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アラサー男子がARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”を見たら嵐ファンの優しさに触れた話

嵐が活動休止してから11ヶ月が経った。初めて活動休止することを聞いたとき、不思議と涙は出なかった。
5人で決めたことを尊重したいと思ったし、何より彼らが幸せでいることが僕らの幸せでもあるから。と必死に自分自身に言い聞かせていた。
過去にタイムスリップして嵐が活動休止する事実を知っても、お前は涙一つ流さなかったぞ、と言ったらきっと驚くだろうな。
だって、嵐がいない世界を生きるなんて無理って本気で思ってたし、嵐がいる世界に生まれてこれて幸せって本気で思ってたから。
それほど嵐は生きがいであって、生きていく”意味”だったから。


大晦日のライブが終わってから、毎日欠かさず聴いていた嵐の曲を聴かなくなった。というより聴けなくなってしまったのだ。
楽曲だけじゃない、毎週聴いていたソロでやってるラジオもテレビも、全部。全部。
1月の前半くらいまでは全部チェックしていた。けどどこか上の空といった感じで、1月の後半からは一切聴けなくなったし、見なくなってしまった。

7月に出た「アラフェス2020 at 国立競技場」は買ったけど、DISC1を見終わった後、「これを見終わってしまったら自分の中の嵐が本当に終わってしまう」と思って、そこで見るのをやめてしまった。嵐のライブ映像を途中でやめるなんて初めてだった。

そんな状態が10月頃まで続いて、時間が経って少しずつだけど嵐の楽曲を聴けるようになった。出演してるテレビ番組も徐々に見始めた。

11月11日に放送した「櫻井・有吉THE夜会SP」で翔くんが「プライベートで作った曲を機会があればリリースしたい」と言っているの聞いて、
「あぁ、そういう未来もあるのか。活動休止をしているからこそ出来ることもあるんだよな」と、このとき初めて嵐の活動休止を前向きに捉えることができた。


思い返すと自分の大切な思い出には全部嵐がある、そしてそれはきっとこの先も変わらない。
活動再開する可能性も、ある。
自身の人生を改めて振り返り、この大切な思い出が変わることは無いんだと思うとこれまでのモヤモヤが雲散霧消した。



前置きが長くなってしまったが、
結果的にとても晴れやかな気持ちで11月を迎え、安定したメンタルで
2021年11月26日に公開された「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」を観ることができた。

26日金曜日、仕事終わりに観に行くことにした。夜間なら人が少ないと思っていたのだけれど、公開初日とあって流石に田舎の映画館でも超満員だった。
見渡す限り女性ばかりで、男性は自分ひとりだったと思う。
席に着くとすでに両隣には人が着座しており、どちらも20代くらいだろうか、左はどうやらペアで、右はお一人様のようだ。

映画が始まると、えっ?これを約2時間無言で見続けろとか拷問か?コロナ禍じゃなかったらきっと応援上映とかで声出しもOKだったはず。声を出せない悔しさと、コロナウィルスに対する怒りと久しぶりに観る嵐のライブ映像に体温がどんどん上がっていった。

ライブ中盤、アオゾラベダルの大合唱で静かに号泣した。
涙を必死に拭っていると、小さく「どうぞ」という囁く声が聞こえた。顔を上げると、右隣の女性がポケットティッシュを差し出してくれていた。
目を合わせると、ゆっくり僕の耳に顔を近づけて、「わかります」と囁いた。突然のことに驚いたのと同時に号泣している姿を見られたのが恥ずかしくて、何も言わず必死に頷いて会釈しながら素早くティッシュを一枚取り、涙を拭った。

ひとりで見に来ている、しかも号泣している得体の知れないアラサー男子にティッシュを差し出してくれるとか神か?
しかもその神に向かってめちゃくちゃ素っ気ない態度じゃなかったか?
親切であげたのに何コイツと思われたんじゃないか?とか、
いやいや、ありがとうございます。って言うべきだっただろとか。
自責の念に苛まれ、それから一度も右側を向くことなく映画はあっという間にエンディングを迎えた。

エンドロールが終わり照明がついたのと同時に、「すいません。ありがとうございました」と言うと、彼女は優しく微笑んでくれた。
映画最高でしたね。とか、嵐かっこ良かったですよね。とか、誰推しですか?とか、そんな会話いくらでも出来たはずなのに、一切せず逃げるように映画館を後にした。


駐車場に着き車のドアを開けると助手席にカバンがある。そういえばと思いカバンを漁ると、中から未開封の6個入のポケットティッシュを見つけた。3日前に買ったのをすっかり忘れていた。1個ポケットに入れておけば恥ずかしい思いをしなかったのに、という後悔とティッシュをくれた彼女の優しさに感謝の気持ちと、久しぶりに見た嵐のライブ映像に興奮した気持ちがぐちゃぐちゃに混ざり合った。涙で汚れたマスクを外し、車のエンジンをかけた。スピーカーからピーコンと音がした。カーナビとスマホがBluetoothで繋がった音だ。スマートウォッチの音楽再生ボタンを押し再生されたのは、ちょっぴり季節外れの、嵐の「風」だった。

帰路につく車の中で余韻に浸っていた。
ティッシュをくれたことはもちろん、「わかります」と共感してくれたことが何より本当に嬉しかったのだ。

彼女はどんな人生を嵐と共に歩んできたのだろうか。

人気のない田舎道にぽつんと浮かぶ信号の灯りが、いつもより煌めいて見えた。

ポケットティッシュをくれたあなたへ。優しさをありがとう。

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