という言葉でした。「悪い点が悪いと評されてしまうのは、読者がそこに気を取られて作品を楽しめなくなるからである」というのです。

 ですから、作品を見直す時に重要なのは、悪い点ではなく良い点をより重点的に探すべきだということです。これならば、自分の心が折れることもかなり少なくなるのではないでしょうか。


成長のコツ3:他人の作品を参考にしよう!

 身も蓋もない言い方をすれば、「想像力」「発想力」と呼ばれるものの何割かは、自分がこれまでに摂取してきた作品の量で決まります。少し前に「賢い人とは、より縁遠い二つの単語を関連付けできる人のことだ」という言説を耳にした方もいるのではないかと思うのですが、それとて多くの言葉と知識がなければどれだけ地頭が優秀であっても関連付けることはできないでしょう。

 人の作品を参考にするということは、なにより「自分の不得手とする箇所を他人が如何に攻略しているか」を知ることができるのです。冒頭が苦手な人であっても色んな作品の冒頭を読めば上手い切り口を見つけることができるでしょうし、そのフレーズを参考に次から作品を書いていけば、いずれは弱点を克服することができるかもしれません。そういった積み重ねを繰り返していけば、いずれ「良い作品を書くひと」と多くの人に言って貰えるようになることも夢ではないでしょう。そうでなくとも、他人の書いたネタを「自分ならどう書くかな」と考えてみることは、新作のネタを思いつくのに有用であることは疑いようもないでしょう。

 これに加えて、「他人の作品に感想を書く」こともお勧めしておきます。次の作品のネタがない、今書いているものが詰まってしまってなかなか先に進まないといったような場合でも、他の作品に感想を書き込むことで、自分の感じたことを言語化する感覚を忘れないようにすることができます。また普段から文字を書くことに慣れておくことで、いざ書き始めたときに手が止まりにくくなるという効能もあります。

 とはいえ、これも「他人の書いた作品が圧倒的過ぎて何も手に付かない」となるひとを見かけることが時折あります。或いは、これを警戒して他人の作品を読むこと自体止めてしまうひとも見かけます。そういった場合は、自分の作品にとりかかる前に全く別なジャンルの作品を読むのが良いとされています。自身と比べようもない作品を見たならば、比較して卑下してしまう思考も抑えられるのではないでしょうか。

 或いは「めちゃくちゃつまらない作品を摂取する」という手法もあるらしいですね。正気か?????


終わりに

 どうでしょう、少しでも参考になりそうな情報はありましたでしょうか。このブログを参考にして一人でも多くの東方二次小説を書いてくれたなら、それほど嬉しいことはありません。そしてそれと同じくらい大切なのは、安易にこのブログの全てを盲信してはならないということです。

 創作理論はひとによりけり千差万別、ある人の方針と別の誰かの方針がまるっきり逆を向いていることも少なくありません。そこまで来ると、もはや個人差の範疇ですから優劣なんて付ける方が難しいでしょう。そういうわけなので、このブログに書いてある理論だけに固執せず様々な物書きさんの考えを聞き、一番しっくりきたものを選んでいくといいのではないかと思います。


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 先日新作を投稿していました。サニーミルクとフランドールのペット主従的でパトロン的な愉快な関係性を描いた作品です。どうぞよしなに。

https://coolier.net/sosowa/ssw_l/236/1627995611

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15756288


もうちょっと前に書いた蓮メリだけどマエリベリーではない方も、気が向いた方は是非。

https://coolier.net/sosowa/ssw_l/236/1627305877

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15713278


読了報告、感想お待ちしております。

それでは。

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