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藝大DOOR キュッパの博物館ワークショップ

夏休み藝大DOORの授業は続いている。
通常の授業は夏休みに入り10月までないのだけれど、
その間に特講があれこれあって、とりたい人達は取れるシステム。

人間形成論特講は7〜8月の土曜日4回。ほぼ毎回10時から16時。
1時間のお昼休憩があるとはいえ、結構な授業の内容。
博物館学・美術館学という立場から、学校教育という枠にはまらない教育を考えるという趣向のもの。
生涯学習という視点からの講義も。

博物館学・美術館学のベースは観察。対象物を十分観察する。
純粋に物と向き合う。
そこから見える発見。
そして、それを他者と共有することで、観察から得た発見を深め、
広げていくというのが、博物館学習。
そして、深めたものを言語化していく。

例えば、異文化の出身の子ども達が美術作品を見る。
じっと見て、感じたことを体で表現する。
それを、仲間が写真に撮る。
自分も表現する仲間の写真を撮る。
その後、自分が表現した写真にタイトルをつける。

この言語化というプロセスは、
自分の意識の中に漠然と形づくられたものに、明確な輪郭を与えるのに
役立つ。
様々な言葉のなかで、自分の思いや意図に近いものを探り出す作業。
その工程で、様々な気づきがある。

大学院にいるときも、よくこれを院生同士でやった。
ド素人の相手に論文は発表の内容を説明する。
相手の素朴な質問にぶつかることで、自分の論理の甘さや
思い込みで走っていた部分が明確になり、練り直しの作業に戻る。
ドクター論文を書いていたケニア人のキンヤは、私の単純な疑問が役にたったらしく、よく、「Norikoちょっといい?」と声をかけられた。
そういう言語化のプロセスが重要なのは、大人に限ったことではないのだ。

最終日の今日は、今までの座学をワークショップを通して体感する半日。
まずは、家の中から、見て「ビビっとくる」ものを集める。
集めるときは、それぞれが、一緒に並べた時に、うまくフィットするかどうかを考えながら集める。
といったって、主観的なものだから、自分がフィットすると思えばそれでOKなわけだけれど。

集めたら、それを分類し、並べる。
そして、最後にそれにタイトルをつける。
これは、どんなものの集まりなのかを考える……というわけ。

このアイディアはフィンランドの作家が書いた
絵本キュッパの博物館から来ている。

で、今回は私達受講生も自宅でキュッパ。
私は……引っ越してきたばかりだから、あまり、ものがない。
断捨離して、最低限のものしかもってこなかったので、
先生のいうような「手のひらに載る」もので「ビビっと」くるものがない。
グルグル狭い家の中を回って、最初に拾い上げたのは、どうやっても手のひらからはみ出す手製のバッグ。
母が処分したいけど何かに使ってとくれた布で作ったもの。
ここに入りそうで、「私を入れて」といっていそうなものを
拾い集めて、グルーピング。
最初は、アイテム別などにしたり、大きさ順に並べたものの
なんとなくしっくりせず。

まずは、自分のスキなものだけ寄せ集めてみた。
それがこれ。

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一番下のバースデーカードは、娘が先日の誕生日にくれたもの。
あとは、外に出かけるときや、人に会うときに身につけるものばかり。
つまり……ちょっとシャキっとして外と関わるときに、必要なもの。
虚勢をはるとか見栄を張るというのではなくて、
人と前向きに関わる準備をするための小道具という感じだろうか。

そう考えて次に集めて見たのがこれ。

0828鎮まる

キャンドルは、実際に使う時はこのサイズを4本くらい一緒に使うのだけれど、まぁ一番小さい物を1本。
白い器に入っているのは、ローズティー。
アメ横で1袋100円で買った物。粉になっちゃって花びらの形じゃないから、
卸の商品には入れられないの。でも、香りも味もいいのよ。だから、もったいないから100円で売ることにしたの、とお店の人。
これだけだとおいしくないから、紅茶と混ぜてね、と言われて
素直に実行しているのだけれど、本当に気持ちがゆったりする良い香り。
最近はもっぱらアイスローズティーで。
その隣は朝よく焚くラベンダーのエッセンシャルオイル。
手前のターコイズのアクセサリーは、
一昨年仲良しの友人とセドナを旅行したときに買ったもの。
ネイティブアメリカンの作品……らしい。
買ったのは、セドナで有名な教会だけど。
そして一番手前は、木製のかぎ針。
どれも、家に帰ってきて、静かに過ごす時に手に取る物。

0828気持ち良く暮らすためのもの

最後の脈絡のなさすぎる一群は、強いて言えば、自分が納得いくように暮らすためのアイテム。
一番奥が、母にもらった布で作ったバッグ。
普段大きなバッグを抱えていることが多く、
どうしてもお財布やスマホが迷子になってしまうので、
鍵やイヤホンと一緒にここにいれて、バッグに突っ込んで歩いているもの。
天使にぶっさすのはどうかと思ったけれど、大きくて便利なので針刺しにしている天使のお人形。
左の木のペッグは、開けかけの袋にさして口を閉じるもの。
これと、手前の有田焼きの小鉢で、プラスチックの保存容器を
ほぼ一掃した。
小鉢はペアでもう一つ。それとは別に、陶器の小さな重箱があるので、
それを使い回して残り物などを保存している。それ以外はこのペグで。
真ん中の円柱はお醤油つぎ。
とても気に入っていたのに、注ぎ口が折れてしまった。
お友だちがなんちゃって金継ぎを教えてくれてついでみたけど、
雑な性格が禍して、全然納得のいくようになせなかった……ことが
実はその後金継ぎをならうきっかけになった。

と、並べて気づいたことの一つは、
たったこれだけのものの中に、香りにからむものが
ローズティーを入れて3つ入っているということ。
意識したことはなかったけれど、
香りって私にとって大事なものなんだなと改めて。

ちなみに、この中で化石燃料でできているのは
中央のコットンパールのみ。
まぁ、でも、これ、自分で作ったお気に入りだから
いっか……と思っているのだけれど。
逆に、プラスチックや使い捨てがいやだ〜と思って
使っているのが、木の編み針、ペグ、有田の器、そして、
化繊もいやだと買った針刺し。
並べてみて、どれだけプラスチック嫌いなんだ、ぢぶんと
おかしくなってしまった。

友人に見せたら
人によっていろいろなんだろうなぁ、おもしろいなぁ、と。
DOORの他のメンバーのものを見せてもらったけれど、
みんなもっと脈絡があって、整然としていて、
人っていろいろだなぁと興味深い。

夏休み、宿題にこんなことを家族でやってみるのもたのしいかもね。






得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)