21世紀へジャンプ 94才Zoom体験記
両親含め、私のまわりにはゆるく関わっている高齢者が何人かいる。その一人ががこのイギリス人のおじいちゃん。ひょんなことから任意後見人をすることになって、すでに……5年くらい? 彼はただいま94才。自慢はQueen Elizabethと同い年っていうこと。
で、このおじいちゃんが虫歯になってしまった。思ったより進行していて、ひどく痛がる。あまりに傷みがひどく、訪問医療の先生では手に負えない状態になっている、病院(有病歯科っていうんだそうな)に連れて行って下さいと、ホームから連絡が来て、もろもろ予定を変更してお医者さんに行った。
いつから痛いんですか?
と聞かれて、「そうだなぁ……」と考える。
大分考えて2019年10月、と問診票に書いた。
え????
あの……今年、2020年なんですけど。
気がつかないうちに、ぼけが進行しちゃったのかな。
ところが、あとで、別のところに日付を書くときはちゃんと
2020年12月1日、と下記、「今日は火曜日だな?」という。
なんだ、日付わかってるじゃない。
え???? ちょっと待って、日付がわかっているっていうことは。
ってことは、1年以上我慢してたの、虫歯?
我慢強いおじいちゃんのお陰で、虫歯は意外に進行していて、
抜歯せざるを得ないという。
年齢も年齢なので、抜歯とはいえ、入院することに。
年取ってからの抜歯は、麻酔もあるし、かなり大事らしい。
痛みや麻酔で昼夜が逆転してしまったりということもあるので、
場合によっては入眠剤の投与も……と歯医者さん。
説明を受けていて、こりゃ〜大事だ、ということに遅まきながら気づいた私。
当人は、「日本の病院は大げさだな」と苦笑している。
とりあえず、入院の手続きを済ませて、ホームに送り届ける。
家に戻ってあれこれ考えているうちに、不安が増大してきたのは私。
もしかしたら、なんかあったときのために、お祓いでもしてもらった方がいいかもしれない……という気になってきた。
で、おじいちゃんがお世話になっている教会の牧師さんに連絡したら、
じゃぁ、Zoomでお祈りっていうのはどうだろうか、と牧師さん。
Zoomで……。
実は、前にも一度Zoomで面会を試みたことがあったのだけれど、
彼はインターネットもやらず、メールアドレスもなく、基本的なやりとりはFAXという生活を今もしている。頭の中的には20世紀にお住まいなのだ。
耳も遠いので、携帯電話すら使わない。スマホなんて先の先。
もちろん、テレビ電話なんていうものもね……。
なので、Zoomをやったときに、彼には、それがリアルタイムの通話なのだということが理解できなかった。
ので、今回も……
と思ったのだけれど、施設のKさんが「音は聞こえていたようなんです、前回。なので、ゆっくりやればいけると思います!」といってくださった。
問題は、当日私が立ち会えないこと。
朝から仕事でいない。
しかたなく、Zoomの設定だけして、牧師さんとKさんにメールを送り、私はでかけてしまった。
が、帰宅してメールをあけてみたら、「祈ったあと20分くらい話ができて、非常に楽しかったよ。こういう形で訪問ができるなら、オンライン訪問をもっとまめにしてみよう」という牧師さんからのメール。
そして、Kさんからも、
ヒュー、今か今かとPCを見て待っててくださり、zoomが繋がると、とても嬉しそうな表情をされていました。
というメールが。
zoomが始まって、しばらくはリアルタイムということが理解できていなかったこととPCに映るご自身の姿に引っ張られて、牧師との会話も繋がっていなかった様子ですが、途中から、リアルタイムという事を理解できたようで、牧師としっかりお話しされていました。賞味20分くらいだったと思いますが、牧師とお話しできてよかったのでは?と、思います。
という下りを読んでホッと一息。
20世紀から21世紀にタイムスリップしたような体験だっただろうなぁ。
その場にいあわせなかったのは残念だったけれど、
どうにかZoomの概念が理解してもらえたようなのは何より。
リアルタイムで顔を見て話をすることができるんだよ〜21世紀は!!
ここから、牧師さんがまたちょいちょいオンライン訪問してくださったり、
他の人ともZoomで会えるようになると、コロナの間も寂しくないし、いいなぁ、と一安心。
時間はかかるけれど、テクノロジーは確実に人の生活を変えているなぁと改めて思わされた出来事でした。
得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)