明るい人生の三要素~人は家族だけでもいきられない
母が手持ちの写真を整理したいと言い出した。
今まで箱にゴソっと入れっぱなしになっていたものを、おおよそ整理してアルバムに貼りたいと。
みんなで見るアルバムなら、年代順に貼るのが王道……だと思うのだけれど、年代別に分けているうちに、あることに気がついた。
母の写真はおよそ三種類に分かれているのだ。
一つは家族。母は兄弟と仲がよく、つい最近まで兄弟で旅行などもしていたので、そういう親戚関係。私たち子ども。そして、写真の大半を占めるのは、3人しかいない孫達の写真。
それとは別に、ほぼ同年代のおばさん達と映っている写真が何枚も。
聞けば学校の同窓会の面々だそうな。そういえば、母の話に良く出てくるお友だちのほぼ半分は、学校の時のお友だち。10代から70年以上つきあいのある人もいれば、同窓会の支部で親しくなった人もいるらしい。私が実家に帰っていると、一日に1〜2本は電話をとるのだけれど、かけてくださっているのは、ほとんど、「学校のお友だち。」
そして、私も知っているご近所の人達との写真。母は、長年、地域のサークルに参加したり、地元の博物館の友の会に参加したりしてきた。体操にお習字に生協(これはただいま母のライフライン)、などなど、いろいろな形で地域に関わってきた。そういう所でできたお友だちとサークル活動の後にみんなでご飯にいったり、およばれしたり、お茶をしにくる方がいらしたり。地元にそういう濃い付き合いのお友だちがいるらしい。
母に確認すると、それぞれの付き合いは交わらないので、3つ別々のアルバムを作りたい、という。
3つの箱に母が分けていく写真を見ながら、人は家族だけでもいきられないんだなぁと思ったりした。母は専業主婦なので、仕事仲間というのはいない。けれども、社会とはつながっていて、特に地域では、若い人(といっても、まぁ、50代だったり60代だったり)ともつながってきたんだなぁ、と。
イギリス人のおじいちゃんはどうだろうと考えると、生涯独身だった彼の交友関係のベースになっているのは、大学の教え子達。彼は毎週土曜日に、自宅を開放して学生が自由に出入りできるようにしていたそうで、そこで培われた学生同士の人間関係が、今彼を支えるベースになっている。桜の季節だよ、と、お花見に行けるのは、卒業して何十年もたっているのに、彼を先生と慕う心優しき元学生達が動いてくださるからこそ。
そして、自らが中心になって運営してきた学会関係の人達。
最後というわけでもないけれど、長く関わってきた教会の聖歌隊の人達。
地元の関わりはちょっと薄そうだなぁ。
もう一人、写真でご一緒したWallyは、亡くなった奥さんが日本の生活の中心であったことは間違いないものの、名鉄の白井さんを中心とした、世界の撮り鉄仲間、特に日本の撮り鉄仲間とのネットワークは、心の支えになっているように見える。
そして、こちらも、地元に住む何人かを中心とした教会の人間関係もまた、彼の生活を支えている。彼も、東京に引っ越してきたくらいだから、あまり地域との関わりはなかったのかもしれない。広い意味での地域との関わりは、やっぱり教会なのかな。
仕事人間で、家族にもほとんど関心がなさそうだった父でさえ、やっぱり最後の支えになっているのは、母を中心とする家族のネットワーク。そして、学生時代から仲の良いごくわずかの友人。そして、教え子達だろうか。あの人に関しては、地域の関わりはゼロ。興味も無かっただろうな、と思うけれど、その人が病気で倒れてからは、地域のデイケアなどに目一杯お世話になったのは、皮肉だなぁと思う。
こう言っては申し訳ないけれど、母がいなかったら、父は本当に社会と隔絶した仙人のような暮らしになりかねない。教会、趣味、といった仕事以外のコミュニティーを黙殺してきた結果かなぁ、と思う。
外国人の二人も父もいわゆる日本のサラリーマンではないからかもしれないけれど、仕事関係での付き合いが、その後の人生に深く関与している感じは極めて薄い。やっぱり、利害関係やお金がからむ人間関係は、年をとってくると次第に薄れていくのかなぁ、という気がする。教え子との関係は細く長く続いても、同僚の親しく続くということは、そうはないのかもしれない。
そう思うと、会社の人間関係ってなんだろうなぁと思ったりもする。
あんなに四六時中一緒にいても、結局つながるほどのものではないのかなぁ。まぁ、例外もあるかもしれないけれど。
むしろ、明るく人生を最後まで過ごすには、家族以外に2〜3のお金のからまない人間関係を持っていること大事なのかもしれないなぁ、と思う。
一つは、いろいろな世代と関われる地域とか教会みたいなコミュニティ
そして、趣味や知的好奇心を満たしてくれる人達。
あるいは、共通の価値観をシェアしやすい、同期の友人とか宗教関係の仲間とか。
そういう長く細くつきあえる友人との付き合いを大切にすること
忙しくても、定年が近づくにつれて、そういうこういう関係を深めていくことが、結局のところ明るい老後につながるんだなぁ。
さて。私は軸足をどこにおいたらいいんだろう。
得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)