正しく生きる強さ

先日、神田沙也加ちゃん主演の「キューティ・ブロンド」を観劇してきました。

土曜日の昼公演だったけど、客層は若い女の子や男の子、50代くらいのご夫婦まで様々。
2年前の初演は予定が合わず観れなかったので、念願のさやエル。初演と変わったメインキャストはエメット役の平方元基くん。ちなみに平方くんを観るのはお初です(ダンスオブヴァンパイアは観劇したけど、良知くん回だった)

私は原作小説は読んだことないけど、映画は鑑賞済み。映画の製作は2001年、18年前の作品です。
作品の背景として「ブロンドヘアーはちょっとおバカ」というアメリカ独特の偏見?ジョーク?があるけど、一歩間違えば差別的な感じになるけど、そこはそんなに重苦しくもない。実際エルは「ブロンドヘアーだから」と言う理由でアパレルショップでも店員に騙されかけるけど、エルは「ブロンドだけどおバカじゃないわ」ってそれをはねのける強さも利口さも持っている。この時点でエルは賢い女性だと分かるのに、上院議員を目指す恋人のワーナーにフラれる。理由は「上院議員の隣に立つのにブロンドの女はふさわしくないから」
ワーナーと結婚することが自分に決められた未来だと信じていたエルは打ちひしがれるけど、そこで諦めないのがエルの強さ。ワーナーの隣に立つために、ハーバード大のロースクールに入学してしまう。最初はワーナーとよりを戻すためだけにロースクールに入学したエルだけど、知らない間にワーナーには婚約者ができていた。
ストーリーの流れは分かりやすいしベタだし、単純と言ってしまえばそれまでだけど、キャラも演じる役者さんたちもみんな魅力的すぎてキャスティングは最高でしかない。

ワーナーはとにかく最初から最後までフルスロットルでクズ。でも顔がいい植原くんがやるから何となく嫌味がないのがずるい。ちなみに植原くん観るの久しぶりだったけど、台詞が聞き取りやすくなって歌も上手くなっていたー。次はエリザも控えているし、これからもどんどん活躍する場が増えるんだろうなと思わせてくれた。
ワーナーの婚約者で、エルのライバル的存在になるヴィヴィアンはまーわかりやすく意地悪で嫌味な女の子。エルをずっとバカにしていたのに、エルがキャラハンにセクハラされた現場をワーナーと目撃した時、エルに向かって侮蔑的な発言をしたワーナーに対して「あなたって最低ね」と言い放ってエルの味方になるシーンは最高にスカッとする。ワーナーざまぁ!って言いたくなるやつ。全然存じ上げなかったけど、新田さんってラブライブのセンターの方なんですね。小柄で小動物的なビジュアルだけど、プライド高い女を堂々と演じていらっしゃった。
エルの友達になる、美容室を経営しているポーレットは年齢に言及されてないけど、エルより年上で10年間ダメ男と暮らしていた「自分には何もない」と嘆く女性。そして、エルが「法律は人を救える」と実感することになるきっかけとなる人。ポーレットとエルの年齢や立場が違ってもお互いに背中を押してあげられる関係性ってすごく貴重で素敵。演じる樹里さんは笑顔がカラッと素敵で、でもカイルの前では乙女になっちゃうのがめちゃくちゃかわいくて今回さらに好きになった。
最初はエルに呆れつつも、さりげなく助けてくれる先輩であるエメット。スラム街生まれである故に恵まれた環境で育ったエルに対して厳しいけれど、きちんとエルに向き合ってくれるめちゃくちゃいい男。ちょっとダサくて野暮ったい雰囲気が平方くんにぴったりだった(笑)
教授に対しても最初はちょっとオドオドしているのに、最後は堂々と接しているのがとてもかっこよかった。

恋に全力なエルをとことんキュートに演じるさーやは天才的にかわいい。さーやがエルじゃないと、このミュージカルは成り立たないと思った。日本人が演じるアメリカ人って何となくリアクションがわざとらしくて違和感を感じることもあるんだけど、さやエルはころころと変わる表情やリアクション、声色を変えるところまでナチュラルでさすが。最後にウェディドレスとタキシードで出てくるエルエメは左手の薬指に指輪をしている演出が細かくてこれも最高だった。

世間では「女が集まると争いが生まれる」とか「女の敵は女」みたいに思われがちだし(そういう広告よく炎上してるよね…)実際に自分も女性だらけの職場で働いたことあるのでめんどくさいこともそれなりに経験したけど、「女」であるために居場所を失いかけたエルを救うのは、同じ「女」であるポーレットやヴィヴィアンやブルックたちであるのがこのミュージカルの最高なところだった。エルがピンクのスーツを着て出てきたところではボロボロ泣いた。

それだけ女性が素晴らしくポジティブに描かれているお話なのに2点ほど残念なところがあった。

誠実であること、正しく努力すること キューティブロンド - 欲しがります負けたって

この方も書かれてるけど、「ゲイとヨーロピアン」と「かがんでおっぱい」のところ。
「香水つけてる男はゲイ」とか「ピチピチなパンツ履いてる男はゲイ」とか露骨すぎるし、「かがんでおっぱい」はもっと何とかならんかったんかい、って思う。自分の魅力を分かって、意中の男性にそれを武器にアプローチするっていうのはとてもいいけど、なんか!もっと他に!何とかできたやろ!かわいい女子に何させとんねん!とわたしの中のばあやが怒りに震えた。

わたしはどちらかと言うとネガティブで卑屈で、エルみたいなポジティブでキラキラしている人を見ると余計に卑屈になってしまう人間なのだけど、エルを見たら鼓舞されるというか「わたしもがんばらなきゃ!」と思ってしまう。それはきっと、エルは自分の力で手にしたものでしか戦ってないから。もちろんブランド物で全身かためた服はビバリーヒルズ育ちならではだけど。
ポーレットが愛犬を取り戻せたのはエルが法律の抜け穴を見つけたからであり、インターンのメンバーに選ばれたのもエル自身の努力によるもの、何より殺人事件の真犯人を追い込めたのはエルがおしゃれが大好きな女の子だから証言の矛盾に気づいた。それは全部エルが自分自身の力で手に入れたもの。
そして、何よりエルは「正しい」ことしかしない。約束を守る、とか友達のために戦うとか、自分がバカにされても人をバカにしない、とか人としては当たり前だけどそう簡単にはできないことを当たり前にやる。
ひたすらに明るくてポジティブなキャラクターって一部には反感をかうけど、この作品のエルがそうはならないのはこのふたつが大きな意味を持っているんだろうな、と思う。

最高にポジティブで最高にハッピーで最高にキュートなこのミュージカルを観れてよかった!
夏にはさーやとじゃにーずの自担が7年ぶりに共演することになったし楽しみだー!
キューティの再再演も待ってます!

#ミュージカル #キューティブロンド #神田沙也加 #平方元基 #植原卓也 #観劇