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EUからの離脱の瞬間、北アイルランド議会前で私が見た光景 【Brexitを「目撃」する】

 2020年1月31日=英国のEU離脱(Brexit)当日、私はアイルランドの首都ダブリンから陸路で英国・北アイルランドに入った。歴史的な瞬間にどう向き合うか、私なりに考えた末の結論だった。
 国境地帯では再び緊張が高まる懸念がある中、前例のない出来事だけに「正直何が起きてもおかしくない」という心構えはした上で訪問を決めた。私が今回訪れたのは北アイルランドの中心都市・ベルファスト。特段リスクの高いエリアではない。

ベルファスト入り、中心部の様子は
 現地に到着してすぐ(夕方)、何かしらの空気の違いは感じ取るだろうと予想をしてした。しかし、ベルファスト中心部では特にデモを見かけるわけでもなく(あったのかもしれないが目には留まらなかった)、むしろ静かだという印象さえ持った。市庁舎周辺の広場などでデモや集会が開かれているのではないかと見当をつけていたが閑散としていた。中心部ではムードの高まりも、悲しみに暮れる空気も特に感じ取ることはなかった(普段の様子を知らないので比較することはできない)。

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北アイルランド議会前には離脱賛成派が集結
 中心部では特に目立った動きが見られなかったため、北アイルランド議会があるストーモントに移動した。ベルファストは北アイルランド政治の中心地だが、議会があるストーモントは中心部から少し外れたところに位置している。
 ストーモントに到着してすぐ(23時の数分前)、議会のゲート前に人だかりができているのが分かった。離脱賛成派の市民らが英国の国旗・ユニオンジャックを掲げて離脱の瞬間を待っていた。反対派によるデモや衝突などは見受けられない。正確な人数は把握していないものの、メディア関係者も含めて数十人から百人程度が集まっていたと思われる(ロンドンなどと比べればはるかに規模は小さいだろう)。

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離脱の瞬間を一同が祝福
 ゲート前では太鼓の音が鳴り響き、ムードが高まっていた。そして22時59分。離脱賛成派の中心人物とみられる男性がマイクを握り、「10,9,8…」とカウントダウンの大合唱が巻き起こる。
 23時ちょうどには拍手と歓声が上がった。目の前の道路を通過するトラックもクラクションを鳴らして群衆の期待に応えた。
 間もなく、伝統楽器のバグパイプを持った男性が ‘Scotland the Brave’ を演奏(有名なフレーズ)。場の雰囲気は一層盛り上がりを見せ、演奏が終わると大きな拍手と歓声に包まれた。「お祭り騒ぎ」という表現をしても差し支えないと感じるほどだった。さらに引き続いて英国国歌 ‘God Save The Queen’ の大合唱。一同が歴史的な瞬間を盛大に祝った。待機していたテレビのレポーターも間髪入れず実況をスタート。
 中心部に戻るバスの関係でそれ以降のことは分からないが、群衆は当面解散しなさそうな熱気を帯びていた。

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(バグパイプの演奏)

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(’God Save The Queen’ の合唱)

 再びベルファスト中心部に戻った後、特段変わった様子が目に留まることはなかった。
 しかし何はともあれ、離脱賛成派にとっては待ちに待った世紀の瞬間が訪れたということは疑いの余地がなさそうだ。事の善し悪しを論ずることはしないが、事前に予想していた以上にドラマチックな瞬間に立ち会うことになった。
 後編では過去の教訓に学ぶことを主題に、北アイルランド紛争関連の資料なども交えつつ北アイルランドとBrexitの行く末に思いを馳せてみたい。

※当初は前後編2部構成の予定でしたが、本記事のみとなりました。

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